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アテネ五輪女子マラソン金メダリストの野口みずき(シスメックス)が、2度の故障を乗り越え、いよいよ北京五輪へ向けて歩み出す。日本記録をマークした05年のベルリン以来、約2年ぶりのマラソン出場となる野口のほか、前日本記録保持者の渋井陽子(三井住友海上)や、今年のロッテルダム・マラソンを制した大南博美(トヨタ車体)も好調で好勝負が期待できそうだ。
(朝日新聞東京本社スポーツグループ・堀川貴弘) |
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土佐礼子(三井住友海上)が今夏の大阪世界選手権で銅メダルを獲得して北京五輪のマラソン代表に内定した。残る代表枠は2人。合宿先のスイス・サンモリッツでレースをテレビ観戦した野口は「土佐さんとは何レースかいっしょに走ったことがあるので応援していたんですけど、あーこれで決まるのか、という複雑な心境でした。うらやましいと思った」と正直な気持ちを話した。
サンモリッツの合宿では前半、どこか集中できなかったところがあったと振り返ったが、世界選手権が始まって、世界のトップアスリートの走りをテレビで見るようになってから気持ちが引き締まった、という。「私が走る時点で北京の切符が2枚というのは予想もしていたし、逆にその方が燃える」。野口は言い切った。
04年アテネ五輪の翌年、ベルリン・マラソンで2時間19分12秒の日本記録を樹立した。しかし、その後は予期せぬ左足の故障に見舞われる。昨年は、さらなる記録の更新を目指してベルリンに臨もうとしたが、約1カ月前のサンモリッツでの合宿中に転んでお尻を強打。無理して練習を再開した結果、左足首からすねに痛みが走り、出場を断念した。その後、今年4月のロンドン・マラソンに照準を合わせていたが、ここでも左足アキレス腱に痛みが出て、出場できなかった。今回は約2年ぶりのフルマラソン出場となる。
故障が癒え、今年5月の仙台国際ハーフを1時間8分54秒で初優勝。「故障してから縮こまった感じでしたが、やっと思い切り走ることができた。復活の手応えを感じました」とようやく野口に笑顔が戻った。その後、6月の関西実業団連盟記録会の5000メートルでは自己記録を4秒32更新する15分30秒04で優勝。さらに、7月の札幌国際ハーフでは1時間8分22秒で2連覇を飾った。「マラソンは2年ぶりといっても、その間ハーフマラソンなどには出場していたし、練習でも40キロ走などをこなしているので不安はない」。野口の自信に揺るぎはない。
今年は8月から約1カ月間、スイス・サンモリッツで走り込んだ。走破距離は1300キロにも上ったという。その後、長野・菅平での合宿を経て。10月から1カ月間、中国・昆明で調整した。昆明では40キロ走を2度、スピード系も400b×15本のインターバル・トレーニング、加えてクロスカントリーなどもこなした。「与えられたメニューはほとんど消化することができている。自分でも走りに力強さを感じる」。野口はそう話している。
五輪の連続出場に向けて、東京への出場を選択したのは、北京五輪までの準備期間を十分に取れることが理由。当然、野口陣営の目指すのは優勝だけでなく、大会記録(2時間22分12秒=99年、山口衛里・天満屋)を突破し、代表の座を確実にすることだ。野口と藤田信之監督、広瀬永和コーチの3人は10月初旬に東京のコースを試走した。「コースはだいたい頭に入りました。38キロの坂もきついけれど、その後40キロ以降のだらだら上っているところが要注意」と野口は話す。前半については、「最初の下りを飛ばしすぎたらだめですね」。今大会はペースメーカーがつかない。より慎重な対応が必要となるだろう。
「走った距離は裏切らない」。野口がそんなマラソン哲学を口にできるのも、納得のいく練習を積めているから。小柄な野口の、それでいてダイナミックな走りが、東京のコースで見られるはずだ。
野口を脅かすとすれば、渋井だろう。年齢はひとつ渋井が下だが同学年の二人の、マラソンでの対決は初めてとなる。ともに東京は初挑戦。中国・昆明の合宿も順調にこなし、本人も久々に明るい表情だ。新旧のマラソン日本記録保持者の対決に「みずきさんのことは意識してますよ。当たり前です。いつも競っているイメージで練習している」。
