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02月25日朝日新聞デジタル朝刊記事一覧へ(朝5時更新)

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河田防災塾

 南海トラフ大地震や豪雨など、いつ起こるか予想できない災害にどう備えるべきか――。減災・防災研究の第一人者で関西大学社会安全研究センター長の河田恵昭・特別任命教授が、連続講座「河田防災塾」を開催しています。関西大学主催、朝日新聞社後援で、「災害を前提とした社会をどう築くか」をテーマに来2018年3月まで全10回の予定。講義内容を随時、公開していきます。

河田恵昭

河田恵昭(かわた・よしあき)
 京都大学工学部卒業後、京都大学大学院を経て、1976年に京都大学防災研究所助教授就任。米国のワシントン大学やプリンストン大学に留学し、93年に同研究所教授、2005年に同研究所所長。その後、関西大学環境都市工学部教授、同大社会安全学部教授、12年から同大社会安全研究センター長。日本政府中央防災防災会議防災対策実行会議委員。兵庫、大阪、岡山、和歌山、三重、奈良、高知、新潟、愛知、静岡各府県の防災対策委員長を歴任。02年から人と防災未来センター長。

 地震や台風、豪雨が多発しているのに、多くの人にとって災害は「ひとごと」だ。もはやのんびりとしていられないということを強く自覚してほしい。
 昨年の熊本地震で、益城町は震度7に2度襲われた。町の直下を走る活断層沿いで大きな被害が出た。
 益城町と同様、京都市や奈良市にも活断層が走っている。人口は益城町より格段に多いから、活断層が動けば被害も大きくなる。「長い間、災害がないから安全だ」というのは思い込みでしかない。
 世の中が豊かになるほど、リスクに対する抵抗力が弱くなっていることにも留意すべきだ。
 たとえば鉄道の相互乗り入れ。とても便利だが、どこかでトラブルが起きると全線で電車が止まることもある。システムが巨大であるほど、一つのトラブルがネットワーク全体に影響を及ぼすためだ。
 ロボット化が進む工場もリスクに弱い。精巧な技術であればあるほど、地震でロボットの位置がずれるだけで製造ラインは止まる。修理できる技術者の数には限りがあり、長期間、サプライチェーンが途絶えることにもなりかねない。
 災害は縦割り組織の谷間や、社会的弱者に襲いかかってくる。
 たとえば医療。私の研究では、南海トラフ大地震が起きれば、和歌山県にいる3千人近い透析患者のうち半数以上は透析が受けられなくなる。県外に行くしかないが、大阪府や奈良県では、それだけ多くを受け入れる態勢になっていない。
 あらゆる政策や計画に防災の観点を組み込む「防災の主流化」が求められる。この役割を果たせるのは、やはり自治体や企業などの防災担当者だ。地域防災に役立つ話もふんだんに盛り込むつもりだ。

河田恵昭氏からのメッセージ

■講義1回目

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温暖化影響、風水害は激化 近年の災害の発生傾向(2017/5/6)

■河田防災塾:1 地球の温暖化の影響で、風水害は激化する傾向にある。2011年の台風12号では、奈良県上北山村で1808・5ミリの雨量を記録した。台湾では近海の海面水温が日本より高いため、水蒸気を多く……[続きを読む]

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■講義2回目

写真・図版

繰り返す南海トラフ地震 近年の災害の発生傾向(2017/6/7)

■河田防災塾:2 地震には活断層地震と、プレート境界型の海溝型地震がある。海溝型地震の一つが南海トラフ地震だ。 南海トラフ地震は繰り返し起きている。起こる数十年前からマグニチュード(M)6以上の内陸や……[続きを読む]

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 時間の経過と津波の高さを表した動画。断層が大きくずれる箇所ごとに5ケースを想定

【ケース1】東海地方が大きく被災する場合

地震が遠州灘から起こり始め、南海トラフに沿って拡大。5分後には駿河湾沿岸や紀伊半島に5メートル以上の津波が押し寄せ、20分後には静岡、三重県の一部に20メートル以上の津波が到達する。30分後には高知県で10メートル以上、九州でも5メートル以上の津波が押し寄せる。津波は繰り返し、数時間後も断続的に大津波が来襲する。

■講義3回目

写真・図版

危機管理準備、実践訓練を 自治体などの対策(2017/7/28)

■河田防災塾:3 災害への対応を時系列で見ると、発生から10時間は「将来が読めない混乱期」、100時間は「命を守る活動期」、1千時間は「暮らしを維持する活動期」で、その後は「暮らしの再建・復興期」にな……[続きを読む]

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■講義4回目

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市民力、近所付き合いから 地域住民の役割(2017/8/5)

■河田防災塾:4 防災の基本はあくまでも「自助」。自助でできないところを「共助」でまかない、それでもやれないところを「公助」でカバーする。こういう基本的な姿を知ってもらう必要がある。 まずは住民一人ひ……[続きを読む]

