
第7回 チップとおあいそ
少しの心づけが、心地よいおあいその素
文 上野陽子
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学生の頃、ウェイトレスをしていたアメリカ人の友人から、こんな武勇伝を聞いたことがあります。「ねえ、昨日店に来た日本人男性たち、チップを払わないで出て行ったのよ」。そして、怒った彼女は……「追いかけていって、チップを払うようにまくし立ててやったわ」。
 写真/中野愛子
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アメリカ人の女性って怖い、なんて思う方もいるかもしれませんが、彼女たちにとっては、チップこそが主な収入の場合もあるんです。たとえばウェイトレスなら、1日の基本給が10〜20ドルくらいで、あとは自分がしたサービスに応じたチップが能力給になることも。一生懸命に「How’s everything?(なにか問題はない?)」なんてサービスをして、がんばりに見合ったチップをもらうわけです。もちろん、お店によってシステムが違い、全員でチップを均等にわけたり、その人だけがもらったり、という場合もありますが。
アメリカの国税庁(IRS)では、給与レベルが低いレストランに対して「ウェイトレスがサービスした売り上げの最低8%のチップが支払われるように」と定めているそうです。そこに差損が出た場合は、レストランが埋め合わせをしなければならいとか。こうなると、チップは給料の一部みたいなもの。チップを払わないのは、その人の給与を踏み倒しているも同然だったわけです。
なのに、チップの習慣がない日本人は、食事にお金をかけて楽しむわりには、チップをケチったり置かないことも多いようです。チップが大切な給料の一部であるウェイトレスとしては、血相変えて追いかけたくもなるってものです。
いくら置けばいいかは国やサービスによって変わるため、慣れない日本人には難しいところ。たとえば、最近のイタリアではチップは古い慣習だとされていて、無理じいされたりはしませんが、観光客からは喜んで受け取ります。まあ、他国を訪ねる前にその国の事情を調べるのが一番ですが、欧米や高級ホテルの目安はこんなところ。
ベルボーイの荷物運搬 1〜2ドル程度
タクシー 15%程度
レストラン 15%程度
ツアーガイド 15%程度
カジノディーラー 勝ち金額に応じて(チップしだいで勝ちが変わるという話も!?)
美容院・エステ 15%程度
など。
枕もとに1、2ドル置くピローチップは、実は日本人だけの風習ともいわれ、世界的にはこだわる必要はないようです。これこそ本当に心づけでその人しだい。まあ、部屋にあるものを見せるわけで、払ったほうが安心だという人もいます。あるいは、チップひとつで、枕元に置かれるチョコレートがふたつになったり、飾り花が1輪増えたりする可能性だってあります。ちょっとした心づけは、小さな心地よさや愛想に反映されるものかもしれません。
もちろん、レストランのウェイトレスにだって、最後にチップを見てがっかりされるよりも、にこやかに送り出してもらいたい。日本ではお勘定のことを「おあいそ」といいますが、欧米ではチップまで含めてはじめて、「お愛想よく送り出してね」といえるようです。
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旅のA to Z その7
チップはサービス者の大切な収入源
少しの心づけが、心地よいおあいその素