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2012年10月5日
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ペダルまかせ 〜自転車のある生活〜

五能線としみじみ日本海(津軽 前編)

文と写真:三浦 壮介

写真:国道101号は五能線と右になったり左になったりしながら日本海沿いを北上する拡大国道101号は五能線と右になったり左になったりしながら日本海沿いを北上する

写真:無人の古民家。立派なたたずまいに思わず足が止まった拡大無人の古民家。立派なたたずまいに思わず足が止まった

写真:ウェスパ椿山の駅は遊園地のような感じだ拡大ウェスパ椿山の駅は遊園地のような感じだ

写真:濃い褐色で塩味の強い温泉。二酸化炭素を沢山含有しているとか拡大濃い褐色で塩味の強い温泉。二酸化炭素を沢山含有しているとか

写真:津軽の殿様が千畳の畳を敷いて宴会をしたと伝わる「千畳敷」拡大津軽の殿様が千畳の畳を敷いて宴会をしたと伝わる「千畳敷」

写真:いたるところにイカが干してあり、それを焼いて売っている拡大いたるところにイカが干してあり、それを焼いて売っている

写真:竜飛の文字は見えてきたが、まだ70kmある!拡大竜飛の文字は見えてきたが、まだ70kmある!

 ローカル線として超人気の五能線沿いを走り、竜飛を訪ねる津軽半島一周の輪行サイクリングに出かけた。阿久悠の詩を石川さゆりが熱唱する津軽海峡冬景色に登場するあの竜飛崎だ。9月初旬の週末、例年なら秋風の津軽は真夏よりも暑かった。

小ぎれいなしらかみ号

 午前10時53分、秋田新幹線こまち13号が秋田駅に到着した。ここから五能線の「リゾートしらかみ3号」に乗り込んだ。五能線のリゾート号は全席が指定で、前日、横須賀駅で申し込んだ。

 しらかみ号は日本海の海岸線をゆるゆると走るのんびり感と、世界遺産の白神山地へアプローチする路線として人気がある。車内は小ぎれいで、座席もゆったり配置されて快適で、観光パンフレットなども置かれていた。乗客の主流は軽いハイキングスタイルの年配の女性。みんなにぎやかで元気がいい。

 秋田を出た電車は内陸を進み、間もなく八郎潟に差し掛かった。教科書に出てきた忘れ難い地名だが、眼にするのは初めて。確かに広い。見渡す限りに収穫間近の稲が、黄色い海原のように広がっている。これだけの水田を作り出した干拓事業、誇らしく教科書に登場するのもうなずける。

能代から走り出す

 冷房の利いた広い車窓から風景を眺めていると、このまま電車旅を続けたい気がしてくる。なんといっても外は三十数度の暑さなのだ。そんな日和見気分に後ろ髪をひかれながら下車の準備をする。乗り続ければリゾート号は新青森まで行ってしまう。

 午後12時9分、能代駅に到着。自転車を組み立て町へ出たが、食堂やレストランが見当たらず、商店のおばちゃんに聞いてやっと探したラーメン屋でみそラーメンを食す。

 午後1時過ぎ、やがて道は海岸沿いとなる。日本海もこの時期は波静かで、湘南海岸よりもずっと穏やかなたたずまいだ。八森という海岸に展望台がある。このあたりの海岸には白神山地からのミネラル分豊富な水が流れ込み、豊かな漁場となっておりハタハタ漁の本場なのだそうだ。

住む人のない古民家

 午後2時58分、ドライブイン敷地の隅に「お殿水」という清水がわき出ていた。白神のブナ林からの湧き水で、参勤交代の津軽の殿さまがここでかごを止め、清水を飲んで一休みしたという。一口含んでみたが、思ったより生ぬるかった。日本中がいつまでもこう暑くては湧き水も例外ではないということか。

