公務員が退職後に、自分が勤めていた行政機関と関係の深い民間企業や公益法人などの幹部職に就くことを「天下り」という。いったん天下った公務員が、次々に高額の退職金を受け取りながら、関係機関や企業をわたり歩くことを「わたり」という。「天」が「下る」という言葉は長く続く官尊民卑の発想を反映している。
衆院調査局によると、07年4月時点で、天下りした国家公務員は4696法人に2万6632人いた。06年度に、それらの法人に省庁が発注した事業の98%が随意契約で、総額は約5兆7千億円にのぼっていた。天下り先を確保したい省庁と、退職者を受け入れて役所の権限を利用したい企業群の持ちつ持たれつの関係がありありだ。さらに相次ぐ官製談合が、天下りを温床にして広がった実態も次々に明らかになっている。
これに伴う公務員批判に対応して、安倍晋三政権が国家公務員法を改正して、官民人材交流センターによる天下りの一元管理を提唱。麻生首相も09年2月に「各省庁の天下りあっせんも3年を待たずに前倒しで廃止したい。わたりと天下りを今年いっぱいで廃止する政令をつくる」と答弁している。しかし、具体的な制度設計にかかわる公務員制度改革は、いまなお迷走を続けている。政府の工程表には、天下り根絶の目標年次が書かれていない。
天下りやわたりをなくすには、(1)採用で選別するキャリアシステム(2)年功序列の人事運用(3)出世レースから外れたら退職する早期退職勧奨という、官僚人生の入り口、現役時代、出口を一体的に見直す必要がある。とくに早期退職慣行を容認すれば、退職者を再就職させる「天下り」が続くのは明らか。この点にメスを入れられるかどうかが改革の成否を決める。
一方では国と地方の役割分担を進める分権論議も進んでおり、国と地方のあるべき公務員像を見据えた公務員制度改革が望まれる。(坪井ゆづる)
解説文は09年4月20日更新