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離島から脱皮、不安と希望を 生月大橋(長崎県)

2010年3月19日10時25分

写真:豊かな自然と海に囲まれた生月大橋を、生月島から望む拡大豊かな自然と海に囲まれた生月大橋を、生月島から望む

写真:「道の駅 生月大橋」で働く湯口聡美さん拡大「道の駅 生月大橋」で働く湯口聡美さん

地図:  拡大  

 長崎県平戸市の平戸島から生月(いきつき)島へ、スカイブルーの橋がぐっと伸びる。かつては2島を船が1時間で結んでいたが、今は車でわずか2分ほどだ。

 橋の開通を間近に控えた1991年、生月島に生まれ育った湯口聡美さん(43)は長女の出産を控えていた。島に産科はなく、夜中に産気づいた時は海上タクシーをチャーターして平戸島に渡った。出産後ほどなくして橋が完成し、6カ月検診には橋を渡って行った。「開放感よね。自由になったって思った」

 隠れキリシタンが暮らし、クジラ漁で栄えた生月島。約7千人が住み、車で1周するのに1時間もかからないのどかな町は、橋の完成を機にたくさんの人を迎え入れるようになった。島を知ってもらえるようになった半面、勝手に植物を採取したり、許可なく海に潜って漁場を荒らしたりする人が現れ、ごみも増えた。島民に家の戸締まりの習慣ができたのもこの頃だ。

 そしてこの4月から、これまで有料だった橋が無料化される。関所と例えられる料金所がなくなり、より自由に行き来できる変化に、不安を覚える島民は少なくない。

 「それでも、橋ができたことを前向きに受け止めたい」。湯口さんは05年ごろから、民家に宿泊しながら釣りや農作物の収穫を体験する「体験観光」の仕事にかかわっている。住民に声をかけ、今は関東や関西から年6〜7校の中高生を受け入れている。「星がきれい」「たくさん魚が釣れた」。当たり前だと思っていたことに感動する子どもたちに、「そんなにいいところに暮らしているんだ」と気づかされることもある。

 橋のそばの「道の駅 生月大橋」を手伝いながら、ここを拠点に活動する湯口さん。「道の駅が、いい意味で関所のような場所になればいい」。たくさんの人が立ち寄る場所にしたいと、橋のたもとで出迎えの準備が続く。

(文・蒔苗沙都子 撮影・比田勝大直)

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《メモ》 平戸島と生月島(いずれも現・平戸市)を結ぶ橋として1991年7月に開通した。全長960メートル。世界でも有数の長さを誇る「三径間連続トラス橋」で、建設期間は10年。通行料は片道200円(普通車)だが、4月1日から無料になる。

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●道の駅 生月大橋 長崎県で最初にできた道の駅。店内では島の名産のアゴ(トビウオ)を使ったかまぼこ(150円〜)や海産物の干物、珍味など、土産物を販売する。生月大橋を一望できる公園や、島内の見どころを伝える観光案内所も併設。午前8時半〜午後5時半。平戸市生月町南免4375の1(TEL0950・53・2927)。

●平戸市生月町博物館 島の館 生月町の島の暮らしや歴史を伝える博物館。江戸時代に盛んに行われていた捕鯨や、禁教の中でひそかに信仰を続けてきた隠れキリシタンの様子を多彩な資料で紹介する。500円、高校生300円、小中学生200円。午前9時〜午後5時(入館は30分前まで)。同市生月町南免4289の1(TEL0950・53・3000)。

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(2010年3月16日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

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