メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

09月22日朝日新聞デジタル朝刊記事一覧へ(朝5時更新)

新着記事一覧へ

このエントリーをはてなブックマークに追加

[CNET Japan] クラウドソーシング業界を揺るがした“大炎上”の一部始終

 インターネットを使って不特定多数の人(crowd)に業務を委託するクラウドソーシング。国内市場規模は2012年で70億円、2016年には1000億円を越えるという予測もあるこの市場が、2013年に入り活発になっている。

 国内では、古参の「ランサーズ」や気鋭の「クラウドワークス」をはじめ、各種のサービスがある。デザイン特化の「MUGENUP」、グロースハッカーを集めた「planBCD」、アプリのUIをテストする「UIscope」、軽作業に特化したものでは、ポイントサービスのリソースを有効活用する「CROWD」やヤフーの「Yahoo!クラウドソーシング」などそれぞれ特徴的だ。

 特にランサーズクラウドワークスに関しては、業界内でも比較されることが多いが、そんな両社を巻き込んだ“炎上”と呼べる大騒動が起きた。

炎上の契機になったブログ

 発端となったのはあるライターの運営するブログ。主にスタートアップ業界の分析記事を書くこのブログで、以前クラウドワークスとランサーズを比較した記事が掲載された。内容の詳細は省くが、クラウドワークスの方がランサーズよりも仕事の単価が高く、受注者の質が高いというものだ。

 これに対してランサーズは、「調査内容が十分でなかったのではないか」という疑問とともに、同社の管理部長が記事の修正依頼をFacebookメッセージを使ってライターへ送信した。それを受けた同ブログでは8月20日、メッセージをスクリーンショットとして掲載した上で、「ランサーズによる言論統制」だと主張。さらに「メディアが事実や意見を述べることに対して、自社に不利な情報だからといって圧力をかけることは許されることなのか」といった持論を展開した。

 これに対して、Twitterなどのソーシャルメディアでは、以下の声が相次いだ。

  • 「そもそも記事の論拠が明確なのか」
  • このブロガーが「競合であるクラウドワークスからコンサルティング契約などで金銭を得ていたのではないか」
  • 「クラウドワークスにとどまらず、特定の企業を評価して競合を批判する記事が複数あったのではないか」
  • 「評価した企業と金銭的な関係があったのではないか」

 そして、これまでのライターの言動も含め、匿名ブログサービスの「はてな匿名ダイアリー」やまとめサービスの「NAVERまとめ」などにこうした一連の内容が掲載されるに至った。

クラウドワークス社長がブログで釈明

 こうした騒動が続いたクラウドワークスでは、8月23日に代表取締役社長兼CEOの吉田浩一郎氏がブログを新規に開設し、ライターとの関係に対して、(1)単発の仕事を依頼していること、(2)コンサルティング契約や、当該ブログに関する金銭のやりとりがないこと--を表明した。しかし、その後もソーシャルメディアやさまざまなブログなどで、一連の騒動についての投稿は止まらなかった。

 こうした中で、新たな人物が登場する。匿名のTwitterユーザー「マモノ(@mamononews)」氏が、このライターに関するNAVERまとめを作成。これと並行して、コンサルティング契約など、このライターがなんらかの関係性を持っているのではないかとされた複数のスタートアップ企業の社長に対して、関係性があるかどうかの明示を求める内容のツイート(メンション)を乱発した。もちろん、クラウドワークスの吉田氏もこの中に含まれた。

 マモノ氏は吉田氏に対して、ライターとの関係をより明確にするよう迫った。加えて、クラウドワークスのSEO対策(競合サービスの社名やサービス名を入れたブログをクラウドワークス内に作成して誘導するもの。業界内では一部問題視されていたが、現在は削除されている)などを指摘した。これを受ける形で吉田氏は8月25日にブログで「ライターとの取引を1年間停止する」といった旨の措置を追記した。

両者を糾弾する匿名Twitterアカウントの正体

 「ライターと事業者のグレーな関係に迫った匿名ユーザー」と、聞けば一見美談に見えるかも知れないが、実はこのマモノ氏も業界に関わりの深い人物だった。同氏の正体はGMOインターネット(GMO)の社長室付き特命担当である世永玲生氏だった。GMOによると、実際には世永氏を中心に複数人でTwitterアカウントを運営していたとのことだが、今回の件に関しては、世永氏のみが関与しているという。

 世永氏は、GMOでゲームやスマートフォンの分析を手掛ける人物。また、ブログメディアの「TechWave」でも、スマートフォンやゲームに関する記事を執筆している。だがここで問題なのは、同氏のこうした業務とは直接的に関わりがないとは言え、投資事業を手掛けるGMOの子会社であるGMO VenturePartnersが、ランサーズに出資しているということだ。つまり、この機会を利用してGMOと関係のあるランサーズが有利になるように、“匿名”をいいことに競合であるクラウドワークスを陥れようとしていたのではないか、ということだ。

 これに対してGMOは、一連の活動を世永氏の個人的な活動とした上で、「関係者の皆様ならびに閲覧されご不快な思いをされた方、すべての方にお詫び申し上げます」とコメントしている。(追記 2013/08/29:GMOインターネットは8月28日付けで世永氏に対する懲戒処分を発表している)

 また世永氏も、アカウントが自身のものだとした上で、「(ライター氏がブログで掲載している)分析がおかしいと周囲で話題になっていた。また、私もライターをしているが、それを軽視するような発信をしていた」と動機を語った上で関係者に対して謝罪していると説明した。また、ランサーズやクラウドワークスとGMOとの関係については「専門外の事なので、お恥ずかしながら知らなかった」とした。

 世永氏は、ライターに対しても批判を繰り返したことを謝罪するために面会を求めた。その際、このライターは「自身の命の危険がある」ということで渋谷警察署生活安全課での面会を要求。そこでライターは関係者への謝罪などを求め、世永氏は一部を除きそれに応える形で謝罪したという。

クラウドソーシング事業者は協議会を設立

 さて、そんな炎上騒動もあったが、クラウドソーシングの事業者らは協調して業界の発展を目指す動きを見せている。前述のクラウドワークスやランサーズのほか、パソナテック、ライフネス、リアルワールドの5社は8月27日、クラウドソーシング業界の健全化と活性化に向けて「クラウドソーシング協議会」を設立すると発表。30社を越える参加企業とともに、12月の法人登記を目指しつつ、クラウドソーシングの認知向上や環境整備に努めるという。

 クラウドワークスの吉田氏は一連の騒動を振り返りつつ「クラウドソーシングを手掛ける事業者としては健全な発展を願っている。まずは当事者間で話し合って市場を作っていきたい」と説明。

 ランサーズ代表取締役社長の秋好陽介氏も、騒動について「成長課題を認識させて頂いた。また、多くのユーザーに心配をお掛けする結果になって申し訳ない」とした上で、「今後はサービス向上や業界団体を通じて、業界発展と健全化に取り組んでいく」と説明した。

 同協議会では、9月から設立準備を進め、12月までに会員企業200社、流通総額200億円を目指す。

関連記事

PR情報
検索フォーム

CNET Japan ニュース(提供:朝日インタラクティブ)記事一覧

注目コンテンツ