04年のベルリンで当時の日本記録となる2時間19分41秒で優勝。しかし、その後の国内3レースでは7、2、10位ともうひとつ力を発揮できていない。特に世界選手権代表をかけた今年1月の大阪では前半、積極的にレースを引っ張ったが、33キロ付近で立ち止まってしまった。「完全に自分に裏切られた。だいぶへこみましたね」と振り返る。鈴木秀夫監督は大会前にもうひとつ体が絞りきれなかった点を敗因にあげる。
その後、大阪世界選手権の1万メートル出場を目指して、トラックレースに出場した。同種目で渋井は02年に30分48秒89の日本記録を樹立。現在の「トラックの女王」福士が何度も突破を目指したが、いまだ破ることができていない記録だ。5月の東日本実業団5千メートルで7年ぶりに優勝。日本選手権でも5千メートル3位、1万メートル2位と好成績を残したが、結局、鈴木監督に説得されて、世界選手権の出場は断念。マラソン練習に切り替えた。ただし、春先にスピードを強化したことは決して無駄ではなかったようだ。
10月の昆明合宿で25キロ走を終えた後、鈴木監督は思わずつぶやいた。「野口との対決がおもしろくなった。あいつは気分次第。気分が乗れば、力を発揮できる」。本人は「とにかく力を出し切りたい。前半からばーんと行って走りきるような」と話している。
双子の大南姉妹の姉、博美もいい仕上がりを見せている。「今回は余裕を持って練習できている。渋井ちゃんやみずきちゃんとは一緒にマラソンを走ったこともあるし、ここまでいい感じで来ているので、特に相手を意識することはない」。
99年の名古屋でマラソンデビュー(3位)。02年釜山アジア大会では銅メダルを獲得した。04年のベルリンでは日本新記録(当時)をマークした渋井に続き、2時間23分26秒で2位に入った。05年ヘルシンキ世界選手権では1万メートルに出場したが、スタート直後の転倒が響いて21位。昨年はドーハ・アジア大会の1万メートルで銅メダルを獲得している。今年4月のロッテルダムでは30度近い気温の中、2時間26分37秒でメジャー大会初優勝を飾った。マラソンの実績では妹の敬美にやや劣っていた博美は「自信になった。これで敬美に少しは追いつけたかな」と話している。
「4年間ずっと北京を目指そうと思ってやってきた。目標にしていた選考会にベストに近い状態で臨めることが大きい。東京のコースは走りやすそうだし、楽しみ」と話している。
今春、資生堂を退社し、川越学監督の立ち上げたセカンドウィンドACに参加した尾崎朱美は、昨年2位の経験を生かしたいところ。今年の3月に結婚。今季は7月の札幌国際ハーフをはじめ、ニューヨークシティー、フィラデルフィアでハーフマラソンを走り、10月にはいわて北上マラソンに出場するなど積極的にレースに出場して仕上げてきた。
海外勢は今年のロンドン4位のサリナ・コスゲイ(ケニア)が出場。昨年のベルリンで自己ベストの2時間23分22秒で2位に入っている。このほか、4年連続の出場となるジビレ・バルシュナイテ(リトアニア)や04年の大会を制したブルーナ・ジェノベーゼ(イタリア)らが優勝争いに絡んできそうだ。
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残り2人となった北京五輪のマラソン代表を巡る争いはどうなるのか。代表選考レースは東京のほか、1月の大阪国際女子、3月の名古屋国際女子があり、単純に考えて優勝しても代表に選ばれないケースがある。つまり、選手はタイムやレース運びなどでアピールすることが必要になってくる。
大阪国際女子にはアテネ五輪で7位に入賞し、今年のベルリンで5位に入った坂本直子(天満屋)や今年の大阪を制しながら世界選手権では18位に終わった原裕美子(京セラ)、世界選手権では補欠だった加納由里(セカンドウィンドAC)らが出場する予定。また、名古屋には大阪世界選手権で6位に入賞した嶋原清子(セカンドウィンドAC)、大南姉妹の妹敬美(トヨタ車体)らの参加が見込まれている。
シドニー五輪金メダリストの高橋尚子(ファイテン)は東京を回避した。関係者は「調子はいいが、さらに練習を積んで、大阪か名古屋に出場にした方がベターと考えた」と話している。大阪世界選手権でメダルをとって、北京五輪へ進む青写真を描いていたが、昨年の東京で3位に敗れた。自ら「崖っぷち」と語るように、次のレースは競技人生をかけた走りになる。
また、大阪世界選手権の5千b、1万b代表で、ハーフマラソンの日本記録保持者、福士加代子(ワコール)の動向も注目される。マラソン挑戦を明言していないが、大阪、名古屋どちらかに挑戦するのではないか、と関係者の間ではささやかれている。 |
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