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水都のシンボル、市民で守る 松江大橋(島根県)

2010年1月12日15時32分

写真:欄干の上の擬宝珠(ぎぼし)が印象的な松江大橋。晴れの日には歩道中央からせり出した展望台で大山が望める=松江市八軒屋町、塚原紘撮影拡大欄干の上の擬宝珠(ぎぼし)が印象的な松江大橋。晴れの日には歩道中央からせり出した展望台で大山が望める=松江市八軒屋町、塚原紘撮影

写真:解説が楽しい堀川遊覧船船頭の鈴木益彦さん。後ろは北惣門橋=同市殿町拡大解説が楽しい堀川遊覧船船頭の鈴木益彦さん。後ろは北惣門橋=同市殿町

地図:  拡大  

 「開府400年」の様々な催しが行われている水郷・松江。市の中心部を流れる大橋川は宍道湖と中海を結び、松江大橋は宍道湖側の川の入り口近くで市の南北をつないでいる。松江城築城に必要な物資を運ぶために造られたと伝わり、現在の橋は1937年完成の17代目だ。

 その橋が、架け替え計画に揺れている。発端は近隣の2万戸が被害を受けた72年の水害だ。国は拡幅など斐伊(ひい)川水系の改修を打ち出し、松江大橋は架け替え対象になった。06年7月の豪雨でも市街地で浸水や道路冠水の被害が出たため、計画推進の動きが活発になった。

 橋のすぐそばで生まれ育ったという中学校教諭の山口純一さん(46)は心配になった。護岸工事で松江の景観が大きく変わってしまうのではないか。なにより「景観のシンボルとしての松江大橋を後世に残さなければ」と考え、07年に「松江大橋を守る市民の会」を立ち上げた。国に事業の代替案を提示したり、橋をテーマにした写生会や句会を開いたりしている。

 近代化遺産としての橋の価値を訴えるのは、松江郷土館館長の安部登さん(79)だ。例えば欄干。「今では貴重な国産の桜御影石が使われています」。安部さんによると、橋脚と橋台は西洋式、橋自体は純日本式。地上で造ったコンクリートの箱を沈めて基礎に据える潜函(せんかん)工法が、国内で最初に採り入れられたという。作業は困難を極め、技師1人が命を落とした。

 川の改修計画が着々と進む一方、橋の架け替え計画は棚上げされたままだ。昨年末には、橋の老朽化をしのぐ当座の措置として、橋脚部分の修繕工事が始まった。

 山口さんは正月、恒例の出雲大社参拝へ家族と出かけた。「松江大橋の保存を勝ち取り、橋を愛する全国の人たちと名橋サミットを開く」。山口さんの今年の願掛けだ。

 (杉森美絵)

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 《メモ》 松江大橋は幅12メートル・長さ134メートル。橋の南詰めには、1608年の架橋の際に人柱とされた源助と、現在の橋の工事で事故死した技師の供養碑が建つ。照明デザイナー・内原智史さんによるライトアップは幻想的な雰囲気を醸し出す。

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●松江城 1611年の築城で、現存する天守閣は国の重要文化財。入場時間は[前]8時半〜[後]5時(4〜9月は6時半まで)。JR松江駅からバスで10分。電話管理事務所(0852・21・4030)。

●堀川めぐり 城の外堀を50分かけて小舟で巡る。現在は「こたつ船」が運航中。途中、北堀橋や普門院橋など16の橋の下をくぐる。「北惣門橋は残っていた土台を基礎に、江戸時代に描かれた絵の姿でほぼ再建されています」。江戸期の古地図に詳しい船頭の鈴木益彦さん(62)の解説は奥深い。[前]9時〜[後]4時。20分間隔(3月〜11月は15分間隔)で運航。1200円、小学生以下600円。電話堀川遊覧船管理事務所(0852・27・0417)。

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(2010年1月5日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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