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JRの切符が買えるオレンジカード(オレカ)が、3月末に首都圏での販売を終える。1985(昭和60)年の発売当時は「キャッシュレス時代の到来」ともてはやされ、年間300億円を超す販売額を誇ったことも。しかし近年は、Suica(スイカ)などのICカードに押され、姿を見かけなくなっていた。
オレカは券売機に入れると切符が買える代金前払い式カード。JR各社で使用可能だが、スイカと違い私鉄や買い物では使えない。500円、千円、3千円の3種類がある。
オレカ第1号は85年の東北・上越新幹線の上野駅開業記念。国鉄が20万枚限定で販売した。上野駅乗り入れで廃止された大宮―上野を結ぶ新幹線リレー号の客室乗務員を「オレンジガール」とも呼んだことから「オレンジカード」と名付けたとされる。
その後、ブルートレインや観光名所をデザインしたオレカが相次いで発行され話題に。愛好家の収集対象になったこともあった。
カード売買専門店トレジャー(東京都中野区)の長尾美千生(みちお)社長は「スイカは図柄が全部一緒。それに比べてオレカはバリエーション豊かでコレクター好み」と言う。80年代後半にはアニメ「うる星やつら」を描いた千円のオレカが20万円の値を付けたこともあり、現在も7万〜8万円で売買されているという。
82年発売のテレホンカードと共にキャッシュレス時代を象徴する商品となり、86年には三菱総合研究所が「今年の成長商品」に選んだ。89年の消費税導入後は小銭不要のオレカがさらに人気を集め、90〜96年度にはJR東日本だけで毎年300億円以上を稼いだ。
しかし変造カードの不正使用が続き、JR旅客6社は97年3月に5千円や1万円の高額オレカの販売を停止。JR東の翌97年度の販売額は114億円まで急落した。2001年に販売が始まったスイカの普及で売り上げはさらに落ち込み、10年度は4億円。年間の販売枚数も24万6千枚と、10年前の7.5%にとどまった。
JR東は現在、東京駅や横浜駅など141カ所でオレカを売っているが、3月末でうち117カ所での販売をやめ、首都圏での販売を終える。「より機能性のあるICカードの誕生でオレカの時代は終わった」と担当者は話す。
オレカは本当に役割を終えたのだろうか。
実はここ数年、JR旅客6社合計でみると販売枚数は増加傾向で、10年度の合計で233万枚。ピーク時には遠く及ばないが、3年前の1.47倍に増えた。
各社ごとの発行枚数が公表されておらず原因ははっきりしない。「どこで売れているのかこちらが知りたいくらい」(JR九州)。だがJR各社の担当によると、最近では西日本の「ゲゲゲの鬼太郎」や九州の「EXILE(エグザイル)」といった「ヒット商品」があったといい、好きなタレントやアニメのシリーズものを1人で何枚も買う「大人買い」が要因、と見る向きもある。カード専門店の長尾社長も「昔と違い、遠方でもネットで購入できる」と分析する。
東日本以外のJR各社は販売縮小の予定はないといい、JR東でも4月以降、青森駅や新潟駅など東北や信越など24カ所で買うことができる。首都圏でも、当面の間はオレカを使うことができるという。(羽賀和紀)
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