
ステロイド薬が使われる主な病気と副作用

ステロイド薬を減らしていくときのイメージ
ステロイド薬は、腎臓の上にある副腎という臓器が作るホルモンを、人工的に合成したものです。化学構造の違いで、たくさんの種類があります。ですが、外敵から体を守る免疫や炎症にかかわる白血球などの働きを抑えるという効果は共通しています。
スギ花粉症などのアレルギーは、免疫システムが過剰に働いてしまい、炎症を起こしている状態なので、ステロイドでよくなるわけです。
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大抵の炎症は抑えてくれるので色々な病気に使われています。ですが大量に使うと、高血圧や糖尿病といった副作用も起こります=図参照。また免疫を抑えるので、細菌やウイルスの感染症なども起きやすくなります。
東京大学医科学研究所の田中廣壽准教授は「効果と副作用を切り離すのは今のところ難しい」といいます。
これはステロイドと結びついて効果を表す物質を、体のほぼ全部の細胞が共通して持っているためです。ただ、臓器や器官によって作用が違うので、ある部分では効果として、別では副作用として表れるわけです。「両刃の剣」といわれるゆえんです。
点鼻薬や軟膏(なんこう)、吸入薬などは、ステロイドを局所にとどめることで、副作用を避けています。一方、飲み薬や注射だと、血液で運ばれ全身に行き渡ります。「花粉症が一発で治る」という触れ込みの注射がありますが、ステロイドを筋肉にも長くとどまらせることになります。副作用のリスクが高く、起きても措置がとれないため、アレルギーの専門医は薦めていません。
ただ、俗にいう「リバウンド」は副作用とは分けて考えた方がよさそうです。外からステロイドが入ると、脳から副腎に対して「しばらくホルモンを作らなくてもいい」という指令が出ます。これが長く続くと、副腎が萎縮して、十分にホルモンを作れない状態になります。ここで突然、ステロイドの使用をやめると、ホルモンが十分に分泌されず、炎症が再燃することがあるのです。ステロイドをやめるときに少しずつ量を減らしていくのはそのためです。
アトピー性皮膚炎に使うステロイド軟膏の場合、強さによって「弱い」から「最強」まで、5段階に分かれます。
できれば弱い薬を短期間で済ませたいと思うのが心情でしょう。しかし、中途半端な使い方をして、逆に症状を長引かせてしまうケースもあるようです。東京都立小児総合医療センターの赤澤晃アレルギー科医長によれば、ステロイドを使えば、たいてい数日で症状がよくなります。
この段階で「治った」と思い込んだりして、勝手に使用をやめてしまうことが少なくないといいます。実際は、皮膚の下ではまだ炎症が完全に収まっていないので、症状の再燃につながります。
ステロイドは炎症を鎮めるだけで、原因は治してくれません。アレルギーにはダニや花粉など原因物質があります。原因物質が入ってくれば、またぶり返すわけです。
ステロイドと聞いて、ドーピングを思い浮かべる人もいるでしょう。男性ホルモンはドーピング対象として使用が禁止されています。国立スポーツ科学センターの小松裕・副主任研究員(内科)によれば、これは、筋肉増強作用のある男性ホルモンが、ステロイドと共通の化学構造を持っているため、同じ仲間に分類されるからです。
作用は、治療薬のステロイドとは全く違うのですが、競技前の禁止薬一覧をみると、ステロイド薬の内服や注射も入っています。これはステロイド薬の全身投与の効果で、幸せな気持ちをもたらす「多幸感」という作用があるからだそうです。
小松さんによれば、スポーツ選手といえども今や3割は花粉症だそうです。スポーツ選手でも点鼻薬や吸入薬、軟こうなど局所に使う分には大丈夫だそうです。
ステロイドは戦後まもなく実用化されました。関節リウマチの痛みが劇的によくなり、「夢の薬」と称賛され、1950年にノーベル賞が出ています。ところが、その後、様々な副作用があることがわかり、副作用との戦いは今も続いています。 驚いたことに、副作用が起きる詳しい仕組みはあまりわかっていないそうです。しかし、東大医科研の田中さんたちは最近、その一端を解明、論文で発表しました。将来、副作用を抑える方法が見つかる可能性もあるといいます。今後の研究の進展に期待したいです。(行方史郎)
解説文は11年2月26日付 be 「いまさら聞けない+(プラス)」より