2011年9月某日、埼玉の熊谷まで輪行し、長瀞・秩父からひと山越えて東京側へ抜け、1泊して多摩川のサイクリングコースを走った。
午前8時47分、熊谷駅に到着。横浜方面から輪行で北へ向かう時、湘南新宿ラインというのは便利だ。東京駅や上野駅の雑踏を自転車を担いで乗り換えなくて済むのがいい。熊谷駅前では熊谷次郎の騎馬像が出迎える。
一ノ谷の戦で自分の息子と同じくらいの年齢の平家の若武者・平敦盛を討ったことに無常を感じ、法然の弟子となって仏門に入ったという、年配者には平家物語で良く知られた人物だ。
そんな像を横目に自転車を組み立てつつ、昨秋の会津行にも同行した健脚チョモランマ君を待つ。前にも言ったが、彼はチョモランマ登山隊に参加したカメラマンなので私が密かにそう呼んでいる肉体派だ。千葉県の流山市から熊谷駅までの約70kmを自走して来る予定だ。
9時過ぎ、チョモランマ君無事に到着。駅前のコンビニで飲料を仕込み、9時30分に出発。まず長瀞をめざし荒川沿いの堤防を快調に行く。
私が先頭でペースをつくり、チョモランマ君には後をついてもらう。時速25km前後と、ロードとしては比較的緩やかなペースだが私には十分。やがて堤防の道も終わり、車と一緒の県道81号に合流する。車の数も左程多くなく、まずまず走りやすい道路。ぽつぽつ落ちていた雨も1時間ほどでやんだ。
11時過ぎ、長瀞に到着。長瀞駅から河原の岩畳までの100mほどは両側に土産物屋が連なり、なかなかの活況を呈している。ここの岩畳は一度見たら忘れられない見事な景観だ。新緑のころや紅葉の頃は見事だろう。今回は数日前の雨のため水が濁っていたのがやや残念。
土産物屋の一角でコーヒーブレークをとりつつ、秩父から先のルートと所要時間などを検討。平地なら距離で時間をはかれるが、峠が入ると単純には読めない。今回も途中に山伏峠(標高600m余)と小沢峠という二つの峠がある。チョモランマ君が持参の地図を読んでいる。私は眼鏡を出さないと読めないので、すっかり彼にお任せだ。
秩父市の中心に入る手前に、「和同開珎」の銅を露天掘りした跡があるというので寄り道。人気のない山中の小道を自転車を押しながら進むと、直径5メートルあろうかという巨大な硬貨のモニュメントが現れた。露天掘りの跡はそばの小さな川の対岸にある。説明がなければ斜面が少し崩れている程度にしか見えない。これでは産出量も左程多くはなかっただろう。
それでも日本で初めて産出したこの銅を使って、708年に鋳造されたのが和同開珎。銅の産出を記念して元号も「和同」としたくらいだから、遠く離れた奈良の朝廷の興奮ぶりが知れよう。
12時過ぎに秩父市中心に到着。ところで、初めて秩父を訪れた人の目を奪うのは、武甲山の容貌(ようぼう)だろう。山肌が大きく削られ異様な景観を呈している。これは主としてセメントの材料となる石灰石を採掘したためだ。かつてはこの地で秩父セメントが隆盛を誇り、その輸送手段として発達したのが秩父鉄道だ。武甲山は日本の発展と経済成長を支えてきた山だ
山の痛々しい姿は見方によってはひどい自然破壊だが、便利さとか文明とかは、程度の差はあれこうした側面は避けられないのだろう。たとえが的確かどうかわからないが、屠場(とじょう)に引かれてゆく牛の悲しい目は思い出さないようにして牛肉を食すわが身を思う。この山を自然破壊として声高に叫ぶには少し後ろめたさがある。
秩父市(標高約220m)から青梅の間にあるのが山伏峠(標高600m余)。上りではとてもチョモランマ君にかなわないので、彼に先に行ってもらう。先頭を入れ替わった途端に彼の姿は見えなくなった。熊谷までの70kmのハンディなど全く問題にならないようだ。