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南海トラフ地震の被害想定:こんなことが起きる

  •  地震発生翌日に最大430万人が避難所へ、270万人が親族・知人宅などへ避難。家庭内と公的備蓄で食料が計6340万食、飲料水は計13億3千万リットルあるが、不足量は1週間で食料が9600万食、飲料水は1億4500万リットルに達する。被災地内外での買い占め、道路の渋滞や寸断で配送が困難になること、保管スペースの不足、物資が届いても適切な管理や効率的な配分ができないことも想定される。
  •  静岡から大分の臨海部の石油コンビナートの2万9200施設のうち、火災は5施設未満、流出は60施設と想定。周辺に影響が及ぶ可能性もあり、地盤の液状化や長周期地震動で被害がさらに増える恐れもある。
     東海や近畿、四国、九州東岸で固定電話の9割に支障、携帯電話も被災翌日で8割の基地局が停止。通信網が機能する地域もつながりにくくなる。
  •  被災や停電で最大4万1900台のエレベーターが停止、閉じ込められた多数の人の救出に半日以上かかる。要援護者や夏場の熱中症による被害、古い耐震基準のエレベーターの落下も想定。復旧には長い時間がかかる。
     1900の農業集落、400の漁業集落が孤立。道路の断絶などで救助・救援活動が遅れ、物資不足が起こる。通信も途絶え、情報伝達も困難に。
  •  重傷者や被災医療機関からの転院患者が多数発生する一方で、被災で医師や看護師が不足する。対応が難しい外来患者は14万人と想定。断水や停電で人工透析を受けられないことも。
     避難所には特別なケアが必要な災害時要援護者が多数。65歳以上の単身者22万人、要介護認定者17万6千人、身体障害者14万2千人、精神障害者12万6千人、妊産婦8万人。
  •  道路や橋の損傷が津波浸水域で3700カ所、浸水域外で3万7400カ所と想定。鉄道は東海道・山陽新幹線は全線不通。線路の変形や陥没が新幹線で290カ所、在来線で1万8千カ所。港は1万7千の係留施設のうち5千カ所に被害、国際戦略港湾や重要港湾も多数被災。空港の最大浸水深は高知と宮崎が5㍍程度、関西が3㍍、中部と大分が2㍍と想定される。
  •  平日正午に地震が発生した場合、外出先にいる人は中京と京阪神で計1060万人、当日中の帰宅困難者は中京で110万人、京阪神で270万人。
     医療不足や作業中の事故などによる関連死、揺れや津波に伴う交通事故や鉄道事故、避難で不在となった店舗や住宅への空き巣も想定されている。
     浸水や火災で被災する建造物の国宝・重要文化財は250施設と想定。

■講義5回目

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想定外視野に事業計画を 企業の災害対策上の課題(2017/10/16)

■河田防災塾:5 わが国の企業防災は不十分だ。災害時の対応を定めた事業継続計画(BCP)は大企業では普及率が高いが、中小企業では全く進んでいない。これでは被害を受けたとたんに倒産することになりかねない……[続きを読む]

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■講義6回目

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効率的な対策、検討早急に 災害にもろい「高齢化」浮き彫り(2017/11/27)

■河田防災塾:6 災害は我々の言うことを聞いてくれない。「対応できないから小さくして」というわけにはいかない。 1995年の阪神淡路大震災から今年1月までに人的被害が生じた地震は144回あった。いつで……[続きを読む]

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[写真特集]熊本地震1年

■講義7回目

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官民の情報、共有の必要性 支援活動最適化へICT活用を(2017/12/20)

■河田防災塾:7 東日本大震災で親を亡くした子どもは一生、悲しみを持ち続ける。避けることができる悲しみを、作ってはいけない。 前回に続き、南海トラフ沿いの地震に生かすべき熊本地震の教訓について話す。熊……[続きを読む]

[熊本地震6カ月]この半年 熊本の姿は

  • 熊本地震6カ月 復興どこまで

    半年を経て変わりゆく風景と、なお復旧が進まぬ風景。写真でたどる熊本の定点観測です。

  • 検索データが語る熊本地震6カ月

    検索データの変化からは、時と共に変化する被災者のニーズや、被災地と被災地外の人々の関心の違いが見えた。

■講義8回目

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地震に劣らぬ豪雨被害 大都市圏の地盤沈下、浸水拡大(2018/1/19)

■河田防災塾:8 「災害と言えば地震」と考えて、地震の対策ばかりをするのは間違いだ。水害も忘れてはいけない。 地球温暖化が進むとともに、台風の発生位置や経路が変わってきた。台風は海面の水温が26、27……[続きを読む]

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■講義9回目

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災害前に復興計画作りを ボランティア・NPOの活用(2018/2/7)

■河田防災塾:9 阪神・淡路大震災の当時、ボランティアは主に行政の手が回らないことを補っていた。しかし、発生から23年が経って支援物資の管理や被災者のニーズの把握、NPOとの連携などへ、その役割は大き……[続きを読む]

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大災害を乗り切るために 過去の教訓から考える (2018/1/31)

国際防災・人道支援フォーラム2018(人と防災未来センター、兵庫県などの実行委員会主催、朝日新聞社など後援)が23日、神戸市中央区で開かれた。発生確率が高く、起きれば甚大な被害をもたらす南海トラフ地震や首都直下地震を「国難」ととらえ、国内…[続きを読む]

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