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旅する人のアペリティフ

旅行から戻ってすべきことは……

第56回 旅のあと片づけ

2008年05月08日

 さて旅から戻ってきて、ああやっぱり我が家が一番、なんてほっとひと息。荷物もホテルのように誰かがきれいにしてくれたらいいけれど、やっぱり自分で片づけるしかない。 洗濯、おみやげの整理、持ち物をもとに戻して……などは、どんなに疲れていても片づけるだろう。というよりも、やらなきゃならない。

写真

写真/中野愛子

 でも、「あとでいいや」と思いがちながら、記憶が新鮮なうちにやっておくべきこともある。

 そのひとつは、写真・映像・メモの整理。

 いつでもいいものだから「時間があるときに」と思うと、いつまでたってもまとまらない。

 私も、特に締切りでもない限りは、ついついほったらかしてしまう。とりあえずどこかにまとめておけば、なくさないかな、くらいの感覚。

 でも、「記憶を頼りにあとで書けばいいや」なんて思うと、それこそきれいさっぱり出てこなくなる。あんなに刺激的な旅だったはず、なのに。

 だから、細かいデータや、特に「どんな風に感じたか」だけは早くまとめたほうがいい。

 いつもの生活に戻ったとたん、その忘れ方たるや見事なもの。そして、整理せずにとっておいたパンフレットと一緒に、感動した気持ちまでもさらさらと風化していく。

 たとえどんなに記憶力がよくても、気持ちが熱いうちに、整理したいもののひとつである。

 ふたつめは、お礼状などを書くこと。

 とてもよくしてくれたガイドさんと盛り上がって「ありがとう! 日本に帰ったら手紙書くよ」とか、知り合った人に「日本からお礼を贈るね」なんて言ってしまうこともある。

 もちろん、そのときには本当にそう思っている。でも、時間がたつにつれて雑事に埋もれてしまいがちな思いでもある。

 普通なら知りあうこともないような人と知り合って、とても興奮したはず。なのに、ほんの少しの手間を惜しんだり、「面倒だ」なんて気持ちであの高揚した気持ちを忘れてしまうのはもったいない。

 すっかり冷めてしまわぬうちに、「疲れがとれたらすぐ用意しよう」くらいのつもりでいたほうがいい。

 「なんでそんな面倒なことを……」なんて思う人もいるでしょう? 本当のところ、私だって億劫になることも多い。

 でも、ちょっと一筆書くために記憶をさぐる時間が、また、旅の思い出に色を加えてくれるから、旅の締めくくりにとてもいい。それに、海外で知り合った人から葉書や手紙が届いたときには、私自身も本当にうれしいと思うから、「やっぱり書こうかな」という気分になる。

 ついでに、手紙に折鶴を一緒に入れてあげたら、喜ばれたことがある。あるいは、小さな日本のお守りなんかも珍しくていいかもしれない。

 「家に帰るまでが遠足」なのは、お母さんが後片づけをしてくれたから。「片づけ、お礼のひと筆、それから思い出整理までが『大人の旅』」かもしれません。

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旅のA to Z その56

片づけ、手紙、思い出整理

ぜんぶ含めて大人の旅

文 上野陽子

プロフィール

上野陽子
立教大学在学中にカナダ・オーストラリアに留学。卒業後ボストン大学修士課程でジャーナリズムを専攻し、通信社・出版社を経てフリーランスで活躍中。趣味と仕事で世界をぶらり、旅した国は40カ国を超える。旅やカルチャーをテーマにした連載も多数。
著書に『海外ネット通販百科』、共訳書に『悪魔のマーケティング』(日経BP社)、編集書にプロの撮り方『旅行写真』(日経ナショナルジオグラフィック社)ほか。著書『恋する英語』と、同名のブログhttp://koisurueigo.com/も好評掲載中。

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