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集い、語らう憩いの広場 馬見原橋(熊本県)

2010年8月27日10時40分

写真:午後7時、仕事を終えた10人ほどが馬見原橋の上に集まった拡大午後7時、仕事を終えた10人ほどが馬見原橋の上に集まった

写真:ライトアップに映える馬見原橋=いずれも松岡誠太朗撮影拡大ライトアップに映える馬見原橋=いずれも松岡誠太朗撮影

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 橋は渡るもの。そんな常識を覆す橋が、宮崎との県境に近い熊本県山都町(やまとちょう)にある。青々と茂る緑の中で、白く緩やかな曲線が目をひく馬見原橋(まみはらばし)だ。五ケ瀬川に架かる橋は、上が車道、下が歩道に分かれている。歩道では、一仕事終えた町民がウッドデッキに腰をおろし、たばこを吸ったり談笑したり。夏のイベントを2日後に控えたこの日、橋では「壮行会」が開かれる。

 かつてはシンプルなコンクリートの桁(けた)橋がかかっていた。老朽化が問題になっていたころ、「公共建築物を文化遺産に」と始まった「くまもとアートポリス」事業の一つとして、1995年に建て替えられた。

 「単なる交通のための橋ではなく、人がとどまれる場に」。設計した建築家の青木淳さんが込めた願い通り、完成後ほどなくして、橋の上で思い思いに過ごす町民の姿が見られるようになった。「しゃれた橋ができたと思った」と周囲の人が話す通り、デザインの斬新さも話題になり、海外から訪れる人もいた。

 宿場町として栄え、明治時代には16軒の造り酒屋が軒を連ねた商店街は、高齢化や交通網の発達で店の減少が止まらない。

 「橋ができて終わりじゃなくて、そこから何かを始めたくて」と馬見原街づくり協議会会長の森川弘士さん(53)。橋の完成を機に、商店街を盛り上げたいと住民で協議会を立ち上げた。橋と川を主役にした行事を企画し、町の外からも人が訪れるようになった。商店街の整備を進め、橋から続く道は今では石畳に。宿場町の面影を残す白壁の商店が雰囲気よく並ぶ。

 その晩、闇夜に照らし出された橋の上には、商店街自慢の味という豆腐や華やかに盛りつけられた料理が並んでいた。川のせせらぎやカジカの鳴き声が辺りを包み、涼やかな川風が吹き抜ける中、橋の上の宴は、明かりが消える午後10時まで続いた。(蒔苗沙都子)

    ◇

《メモ》全長38.25メートル、幅4.8メートル(上橋)、6.75メートル(下橋)で、上弦・下弦・支柱で支える鉄骨橋。歩道に開けられた直径2.8メートルと2.2メートルの穴から川面を眺めることができる。日没〜[後]10時までライトアップも。橋のそばにある「明神の本」のわき水は熊本名水百選に指定されている。熊本空港から車で約1時間。

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●くまもとアートポリス 文化的資産として後世に残る優れた建造物を造り、建築と文化への関心を高める建築文化事業。88年の開始以来、国内外の建築家による美術館や団地、交番、公衆トイレなど70のプロジェクトが完成した。町内には馬見原橋を含め5カ所ある。

●通潤橋 山都町下市にある江戸時代に作られた石造りのアーチ橋(放水は不定期)。「通潤橋史料館」([前]10時〜[後]4時、300円、小・中学生150円)では、模型や映像で橋の仕組みを紹介。電話町観光協会(0967・72・3855)。

●清和文楽館 地域に江戸時代から伝わる人形浄瑠璃「清和文楽」に関する資料や映像を展示。420円。[前]9時〜[後]4時半。[火]休み。定期公演は第2・4[日](7〜11月は毎週[日])の[後]1時半から。1260円、中学生840円、小学生630円。同町大平152。電話0967・82・3001。

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