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ロング・ナウ協会代表、スチュアート・ブランド氏に聞く
(中)「我々は10年前の情報すら引き継げない」

asahi.com編集部 平 和博(サンノゼ)

「ロゼッタ・ディスク」について説明するブランド氏=サンフランシスコ・プレシディオのロング・ナウ協会で

●デジタルデータの問題点

 ――「1万年時計」のほかにも、協会では「ロング・ターム・シンキング」のための様々なツールを検討されていますね。

 「ライブラリと呼んでいる、いくつかのプロジェクトがある。たとえばデジタルデータの保存の問題。(フォーマットやOSのバージョン違いなどによって)デジタルデータは概ね10年ごとに消滅してしまう。にもかかわらず、すべてはデジタルになっていく。たった10年前の情報すら引き継ぐことができない文明というのも、何とも無様だ。エジプトは王の墓を次の世紀へ、次の千年紀へと引き継いできた。デジタルデータが数千年にもわたって存続するなんて、今はまだ思いもよらない。ただ、ロング・タームを真剣に考えるなら、その手立てを考える必要も出てくるということだ。

 ロング・サーバー・プロジェクトはその一つ。例えば最新のワープロソフトで作成した文書も、バージョンアップの果てに、ほんの数年後にはだれにも読めなくなるかもしれない。それを、もっと汎用性のあるフォーマットに変換し、保存し、孫の代にもデジタルデータとして読み取り可能にする。ディスクはネバダの山に、データの転送はウェブ上で可能、そんなプロジェクトだ」

 ――それは、オープンソースで、ということになりますか。

 「私企業が所有するプログラムでつくったデータだと、そこが破綻してしまえば、まるごと使い物にならなくなってしまう。オープンソースなら、そういう意味ではより長く存続しそうだ。企業の破綻ではなくならないから。さらに、オープンソースのプログラムは、様々な人が少しづつ手を加え、常に改良されている。それは次の10年、次の世紀まで続くのではないか」

 ――ハードウェアについてはどうでしょう?

 「それが問題だ。すべてのデジタル・ストレージは、永久ではない。それが、我々がロゼッタ・ディスク・プロジェクト(http://www.rosettaproject.org/)をはじめた理由だ。直径3インチ(約7.6センチ)のニッケルの円盤に超微細エッチングを施し、3万ページ分のテキストを格納することができる。デジタル機器ではなく、1000倍の顕微鏡でその文字を読み取ることができる。長期間の保存が可能という点で、磁気メディアや光学メディアよりは、紙に近い。世界の存在するとされる約7000の言語のうち、当初は1000の言語をこの円盤に『物理的に』保存しようというプロジェクトだった。現在はこの目標を、文献化されているといわれる4000言語にまで広げ、ウェブ上で収集作業を続けている。将来、大量のロゼッタ・ディスクのコピーが出回れば、3種類の文字を刻んだロゼッタ・ストーンよりは役に立つと思う」

●彗星に飛び立った「ロゼッタ」

 ―ロゼッタ・ディスクはすでに一部で実用化されています。

 「今年3月、欧州宇宙機関(ESA)が(彗星〈すいせい〉チュリュモフ・ゲラシメンコに向けて)打ち上げた惑星無人探査機ロゼッタに、このロゼッタ・ディスクが搭載されている。このディスクを読むのがエイリアンなのか、未来の人間になるのか。少なくとも顕微鏡さえ持っていれば解読はできるはずだ」

 ――「ロゼッタ・ディスク」のアイディアは、日本の経典も参考になっているんですか?

 「日本の称徳天皇が印刷させ、100万基の小塔に保存した経典の一部が、(法隆寺に)今日まで伝えられている。世界最古級の印刷物として知られる『百万塔陀羅尼(だらに)』だ。1000年以上の時を経ても残っている理由のひとつは、膨大な数のコピーをつくり広めた、という点ではないか。我々もこの『ロゼッタ・ディスク』を、あらゆるところに広めていこうと思っている。彗星だけじゃなくて」

 ――「ロング・ベッツ」(http://www.longbets.org/)というプロジェクトは?

 「説明責任を果たす未来予測、ということを考えた。多くの人々は、極めて軽率に未来を予測する。そんな予測は、みんなすぐに忘れてしまう、とわかっているからだ。次の10年、さらには世紀にわたる、きちんとした科学的予測を行うことは重要だ。そのような思考のトレーニングの意味もある。だれが、何を、いつ、どのような根拠で予測したのか。『ロング・ベッツ』のサイトではそれを記録にとどめ、衆人環視の中で、参加者が未来予測を行う。掛け金は、勝者が指定した寄付先に贈られ、参加者の手元には一銭も残らない。私も『2005年8月現在、民主党員が合衆国大統領である』という予測をしている。『NO』に賭けているのはブライアン・イーノ。掛け金はそれぞれ500ドル。私が勝つと思っているがね」

 ――協会設立は1996年。来年はちょうど10年目にあたります。ロング・ターム・シンキングをめぐる人々の考え方がどう変わったか、それを測る基準はありますか。

 「その点をメンバーと話し合ったことがある。ただ、このプロジェクトは、かすかに、少しづつ、といった類のものだ。伊勢神宮のようなロング・タームなものを支える動きが米国内で増えてきているのかどうか、科学的な研究があるなら見てみたいが、まあ増えてはいないだろう。長い目で見た一つの指標は、このプロジェクトがどれだけの資金を引き付けることができるのかということだ。これはかなり重要な指標だ」










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