体を動かすエネルギーとなる血糖は通常、膵臓から出るインスリンというホルモンの働きによって細胞に取り込まれ、利用・調節されている。この膵臓の細胞が壊れてインスリンがつくれなくなったり、足りなくなったりして、血液中に糖があふれ、血糖値をコントロールできなくなるのが糖尿病だ。糖尿病になると、合併症による手足のしびれや壊疽、目や腎臓の障害が起きやすくなる。また、心筋梗塞や脳梗塞などを起こすリスクも高まる。
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糖尿病には大きく分けて1型と2型がある。
1型糖尿病は、膵臓のβ細胞が何らかの理由によって破壊されることで、インスリンが分泌されず発症する。子どものうちに始まることが多い。
一方2型糖尿病では、血中にインスリンはあっても、肥満などが原因でインスリンの働きが悪くなるか、分泌量が減少し、結果として血糖値の調整がうまくいかず糖尿病となる。日本では糖尿病の95%以上がこのタイプにあたる。
厚生労働省の07年の国民健康・栄養調査で、糖尿病患者とその予備群が推計2210万人となり、5年前の1620万人に比べて36%増えていた。
自覚症状として、頻尿や尿の甘いにおい、のどの渇きなどがあるが、初期の段階では症状が出ない人も少なくない。
糖尿病神経障害、糖尿病網膜症、糖尿病腎症が、3大合併症とされる。
糖尿病神経障害は、足のしびれや痛みとして異常が出る。症状が進むと、筋肉の萎縮、筋力の低下や胃腸の不調、立ちくらみ、発汗異常、インポテンツなど、さまざまな自律神経障害の症状も現れる。
糖尿病網膜症は、目の底にある網膜という部分の血管が悪くなって視力が弱くなるもので、白内障になったり、失明したりする人もいる。
糖尿病腎症は、腎臓の毛細血管が悪くなって尿が作れなくなる。体がむくんで、全身が疲れるなどの症状となって現れる。人工透析となる原因の1位がこの合併症だ。
また、糖尿病がある場合、重篤な病気の症状を感じない場合があるので、注意が必要だ。 神経障害が起こっていると、心筋梗塞になっても激しい胸の痛みを感じず、治療が遅れる場合がある。手足で温度を感じるのがにぶくなり、こたつやあんかで低温やけどをする場合もある。手足の血液供給が不十分だと、傷ついた手足の皮膚を修復できず、傷が拡がって、足を切断しなければならない場合もある。
日本糖尿病学会は2010年5月、糖尿病の新たな検査基準を発表した。
という従来の診断基準に加え、新たに過去1〜2カ月間の血糖の平均値を示す「ヘモグロビンA1c(HbA1c)が6・1%以上」を追加。血糖値が基準以下でも、HbA1cの値が基準を超えていれば「糖尿病型」になる。HbA1cといずれかの血糖値、両方が高い場合は一発で確定診断となる。ただ、2回ともHbA1c値だけが基準を満たしても、糖尿病としない。
血糖値は、その日の食事内容や体調、ストレスなどにより変化する不安定な指標だ。赤血球に存在するたんぱく質「ヘモグロビン」とブドウ糖が結合したHbA1cは、過去1〜2カ月間の血糖状態を表すため、検査の直前だけ生活習慣を見直しても、ごまかせない数値と言える。 また、HbA1cは、空腹時やブドウ糖負荷試験による血糖値より測りやすいという利点もある。
2型糖尿病の初期の治療は、食事療法、運動療法で血糖値をコントロールすることだ。
それだけではコントロールできない場合や1型糖尿病の人は、経口血糖降下薬、インスリンといった薬物を使う。
2型糖尿病の薬物療法では、新しいメカニズムで効く薬が相次いで登場している。
従来の薬は、血糖値が下がってもインスリンが分泌されるため、低血糖を起こしたり、空腹感を覚え体重が増えたりといった問題を抱えていた。2010年になって、低血糖や体重増加を招きにくい新しいタイプ「インクレチン関連薬」と呼ばれるインスリン分泌促進薬が登場している。
食事を取ると消化管から分泌されるホルモン「インクレチン」はインスリンの分泌を促す一方、血糖値を上げるホルモンを抑制する。血糖値が高いときには働くが、低いときは働かないため、低血糖を招きにくく、食欲や胃の運動を抑えるという特徴を持つ。 インクレチンは、体内でDPP―4という酵素により分解されてしまう。この分解酵素の働きを抑えるのが「DPP−4阻害剤」と呼ばれる飲み薬と、インクレチンの構造を変化させ、酵素に分解されにくくする「GLP−1アナログ」と呼ばれる注射薬だ。
「DPP−4阻害剤」は万有製薬の「ジャヌビア」など3品がすでに販売されている。「GLP−1アナログ」ではノボノルディスクファーマの「ビクトーザ」が6月に国内で発売された。いずれもこれまでのところ、重い副作用は報告されていない。
解説文は10年6月16日更新