
主な年齢の平均寿命
「人間五十年、下天(げ・てん)の内をくらぶれば、夢幻(ゆめ・まぼろし)の如(ごと)くなり」
織田信長の生涯を記した『信長公記』にあることばです。もとは舞曲「敦盛」の一節で、天界の住民が保つという大変な長寿に比べれば人間の一生なんてあっけないもの、といった意味。
日本人は長らく「人生50年」を寿命と考えてきました。実際、戦後間もない1947年の平均寿命は男性が50・06歳、女性が53・96歳。明治時代までさかのぼると何と40歳代前半でした。
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しかし高度経済成長と歩みを合わせるように平均寿命は延び、日本は世界有数の長寿国に。平成に入ってからも少しずつ延びており、厚生労働省が昨年7月に発表した最新のデータによると男性79・29歳、女性86・05歳と、いずれも過去最高になりました。発表の時にニュースを眺めながら、自分はあと何年生きるかな、と思いをめぐらした人も多かったかも。
でも平均寿命が短かった戦前だって、長生きの人は多くいました。
実は47年でも、40歳男性の平均余命は26・88年、女性は30・39年ありました。つまり40歳を超えれば、男は67歳、女は70歳くらいまで生きられたのです。昔の人が50歳くらいで一斉にバタバタ死んだわけではありません。
平均寿命は、その名の通りあくまで平均です。たとえば2人の人がいて、1人が100歳まで生きても、もう1人が生まれてすぐに亡くなっていたら、平均した寿命は50歳。つまり若死にする人が多ければ、平均寿命はどーんと下がってしまうわけです。
生後1歳未満の乳児死亡率をみると、47年には出生千人あたり76・7人もありました。それが08年には医療や衛生、栄養状態の改善で2・6人にと激減。現代でも平均寿命が目立って低い国があるのは、子供の死亡率の高さが背景にあります。
自然災害も平均寿命を押し下げます。日本では95年に阪神大震災によって、また05年にはインフルエンザ流行の影響で、前年の発表値よりわずかに下がりました。
平均寿命の延びには高齢者の死亡率低下も寄与しています。上の図に、国立社会保障・人口問題研究所が発表している人口ピラミッドの推移予想から、今年と55年の様子を重ねて示しました。先進国の中でも日本は急速に高齢化社会へ進んでいます。
イギリスには15〜17世紀にかけて生き、152歳の長寿に達したとされるトーマス・パーなる人物がいます。本当にそこまで生きたのかは疑問ですが、パーは80歳で初めて結婚したとされ、晩年も元気だったそうです。いわゆるウイスキーの銘柄の『オールド・パー』さんですね。
平均寿命は厚生労働省が毎年発表する「生命表」に掲載されています。生命表とはある年齢の人が次の誕生日までにどのくらい死ぬか、余命は平均してどれくらいかを統計に基づいて示したもの。その昔は「死亡表」と呼ばれていました。
平均余命の出し方を簡単に言うと、ある年に千人の赤ちゃんが生まれたとします。そして、その年の年齢ごとの死亡率を当てはめると、将来のある年齢時点で千人のうちどれくらいの人数が生き残っているかの予想が出せます。
ある年齢X歳から1年ごとの生存者数(上の図表欄にグラフで示しました)を足しあげてその和を、X歳の時の生存数で割って得られる数が、X歳の人の平均余命です。そして平均寿命とは、0歳児の平均余命を指します。
今年10月には国勢調査があります。やがて作られる生命表で平均寿命はどんな値になるでしょうか。
2010年5月10日付け 週末be 「今さら聞けない+(プラス)」より
解説文は10年5月18日更新