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[CNET Japan] 第3のモバイルOS「Tizen」と「Firefox OS」が目指す世界--CEATEC JAPAN 2013

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 幕張メッセで開催中の「CEATEC JAPAN 2013」。10月2日には「新モバイルOSが拓く新たな世界」と題したキーノートスピーチが開催され、モバイルOSの現状や将来的な展望が語られた。セッションには、パネリストとしてNTTドコモプロダクト部 技術企画担当部長の杉村領一氏、Mozilla Japan 代表理事の瀧田佐登子氏、ACCESSのCo-CTO 植松理昌氏が参加し、情報通信総合研究所グローバル研究グループ上席主任研究員の岸田重行氏がモデレータとして進行役を務めた。

  セッションの前半は、3人のパネリストがスライドを使いながら、モバイルOSに関するそれぞれの取り組みについての課題や展望などを語った。

「Tizen」が目指す、機械と人との潤滑なコミュニケーション

 まず杉村氏が、現在開発中のOSである「Tizen」について説明。同OSが目指すのは、マルチデバイスやクラウドで複数の機器をつなぎ、人と機械の潤滑なコミュニケーションを支えることであると語る。また、Linux Foundationの下に作ったTizenプロジェクトが、ソフトウェアを共通・共用化するためのソースコード開発を進める一方で、将来性を考えビジョンを提示して結晶化させる役割をTizen Associationが担っていることにも言及。すでにTizenカメラなどが実用化され「さまざまなところで徐々に適用が始まっている。現状は最後の仕上げの段階」と述べた。

 その上で杉村氏は「Tizenからイノベーションを起こすと言ってきたが、Tizen自身にも技術的なイノベーションが必要」と語る。そこで注目したのは、機械と人のコミュニケーションと、人と人とのコミュニケーションの違いについてだという。人と人のコミュニケーションでは空気を読んだり、状況に応じてコンテキストを判断している。これに対し、機械と人のコミュニケーションでは完全な情報を与えなければならず、機械には“慣れ”を期待できないため、人が慣れる必要がある。

 杉村氏は「機械と人のコミュニケーションにおいても、情報伝達は人同士のコミュニケーションに近い状態にすべき」であるとし、Tizenが提案する「Dynamic Box」を紹介した。Dyamic Boxは情報を階層化し、最重要な情報だけを表示する。そしてユーザーがクリックなどの操作をすることで、少しずつ詳細な情報にふれられる構造になっている。「アプリケーションにも“一を聞いて十を知る”というような動作が期待されるが、現状では起動すると情報を全部表示し、細かいコミュニケーションが必要になる」と杉村氏。Tizenはこの点を重視し、必要な情報だけを部分提供することで、ウェアラブル機器など表示に制限のある機器でも使いやすくなり、「もっとも重要な部分だけでコミュニケーションできる」という。

 最後に杉村氏は、Tizenからのメッセージとして“Not Give & Take, Give & Recieve”という言葉を挙げ、「我々はギブアンドテイクは期待していない。予想外の楽しいことを受け取るという“ギブアンドレシーブ”を期待している」と締めくくった。

Netscapeが培った技術をモバイル化した「Firefox OS」

 続いては瀧田氏。テーマはもちろんMozillaが開発を進めている「Firefox OS」についてだが、インターネットの黎明期に未来が変わると感じたのと同じように「今回この展示会場を見て、やっとその時が来たとワクワクした」と切り出した。ウェブやブラウザを世の中でどのように使うか、情報をどう扱って伝達するかといったことが大きな課題となっており、今後は大きな変革が訪れるであろう現在の状況が、20年ほど前と似ているという。

 そしてFirefox OSがなぜ世に出ることになったかを理解するためには避けられない話題として、「Netscape」と「Internet Explorer」の“ブラウザ戦争”についても触れた。「当時は争いの最中だからこそ良いイノベーションがあり、技術革新のスピードも速かった」と瀧田氏。結果的にNetscapeは敗れたが、その後Mozillaが誕生する。Netscapeがソースコードだけではなくプロセスまで含めてすべてを公開し、オープンソースのコミュニティを開発の基礎としていたからこそ、その技術を引き継いだMozillaが生まれたと語った。

 ただし、オープンソースでの開発には難しい点もある。Netscapeはオープンソースのコミュニティと共同でブラウザ技術の開発にあたったが、ブラウザのFirefoxが世に出るまで5年間もかかったという。長期間を要した理由について瀧田氏は「オープンな世界でコミュニティに参加する人たちは、楽しいからやっている。その考え方と、企業の取り組みとして行うこととのバランスが良くなかった」と振り返った。そこでニュートラルなNPO組織に改編し、「世の中の人、インターネットを使うすべての人にウェブを届けたい。みんなで支えながら技術を作っていきたい」という思いで開発を進めたという。目的はシェア獲得ではなく「技術を伝えるのが目的、その技術を表現するのがプロダクツ」という理念だったと語った。

 ウェブが世の中で当たり前の存在になっていく中で、ウェブのよりよい環境を作ることは当然の課題だが、Mozillaはその答えとして、1998年以降に培ってきた技術をモバイル化することを考えた。デスクトップの環境はリッチになったが、モバイルの端末は小型化し、場合によっては面倒なものになってきたとも言える。そのモバイル端末のウェブ環境を改善するために、持っている技術でOSを作ろうという発想で生まれたのがFirefox OSだ。「今後はインターネット、ウェブが世界の中心になる。その環境として、快適に動作するプラットフォームを用意することを考えた」と瀧田氏。