私はヘロヘロになりながら峠にたどり着いた。彼も珍しく肩で息をきっている。聞けば、フロントギアをアウター、つまり平地用のままで上ってみたという。なんということだ。
峠を過ぎ、さらに小沢峠という小さな峠を越えた。そこを過ぎれば後はひたすらゆっくりと下りの道。チョモランマ君は下りにも強い。時に車の制限速度に抵触しかねない無謀ともいえるスピードで下ったりする。しかし、今回は夫人にきつく注意されてきたらしく、私ののろのろ下りに付き合った。
5時過ぎ、青梅市に到着。20年くらい前に駅近くの梅岩寺の枝垂れ桜を観に来たことがあるだけで、ほとんど初めての土地だ。町の中心部のいろんなところに昔懐かしい映画の看板が描かれている。
紅孔雀(くじゃく)、怪傑黒頭巾、俺たちに明日はない・・・などなど、おやじには懐かしい映画の看板ばかりだ。あちこちに脈絡なくあるので、注意して歩かないと見落とす。逆にいえば歩いていて看板を見つける楽しみもある。商店も近くの美大生とのコラボで絵看板のようなものをつくったりして、盛り上げに一役買っている。
この日の宿は、明治時代から130年続くという橋本屋という街中の旅館。女将さん中心に細々と営業している。有名温泉地や観光地の旅館と違いほとんど民宿的な、アットホームな感じだ。気さくな女将さんと7000円という料金。こうした昔ながらの旅館というのも味わい深い。
この日の走行は93km。峠が意外ときつかったようだ。大した疲労感はないのだが、太ももが軽くつった。あわててけいれん防止の薬を飲む。医師から処方してもらって常時携帯している漢方散薬は私には良く効く。
明日はうわさに聞く多摩川サイクリングコースを川崎まで下って、横浜を抜けて横須賀まで自走の予定。自転車乗りのメッカともいわれる噂(うわさ)の“多摩サイ”とは、いったいどんな道なのだろう。楽しみだ。(後編は24日掲載予定)
最少、最軽量が原則。パンク修理道具や携帯工具を持つのは言うまでもない。常備薬とサプリ、財布、携帯、地図、眼鏡なども普通の旅行と変わらない。
問題は衣類をどうするかだ。夏は必要なら夜洗濯するので着替えは持たない。春秋冬は最低限の下着の替えを持つ。登りでかいた汗が下りで冷えるので着替えるためだ。ほかに風防のベスト、不意の雨にも備えるウインドブレーカーと半パンツも欠かせない。これらはとにかく軽くて小さくなることを優先する。自転車旅行は悪天気、とりわけ雨に弱い。天気に不安がある時や峠越えをする時は十分な備えが欠かせない。

1887年創業、ツールドフランスとオリンピックの両者を制したブランド「ラレー」のスポーツ車トップモデル「レコードエース(RRA)」。創業125周年記念モデルとして125台限定でリリースされたのがこちら。英国製レイノルズ531フレームを採用、クラシカルでありながらスペックは最新だ。カラーはブラックエナメルとアイボリークロームの2種類。RRAの思想を受け継いだ一台を春から楽しんでみては?
こちらはカラーリングも豊富なギザプロダクツの11機能ハンディツールでT25、T30の2つのトルクスレンチがついている。重さは約122gでゴツゴツしていない形状もかわいらしい。
この商品を購入する
|ヘルプ
走行中にきれいな景色と出会ったら、オンボードカメラで残してみてはいかが?こちらのポタ録は自転車ライト型のビデオカメラ。動画・静止画撮影だけでなく、スピーカー搭載で、オーディオプレーヤーとして楽しめる。さらにLEDライトとしても活躍する、旅に楽しい一台だ。
東北新幹線の盛岡−大宮間が今年6月23日で30周年に。車両模型があたるクイズラリーも開催される。
詳細は鉄道コムでご覧ください。