 道(国道101号)は、右手に白神山地、左手に日本海を見ながら、五能線と右になったり左になったりしながらくねくねと北上してゆく。

 道すがら味わいのある立派な茅葺きの民家が目に留まった。あまりに見事だったので近くの家の庭先にいたおばあちゃんに聞いてみた。言葉がよく聞き取れないが、要旨はこういうことだった。「昔の村長の家。若い人は出ていって今は無人。火災予報装置を付けたが最近故障らしい」・・・。このまま朽ちさせるには惜しいが、きっと過疎地の田舎にはこうした建物が各所にあるのだろう。

読めない地名「艫作」

 午後4時40分、ウェスパ椿山という駅に着いた。広い敷地に欧州の城をイメージしたというレストランや物産館、昆虫館、ガラス工房などが美しく点在している。いかにもリゾートです、といった表情を見せていた。ただ、人影が少なく少し寂しい感じだった。

 今夜の宿を予約してある、みちのく温泉旅館もすぐそこのはずだ。ところでこのあたりの地名を「艫作」という。読みにくい地名だ。難破した船が艫(とも・へさき)を作り直して出航させた伝説にちなむとか、地形からそう呼ばれるようになったとかの説があるらしい。「へなし」とよむ。

濃い褐色で塩辛い温泉

 午後5時、みちのく温泉旅館に到着。直径22mの日本一という巨大な水車が目印の宿だ。1泊2食1万600円、部屋に通された後、一番にしたことはぬれては乾きを繰り返したジャージ、下着などの洗濯。黒いアームカバーなどは白く塩を噴いている。朝には乾いているはずだ。この日午後走った距離はざっと60km。

 風呂は内風呂も露天風呂も濃い褐色だ。鉄分が多いのだろう。露天風呂のすぐそばを五能線が走っている。その向こうに日本海が広がっている。夕日が美しかった。温泉はなめてみたらひどく塩辛かった。

 自転車で来たときは、夜はストイックに過ごすことになる。温泉に何度も入る元気もない。明日は午前中の涼しいうちに距離をかせぎたいので、朝食を午前6時30分に設定してもらい、夕食後はテレビで天気予報を見た後早々に横になった。

2日目も海岸線

 午前7時30分、2日目のスタート。深浦の集落では太宰治も逗留したという元旅館だった「ふかうら文学館」などを横目に、鰺ケ沢を目指す。今日も波静かな日本海岸を五能線に寄り添ってのアップダウン。気持ちの良いコースではあるが、昨日来、海岸を走り続けてきている。「こいでもこいでも日本海」、などと誰かの俳句に似た言葉を思わず口ずさんでしまう。

 午前9時17分、千畳敷という海岸に到着。ここを過ぎれば鰺ケ沢が近い。このあたり「焼きイカ通り」と呼ぶらしい。国道わきのいたるところに焼きイカの看板やのぼりが出ている。余程焼きイカが名物らしい。

鰺ケ沢で焼きイカを食す

 田舎に行くと飲料の自販機は随所にあるが、コンビニや食事のできる店はほとんどなくなる。昼にはまだ早いが、鰺ケ沢の海の駅「わんど」という所で、焼きイカ300円を食して一休みし、100円のおにぎり3個をザックに詰めた。軽く干してから焼いたイカは、店頭のおばちゃんの「絶対うまい」という口上ほどではないが、厚みがあって食べでがあった。

 鰺ケ沢を過ぎれば日本海とも別れ、津軽平野のど真ん中の30km以上の距離をひたすら走らねばならない。炎天下、さえぎるものもないだろう田んぼの中の道に違いない。気分はあまり盛り上がらない。(次回は10月19日掲載予定)

プロフィール

三浦 壮介(みうら そうすけ)
 50歳に手が届くころから始めた自転車遊び。愛車・サンデー号で居住している湘南をふらりと流したり、時には温泉などに泊まりつつ輪行で古い街道や峠道を走ったり。でも、向かい風とのぼり坂はあまり好きでない。
 「自分の一生で今が一番若い。今できることを今やろう」、が最近の信条。自転車は敷居が低いが奥行きは深い。気ままに楽しんで気分転換。LDLコレステロールの黄信号がちょっと気がかりな176cm、1946年生まれ。目指すは“定年の達人”。

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