現在位置:
  1. asahi.com
  2. ライフ
  3. トラベル
  4. 橋に願いを
  5. 記事

生活つなぐ 観光名所の村道 谷瀬の吊り橋(奈良県)

2010年6月4日10時21分

写真:雨が上がり、電動カートで谷瀬の吊り橋を渡る田上類子さん。左奥が谷瀬集落拡大雨が上がり、電動カートで谷瀬の吊り橋を渡る田上類子さん。左奥が谷瀬集落

写真:地元の小学生たち。自転車や一輪車で橋を渡り、それぞれの集落へ遊びに行く=いずれも塚原紘撮影拡大地元の小学生たち。自転車や一輪車で橋を渡り、それぞれの集落へ遊びに行く=いずれも塚原紘撮影

地図:  拡大  

 細い欄干にしがみつく観光客の脇を、田上類子さん(82)の電動カートがすいすいと走る。かごには大根とカブの種。ほぼ毎日、住まいのある上野地集落と親の代からの畑がある谷瀬集落の間を、谷瀬の吊(つ)り橋を渡って往復する。「前は単車で渡ってたけどな、3年前に乗り換えた。怖いなんてことない」

 奈良県最南部にある十津川村は、県の面積の5分の1近くを占める「日本一広い村」だ。その96%を山林が覆い、50以上の集落が点在する。

 1954年、山の中腹にある谷瀬の住民が、学校や商店のある上野地とをつなぐつり橋を架けた。1戸当たり20万円を出し合って造った、徒歩10分の悲願の「村道」だった。

 やがて村に車社会が訪れ、つり橋から400メートルほど上流に車が通れる橋ができた。上野地にあった小学校はこの春廃校になり、子どもたちはスクールバスで1時間の学校へ通う。通学路でもあったつり橋を渡るのは、主に観光客になった。

 連なる山々に向かって一直線に伸びる橋に、観光バスから降りた人たちは目を見張る。歩くと木板の継ぎ目がカタカタと動き、境目から翡翠(ひすい)色の十津川に沈む石まで見える。そのスリルを味わいに、今年の大型連休は約1万5千人が訪れた。維持費はかかるが「通行料はなかなかとれない」と村役場職員の増谷良一さん。車の運転ができない高齢の村民にとって、橋は変わらず生活道路でもあるのだ。

 谷瀬に住む井村二三子さん(76)は、上野地の診療所へ通うのに今もスクーターで橋を渡る。「でも最近は橋を単車で通ると観光の人に怒られるんですよ」と苦笑い。観光客のいない時間を見計らい、ウオーキングや保育所の子どもたちの散歩道としても使われている。

 夕方5時、迫りくるようにそびえる山の中腹に、うっすらと雲がかかる。橋から見えるこの風景を、顔を上げてじっくり眺める観光客は少ない。(塩見圭)

    ◇

《メモ》 長さ297メートル、高さ54メートルの鉄線のつり橋。揺れを感じる中央では、うずくまる観光客もいる。村内には切り立った山が多いため、重要な移動手段として多くのつり橋が架けられ、現在は約60を数える。1軒の家のために架けた橋もあるという。

    ◇

●源泉かけ流し温泉感謝祭 20日[日]〜30日[水]、主に十津川温泉郷にある公衆浴場や温泉プールなど六つの施設を無料開放する。「源泉かけ流し宣言」6周年記念。電話村観光協会(0746・63・0200)。

●揺れ太鼓 「橋の日」の8月4日[水]夕、谷瀬の吊り橋の上で十津川太鼓倶楽部・鼓魂(こだま)が演奏する。独自の舞台発表の場を考え「せっかくなら誰もやらない場所で」と始まった。1996年から村のPRも兼ね、つり橋周辺の安全を願うイベントになった。電話十津川村村づくり推進課(0746・62・0004)。

●語り部とゆく 世界遺産ウオーク 2011年3月31日まで。毎週[火][土]の[後]1時半〜、熊野参詣道小辺路を歩く「果無(はてなし)ウオーク」。4人以上1500円。毎週[水][日]の[前]9時半〜、玉置山と玉置神社をめぐる「玉置山ウオーク」。4人以上2000円。どちらも2人から。3日前までに予約を。電話十津川温泉ホテル昴(0746・64・1111)。

    ◇

(2010年6月1日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)

検索フォーム


朝日新聞購読のご案内

鉄道コムおすすめ情報

国鉄型が続々引退、春の新ダイヤ

200系新幹線や近畿地区の183系、東海地区の117系など、さまざまな国鉄型車両が引退する…