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美術館を効率的かつゆっくり鑑賞するために

第71回 美術館めぐりのコツ

2008年12月2日

  • 筆者 上野陽子

写真  

 美術館に入ったときの、ひんやり深閑とした空気感が大好きだ。

 美術に精通しているわけではないけれど、なんとなく雰囲気が好きで、どの国でも時間があればぶらりと立ち寄る。

 今までで印象に残っているのは、ニューヨークのメトロポリタン美術館で開催されたリチャード・アベドンの写真展。まるで壁のような大きさで展示された写真は、被写体が動き出しそうな臨場感と迫力たっぷり。学生時代に奮発して1万円を超える写真集を購入し、その迫力に圧倒されたけれど、美術館展示の迫力たるや、印刷物の比ではなかった。

 そして、ちょっと違った美術館の印象と言えば……ルーブル美術館に入るために、12月末の冬空の下で2時間近く並んだこと。

 しかも、お目当ての「モナ・リザ」は黒山の人だかりで、そばに近寄るのに一苦労。鑑賞者同士の肘が入りあうなか、私も負けずにグググイ、なんて。そんなことに神経を使って、ゆっくり鑑賞するどころではかった。

 静かな美術館で、心穏やかに絵画や写真が眺められたらいいのだけれど、特にバケーションの季節には、ひじが入りあうような混み具合を覚悟しなければならない。

 そもそも、海外の有名美術館は思いのほか広く、じっくり見ようと思ったら1日では足りないところも多い。

 短期の旅行で大きな美術館に行くなら、1日の予定に大きく組み入れることは必須。加えて、美術館内まで予定をたてないと、時間が足りないかもしれない。

 そこで、美術品の鑑賞方法はさておいて、美術館自体をまわるコツにふれてみる。

(1)まずは基礎の基礎、閉館時間を調べておくこと。ご存じのとおり、美術館や博物館の閉館時間は夕方早く、場所によっては、見てまわる最低時間を逆算して、午後3時半くらいで入館ストップのこともある。加えて、見たい絵画の館だけ閉館が早かったり、曜日によって休みだったり、といったことも気をつけたい。

(2)次に、自分が見たい作品は、場所を確認しておくこと。とてつもなく広く、とんでもなく複雑な館内を探しまわりつつ他の作品を眺めていたら、そこに行きついたときには閉館の鐘が……なんてこともある。

(3)そして、すべてを見ようとしないこと。もちろん、美術館の大きさにもよるけれど、逐一見ていたら、大きな美術館では時間は足りなくなる。たっぷり時間をとるか、あるいは、お目当てをじっくり鑑賞したら、ある程度は飛ばして歩くほうが賢明だ。

(4)混雑具合を確認しておくのも重要。私のように、美術館に入るまでに2時間もかかったら、短期旅行では時間がきつくなる。できれば、混雑していない時間、時期を見はからいたい。あるいは前売り券や優待券の存在を確認するのもひとつ。インフォメーションや、ホテルのコンシェルジュに問い合わせすればすぐにわかる。

(5)もし団体がいたら、そばに行ってガイドさんの説明を何気なく耳にはさむ。個人でまわっていると、価値ある作品に気づかないまま、通り過ぎることもあるからだ。

(6)最後に、ミュージアムショップは、お土産の宝庫! 絵ハガキだけじゃない、魅力的なグッズがたっぷり並んでいる。美術品のレプリカからポップなアートまであれこれ。以前、ブラジルのモダンミュージアムで、モナ・リザやウォーホール作モンローのマグネット福笑いを買ったことがある。ゴッホの絵画の部屋の模様替えだって自由自在。こんな遊び心のあるグッズは眺めるだけでもおもしろい。

 日本にやってくることもある美術品だけれど、できれば、その土地の独特の雰囲気の中で、混みすぎない状態で鑑賞するのが一番。

 生で見て初めて感じられる風合いや迫力、そこから受ける感動は、何ものにも代えがたい。上手にやりくりして、まずは美術館そのものを味わう時間をとることから、ですね。

♪ ♪ ♪

旅のA to Z 71

時間のやりくり、場所の把握

広くて複雑な美術館では的を絞って楽しもう

プロフィール

上野陽子(うえの・ようこ)

 立教大学在学中にカナダ・オーストラリアに留学。卒業後ボストン大学修士課程でジャーナリズムを専攻し、通信社・出版社を経てフリーランスで活躍中。趣味と仕事で世界をぶらり、旅した国は40カ国を超える。旅やカルチャーをテーマにした連載も多数。最新刊『気持ちが伝わる英会話のルールとマナー』(日本実業出版社)が好評発売中!
 他に著書として『海外ネット通販百科』、共訳書に『悪魔のマーケティング』(日経BP社)など。著書と同名のブログ『恋する英語』はこちら。

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