
B型肝炎の症状と世界の流行状況
80年代までの集団予防接種で感染したとして、国に損害賠償を求めていたB型肝炎訴訟が和解へ動き出し、感染を防ぐ対策もかなり進みました。ですが、親から子へという形のB型肝炎の感染は最近も続いており、別ルートでの20、30代の感染も増えていることが分かってきました。
肝炎はA型とかB型と呼ばれますが、血液型とはなんの関係もありません。原因のウイルスが発見された順に付けられた名称です。今はE型まで5種類に分けられ、ほかにもF、G型などが挙げられましたが、今のところ肝炎の原因とは認められていません。
肝炎は昔からあったと考えられています。古代ギリシャ医学の父・ヒポクラテス(紀元前460年―同377年)は全身が黄色くなる黄疸(おう・だん)が流行した、と記しており、A型肝炎だったとみられます。 1950年に始まった朝鮮戦争で、血液から作った薬で治療を受けた米国兵士が次々と病気になったことをきっかけに研究が進みました。同じころ、水などからうつるA型と、血液からうつるB型を区別するようになりました。
B型肝炎の患者は日本で約9万人。感染者は100万人以上と推定されます。最高裁は06年に、集団予防接種の注射器の使い回しがB型肝炎の感染原因だったと認め「国は感染を未然に防止すべき義務があった」と認定しました。
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現在は対策が進み、注射器による感染はきわめて少なくなり、輸血での感染の可能性もかなり低くなっています。
B型肝炎の原因には親から子にうつる母子感染もあります。赤ちゃんが感染すると体にウイルスが残り続け、うち10〜15%が慢性肝炎となり、最終的に肝硬変や肝臓がんになるおそれがあります。
母子感染はワクチンでかなり防げますが、横浜市の済生会横浜市東部病院こどもセンターの藤沢知雄医師は母親が感染していると「今も生まれる子どもの5〜10%ほどは感染してしまう」と話します。
感染を防ぐには何度か赤ちゃんにワクチンを打つ必要があります。しかし、途中で母親と連絡が取れなくなりワクチンを打てなくなった例があるそうです。さらに「つばにも血液と比べて少ないがウイルスは含まれる。普通の生活なら大丈夫だが、父親でも食べ物の口うつしは避けて」とも呼びかけています。
もうひとつの感染経路として性交渉があります。国立国際医療研究センターの溝上雅史肝炎・免疫研究センター長は「20、30代の感染も増えている」と警告しています。献血者の血液を調べると、日本にはいないはずの欧米タイプのウイルスが若者の間で広がっているとする研究が09年に発表されました。別の研究で医師が原因を尋ねると、海外での知らない人との性交渉という例も多かったようです。
また、一度治ったと思ってもウイルスが再び活発になることも分かってきました。B型は大人が感染しても全身がだるい、食欲がないなどの症状が出た後、ほとんどは自然に治ると今まで言われてきました。しかし、その後、再び活発になる例が出てきました。この時、出産や性交渉、献血をすれば感染が広がるおそれがあります。
増殖を抑える抗ウイルス薬が次々登場していますが、ずっと飲み続ける必要があり、薬の費用がかさむため、患者には重い負担です。
今も予防が第一です。厚労省は注射器の使い回し、不衛生な入れ墨やピアス、知らない相手との性交渉はしないよう呼びかけています。一方で「常識的な注意事項を守っていれば、日常生活でうつらない」としています。握手や同じ食器や風呂をつかったりするぐらいでは感染しません。
保健所は原則無料で検査をしています。ほとんどの病院でも検査を受けられます。感染を広げないためにも、厚労省は検査目的の献血はやめるよう呼びかけています。
記者の一言
「B型肝炎は、これまでの感染の常識が変わってしまった。今までの考えで対策をしていては通用しなくなった」
今回の取材の出発点は専門家のこの言葉からでした。今、裁判で焦点になっているのは、80年代までの予防接種で苦しんでおられる方々です。感染防止対策が進んだとはいえ、まだまだ注意の必要な病気であることを実感しました。
今なおB型肝炎で苦しんでいる方が多くおられます。こうした方々のためにも、救済と再発防止策の徹底を願っています。(杉本崇)
2010年5月22日付け 週末be 「今さら聞けない+(プラス)」より
解説文は10年5月25日更新