 Firefox OSについては、ウェブの標準技術を搭載し、近い将来にくるであろうマルチデバイス時代のアプリ環境のベース技術も組み込まれているとした上で、目指すのは「ウェブだけですべてが完結する世界」と表現した。また「HTML5を中心に快適な環境をモバイルで作ったのがFirefox OS。ウェブブラウザの中で面白いことが色々できるようになってきているが、それをそのほかのさまざまな世界でも簡単に実現できるようにするのが目標。その意味で目指す方向はTizenと同じ」と述べた。

HTML5は近い将来必ず広く活用される

 植松氏は初めに「すべての機器をネットにつなぐというビジョンに基づき、その一番の手段がウェブブラウザである」とACCESSの考え方を述べ、今後のHTML5への期待について語った。

 「HTML5は大きなポテンシャルを持つ技術領域」であると植松氏。ブラウザが快適になり、ハードルが下がって普通の人が当たり前に使えるようになったのは、スマートフォンの普及や、そのためにキャリアがインフラ投資を進めたことが大きい。このことがベースにあった上で、今HTML5が注目されている理由について「PCサイドでもInternet Explorer以外のブラウザが次々に登場し、W3Cの規格の中で新しい仕様が早いスピードで取り入れられている。さらにAdobeがスマートデバイス向けのFlashの開発を停止したことも大きい」とし、今後の本命は間違いなくHTML5であると述べた。

 現在はウェブブラウズが快適にできるのが当たり前になっているが、今後はブラウザの上でアプリが動き、ウェブがアプリのプラットフォームになってくることが考えられる。「先ほどお二人が話されたことが実現するのが、すぐ目の前まで来ている」と植松氏。

 ウェブアプリは、とくにインタラクティビティに関してまだ速度が不足しているといわれるが、植松氏は「ハードウェアと統合することで十分なパフォーマンスが得られ、HTML5でもネイティブアプリと遜色ないスピードを提供できる」と、ベンチマークの映像などを見せながら語った。そして、車載向けのサービスや、NHKが始めようとしているインタラクティブなサービス「ハイブリッド・キャスト」などが活用事例として紹介された。

 「HTML5はクラウドをバックエンドとし、ウェブブラウザが組み込まれたデバイスの上ですべてのアプリケーションのサービスが受けられる。大きなポテンシャルを持ったテクノロジー」だとし、「そうなるためには互換性やパフォーマンス、インタラクティビティの一貫性を調整しなければならない」と課題についても触れた。そして「ウェブ、クラウド、ハイスピードなネットワークが進化する中で、それらともっとも親和性が高いHTML5への流れができているのは必然。ネイティブアプリケーションの標準化がなかったテレビなどの家電もHTML5に期待していて、近い将来必ず広く活用される時代がくる」と期待を述べた。

エコシステムやモバイルOSはどう展開するか--パネルディスカッション

 セッション後半は、モデレータである岸田氏の質問にパネリストが答えるという形でパネルディスカッションが行なわれ、主にエコシステムについて議論が交わされた。

 最初の議題は、ウェブアクセスが一般的になり、スマートフォン以外の世界にも利用シーンが広がる中、新しい形のエコシステムも広がっていくか、というもの。これについて杉村氏は「エコシステムには、部品、機器、アプリという側面があり、それぞれ広がり方は違うが、部品や機器についてはメリットが大きいため広がるだろう」としながら、「アプリについては、30万あるといわれるアプリのうち98%は見られてもいない。その仕組みを改善する必要がある」と語った。

 植松氏は「新たなエコシステムが生まれる可能性はあるし、みんな期待はしているが、お金を還流する仕組みをうまく作らないといけない」と課題を指摘し、「開発者のためにTizenやFirefox OSがイニシアチブをとって進めてほしい」と期待を示した。瀧田氏は「これは難しい話」と前置きし、「エコシステムは利用する立場によって違ってくる。誰のためのエコシステムなのかを考えなければならない」と語り、多くの立場の人が集まって議論する必要があり、まさに今がそのタイミングなのだと指摘した。

 今後は、既存のエコシステムに新しいOSやブラウザが組み込まれていくことになるが、それによってハードウェアの面からみるとどのような展開になるかという点も話題に挙げられた。これについて瀧田氏は「既存のブラウザで動くコンテンツがたくさんあるが、それがそのまま動く環境もエコシステムのひとつ。インターフェースやプラットフォームを変えてもいままでの資産を捨てずに済む。ハードウェアの世界でも技術や部品を流用できるという大きな意味でのエコシステムが考えられる」と述べた。

 杉村氏は携帯電話の開発時に、Linuxを使ったことが部品メーカーに歓迎された自らの経験や、グローバルな部品を供給できるチップセットベンダーしか生き残れなくなっていることを例に挙げ、「物作りをする上で、エコシステムをどう考えるかが大きな課題」と語った。植松氏はスマートフォンや家電が連携する様子を描いたスライドを示しながら「HTML5によって、スマホなどひとつの機器の中で閉じた世界ではなく、広がったエコシステムに展開するだろう」と期待を語る。

 また、エコシステムの今後については、「今のエコシステムもよくできているが、今後に期待するのは自由度」と植松氏が述べ、より多くの人が新しいことにチャレンジできる余地ができることへの期待を語った。

 最後に、モバイルOSの今後について杉村氏は「ITの世界は一般的でない言葉があふれていて、普通の人が使いにくい。ユーザーがやりたいことを、一般的な名詞で使えるようにすること」と課題を挙げた。さらに、端境期(はざかいき)の今がちょうどそれを考える時期であり、ハードウェアも進化してきているため、これから面白いことが起きるだろうと展望を語った。これには瀧田氏も「今は“ブラウザ”という言葉すら使われなくなってきた。IT技術をユーザーに意識させないのがエンジニアの勝負どころ」と賛同。植松氏は「トータルなサービスを提供するのに必要なネットワークやクラウドが、ネックになりつつある。それをどう解決するかを今考えなければいけない」と課題も示した。

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