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2013年2月9日20時26分
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B787、1カ月間飛べず 国内欠航2千便 調査が難航

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写真:B787の主な調査先拡大B787の主な調査先

 【工藤隆治】ボーイング787型機のバッテリートラブルは、運航停止命令を受けて世界中の同型機が1カ月近く飛べなくなる異例の事態になった。日米両国が調査を続けているが、原因は不明だ。国内2社の欠航は約2千便に上り、「夢の飛行機」と呼ばれた最新鋭機の視界は晴れない。

■電池のショート、原因わからず

 「認可時の想定より不具合の発生率が高い」

 米国家運輸安全委員会(NTSB)の7日の会見で、ハースマン委員長はこう指摘した。ボーイングは、バッテリーが発煙する確率を1千万時間のフライトで1回以下と想定していた。だが実際は、就航から10万時間以内に日本航空機と全日空機でトラブルが2回起きた。

 NTSBは、日航機の出火は電池内部のショートが発端だとしている。電池のプラスとマイナスがつながってしまう現象だ。ショートで発生した高熱が電池の化学反応を促し、さらに高温になる「熱暴走」が起き、並んでいる電池に広がった。ただ、ショートの原因はわかっていない。

 高松空港に緊急着陸した全日空機のバッテリーでも熱暴走があったことがわかっている。日本の運輸安全委員会は、製造元のGSユアサ(京都市)に持ち込んで分解を続けるが、詳細な調査は難航している。

 熱暴走の原因は何か。東京理科大の駒場慎一准教授(電気化学)は「過充電」を挙げる。リチウムイオン電池は容量を超えて充電すると、溶けた金属リチウムが内部でとげ状になり、プラスとマイナスの電極をつないでしまってショートを引き起こすという。

 リチウムイオン電池は国産充電池の7割を占め、三菱自動車の電気自動車「アイミーブ」やノートパソコンにも使われている。燃えやすい有機溶媒を使っているので過充電を防ぐ保護回路があるのが一般的だ。

 駒場准教授は「保護回路がうまく機能しなかったか、保護回路の限界を超えた瞬間的な電圧がかかった可能性がある」と指摘する。運輸安全委は保護回路だけでなく、米国製の充電器も調査対象にしている。

■パイロット、自宅待機も

 航空会社への影響は深刻だ。9日までの欠航は全日空が705便、日航が40便。欠航は全日空で3月末まで、日航でも2月末まですでに決まっている。全日空と日航によると、787型機のパイロットが別の機種を操縦するには再訓練が必要で、今は会社や自宅で待機しているという。

 国土交通省によると、旅客機の運航停止命令は1979年以来。当時は米国で離陸直後のDC―10型機からエンジンが外れて墜落し、運輸省(当時)が日航に同型機の運航を禁じた。エンジン取り付け部の点検強化を条件に運航再開を認めたのは約1カ月後だった。

 今回、運航再開に国交省は慎重だ。米連邦航空局(FAA)との電話会談を連日続け、職員2人をFAAに派遣したが、太田昭宏国交相は「あくまで原因究明に力点を置いている」と話す。

 ただ、原因が特定できない恐れもある。長崎県のハウステンボスで2010年7月、遊覧船の爆発事故があり、モーターを動かすリチウムイオン電池が黒こげの状態で見つかった。運輸安全委は11年10月、電池が過熱してガスが発生し、着火して爆発したとの報告書を発表したが、発端となった過熱の状況は明らかにできなかった。ハウステンボスはこの船を復旧させず、運航を取りやめた。

 国交省航空局の高野滋参事官は「日米の二つの発煙トラブルの一方でも原因が明らかにならないうちは運航再開は考えられない」と話す。

     ◇

 〈ボーイング787型機のトラブル〉 米ボストンの空港で1月8日、駐機中の日本航空機のバッテリーが出火した。同16日には四国上空で全日空機の操縦席に異臭が立ちこめ、高松空港に緊急着陸した。いずれもバッテリーが炭化しており、日米の航空当局は787型機の運航停止命令を出した。7カ国8社が所有する計49機が現在、すべて運航を中止している。

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