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旅する人のアペリティフ

行きたかったお店や料理を一考する

第44回 お店と料理の魅力考

2007年11月20日

 ゴツゴツとした壁をつたって、ろうそくだけが頼りの仄暗い階段を下りていくと、そこはまさに洞窟。エニグマの音楽が響き渡る中、ウェイターが料理を運んでいる。

写真

写真/中野愛子

 旅先のプラハで、レストラン「サンタ・クララ」に行ってみた。かつてはプラハの王室がワインセラーに利用していた洞窟を、シンプルに飾ったお店。日本のガイドブックで紹介されていないので、めったに日本人に出会うことはない。ならば、なぜこのお店に来られたかというと、理由はこうだった……。

 私が関わった雑誌でプラハの特集をした号をもらって眺めるうちに、行きたいお店を見つけ、楽しみを胸に、さあ出発。

 ところが、いざホテルのコンシェルジュにお願いすると、「1カ月先まで予約がいっぱいです」と言う。そこで聞かれたのが、こんなこと。

 「どうして、このレストランに行きたかったんですか?」

 考えてみると、評判の味、老舗、人気……なによりも洞窟のような雰囲気が気になっていることに気がついた。

 コンシェルジュはうなずくと、「同じくらいのランクで、本物の洞窟で雰囲気のいいレストランをご紹介しましょう。穴場ですよ」。

 そこは、まさに私が行きたかった通りのお店。雰囲気も重厚で、岩に跳ね返る音楽もなんとも不思議。料理も繊細で食材も新鮮だ。デザートは、テーブルの脇でイチゴにリキュールをかけて火をつけるフランベなんて、ちょっと気のきいた料理も楽しめた。

 思ったお店に行けなかったのに、大満足。私が行きたかったのは、「どうしてもこの店」ではなくて、「こんな雰囲気と料理の店」だったらしい。

 旅に出る前に「こんな店に行きたい」と見当をつけるのはオススメだ。

 国内でも海外でも、テレビや雑誌でチラと見かけたときにメモをとって、あとはネットで調べればほとんどの情報がでてくる。「ああ行ってみたい」と思えば、行くまでの旅の楽しみも、行ってからの達成感もひとつ増えるというもの。

 そのとき、何よりも気にとめたいのが、「なぜそこに行きたいのか、食べてみたいのか」。風景がよかったのか、演奏を楽しみたかったのか、“その料理”を食べたかったのか……ということだ。

 以前、チベットで一緒になった学校の先生は、テレビで見た「刀削麺」というものがどうしても食べたいと探していた。その名から想像できるように、小麦粉を練った塊を大きな包丁で削りながら大鍋に投げ入れていく、ウドンのような食べ物。

 「それがね、すごいテンポなの。薄く削り飛ばして、鍋にいれるのよ!」

 街を歩いてやっと「刀削麺」と張り紙をしたお店を見つけて、大興奮。料理を待つと、まさにウドンのような丼がテーブルにドンと置かれた。

 確かにそれは、先生が探していた「刀削麺」。なのに、その場にいた全員喜ぶどころか、チンと静まりかえってズズズーと汁をすすると、さっさと店を出た。

 そこで、先生が本当にしたかったのは、「刀削麺を食べること」ではなくて、「刀削麺のパフォーマンスを見ながら料理を楽しむこと」だったと気付いたってわけ。

 食べたいもの、行きたいお店を見つけて旅の楽しみを増やしたら、「その魅力はなんだったかな」と、まずはご一考を。満足のいく店や料理に行き当たる率がグンとあがりますよ。

♪ ♪ ♪

旅のA to Z その44

行きたい、食べたい料理と店の魅力は

どこにあるかを考えておけば、満足率もアップ!

文 上野陽子

プロフィール

上野陽子
立教大学在学中にカナダ・オーストラリアに留学。卒業後ボストン大学修士課程でジャーナリズムを専攻し、通信社・出版社を経てフリーランスで活躍中。趣味と仕事で世界をぶらり、旅した国は40カ国を超える。旅やカルチャーをテーマにした連載も多数。
著書に『海外ネット通販百科』、共訳書に『悪魔のマーケティング』(日経BP社)、編集書にプロの撮り方『旅行写真』(日経ナショナルジオグラフィック社)ほか。著書『恋する英語』と、同名のブログhttp://koisurueigo.com/も好評掲載中。

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