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旅する人のアペリティフ

大切なパスポートの保管法

第37回 パスポート紛失事件

2007年08月14日

 アメリカのタワーレコードで買い物をすませ、レジでお財布を出そうとバッグをさぐった。あれ、ない!? そんなはずはないともう一度探るけれど、やっぱりない。お財布と一緒にいれておいたはずのパスポートが、ないのだ!!

写真写真/中野愛子

 そうか、さっき財布の中のカードを確認したときに落としたのかもしれない。

お財布をなくすとカードを止めるなどあれこれ面倒ながら、パスポートの申請はもっと大変。

 私の青ざめた形相に、店員さんも「Are you OK?」なんて声をかけてくれるけど、OKなわけがないっ!

 そのとき、トントンと後ろから肩を叩かれた。振り向くと、ラッパーのような格好で金のネックレスをジャランとさせた20歳くらいの男性が立っていた。

 「どうかした?」

 日本人のパスポートは悪用される率が高いから、その風貌の男性に「パスポートをなくした」なんていえやしない。でも、その男性はきちんと私を見てこういった。

「何かなくしませんでしたか?」

 迷いながらも「パスポートを……」というと、なんとその男性、チャラチャラとした洋服から徽章をとりだし「私は警察官です」という。私のパスポートを持っているから一緒に来るようにと。

 うっそだー。だって、どう見たってストリートのラッパーだ。

 でも、藁をもすがる思いでついて行くと、私のパスポートを取り出して「次は気をつけるように」と言い残し、また、タワーレコードの客の中に消えていった。

 そう、彼は覆面の警察官。

 なんと運がいいことに、私のパスポートは覆面警察官に拾ってもらったのだ。写真を見て、私を探してくれたのだという。

 大事にいたらなかったパスポート紛失事件。もし、悪い人に拾われて面倒なことになったらと思うとゾッとする。

 さて、今回何がいけなかったかというと、大切なパスポートを財布などと一緒にして、簡単に落ちるような入れ方をしていたことにつきる。

 私のパスポート用のカバーには、何かに留めるための紐とホルダーがついている。持ち歩くなら、それをカバン内側ポッケのファスナーにでもかけて、奥深くしまっておくべきだった。

 以来、私は両面にファスナーがついた小さなリュック型のバックを持っている。表側にはハンカチや化粧品など、まあ抜かれてもいいようなものと、奥にお財布を。そして、背中にあたるファスナーの中には、パスポートなど頻繁に使わない貴重品を入れておく。

 よく貴重品をウェストポーチに入れる人がいるけれど、それも意外と危険。子供のスリに抜かれたりするし、なによりも貴重品だけが凝縮された小袋だから狙われやすい。

 持ち歩かなくていいときには、ホテルでセキュリティボックスへ。持ち歩くなら、ほかのものを出したときに一緒に落ちたりしないように、出しにくいところに入れておくといい。私自身も肝に銘じて。

それにしてもあの警察官、金のネックレスも仕事のカモフラージュのためといいつつ、タワレコにしっとり馴染んでいた。アメリカの警察、いい人選だなぁ。

♪♪♪

旅のA to Z その37

簡単に取り出せないところにしまうなど

パスポートの管理には細心の注意を

文 上野陽子

プロフィール

上野陽子
立教大学在学中にカナダ・オーストラリアに留学。卒業後ボストン大学修士課程でジャーナリズムを専攻し、通信社・出版社を経てフリーランスで活躍中。趣味と仕事で世界をぶらり、旅した国は40カ国を超える。旅やカルチャーをテーマにした連載も多数。
著書に『海外ネット通販百科』、共訳書に『悪魔のマーケティング』(日経BP社)、編集書にプロの撮り方『旅行写真』(日経ナショナルジオグラフィック社)ほか。3月発売予定の『恋する英語』と、同名のブログhttp://koisurueigo.com/も好評掲載中。
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