心臓や肺、肝臓などの器官を取り出して病気の人の臓器と取りかえる医療。
臓器移植は、病気になったり、事故にあったりして臓器がうまく働かなくなり、別の人の臓器と取りかえるしか治療法のない人たちのために考え出された。臓器を提供できるのは(1)心臓が止まり、亡くなった人(2)心臓は動いているが、脳の働きが止まって「脳死」になった人(3)健康な人だ。
(2)の脳死は、脳の機能が止まり、自分で呼吸ができず、回復する見込みがない状態のこと。自分で呼吸でき、意識が戻る可能性がある「植物状態」と違い、脳死になるとだいたい数日で亡くなる。
2010年7月17日、改正臓器移植法が施行され、家族の同意だけで、脳死からの臓器提供ができるようになる。
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欧米では脳死は人の死と考えられ、脳死になった人からの臓器移植がたくさん行われてきた。心臓が止まってから取り出して移植できるのは腎臓や眼球、膵臓のほか、皮膚や骨などに限られる。生きている人から臓器を取り出すと、その人の体を傷つけ、健康状態が悪くなることもある。脳死の人からは心臓を含むすべての臓器を移植に使うことができる。
日本では心臓が止まることが人の死という考え方が根強い。脳死と診断されても体は温かく、髪の毛やつめも伸びる。脳死を人の死と法律で決めることへの批判も強く、97年に臓器移植法ができた時も、「脳死は人の死かどうか」をめぐり、大きな議論があった。
97年の臓器移植法では、「臓器を提供したい」という気持ちを文書で残していた人が、実際に脳死となった時に限り、「その人は死んでいる」と考えることにした。その時、家族が認めれば、臓器を取り出すことができると定められた。15歳未満の子どもについては、臓器を提供することは禁止された。
改正された臓器移植法は、「脳死は人の死」という考え方にたっている。
10年1月から一部が施行され、「親族への優先提供」ができるようになった。
それまでは、日本臓器移植ネットワーク(移植ネット)に登録された患者の中で、医学的な必要性が高い人から順番に提供されてきた。もともと家族や親族への優先提供を禁じる規定はなかったが、01年に親族を指名して腎臓が移植されていたことがわかったため、公平性の観点から問題となり指針で禁止された。臓器売買が起きないように提供側と受ける側がお互いにわからないようにもなっていた。
改正後は「脳死」の状態になった人が、「親族に臓器を提供したい」とあらかじめ意思表示していた場合、優先的に提供を受けられる。親族といっても、親子か夫婦の間だけ。対象は心臓、肺、肝臓、腎臓、膵臓、小腸、角膜だ。腎臓と膵臓、角膜は心停止後の移植でも対象になる。
7月17日からの本格施行では、提供する人の考えがわからなくても、脳死と決める判定を受けることや臓器の提供を本人が拒否していなければ、家族の判断で臓器の提供ができるようになった。
年齢の制限もなくなり、両親などが認めれば、0歳の赤ちゃんからでも、臓器を取り出して提供できることになった。
日本では脳死になった人から臓器提供があったのはこれまで86例。改正を求める声が強まったのは、世界中の人たちの健康問題について話し合う世界保健機関(WHO)が、海外で移植を受けることを制限する方針を打ち出すことになり、日本人が将来、海外で移植を受けられない可能性がでてきたからだ。
日本では、移植を希望する人にくらべて、臓器の提供が少ないため、移植を受けるために海外に行く人が絶えなかった。特に小さな子どもの場合、心臓などおとなの大きな臓器は移植できず、子どもの臓器がもらえる海外で移植を受けるしかなかった。
法律の改正は、国内での臓器提供を増やすこと、子どもも国内で移植を受けられるようにするのが目的だが、解決しなければならない問題もある。
たとえば、子どもの脳は回復力が強いので、脳死かどうかきちんと診断できる方法をつくることが必要だ。脳死になっても何百日も心臓が止まらない子どもの例も報告されている。それだけ慎重にしないといけない。
厚生労働省の臓器移植委員会は、運用方法を定めた指向規則とガイドラインの改正案を発表した。
などがポイントだ。
法律では「脳死は人の死」とされたが、臓器の提供を認めた家族が後悔したり、提供を望まない家族がきちんと拒否したりできるよう、移植にたずさわる人たちの体制も、いま以上にしっかりする必要がある。
解説文は10年7月13日更新