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水が示した、積年の「力」 雄橋(広島県)

2010年12月3日

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写真:帝釈川の下流側から見た雄橋。橋中央の凹凸が鬼の顔のように見える拡大帝釈川の下流側から見た雄橋。橋中央の凹凸が鬼の顔のように見える

写真:生熊敏幸さん(左)と妻恵里さん=いずれも近藤太智撮影拡大生熊敏幸さん(左)と妻恵里さん=いずれも近藤太智撮影

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 木の葉がはらはら舞う先に、どっかとした岩の塊が見えた。国の天然記念物、雄橋(おんばし)だ。近くにいる人間が、まるで小人のように見える存在感。仰ぎ見て、思わず立ちすくむ。

    ◇

 雄橋は広島県庄原市の景勝地、帝釈峡にある。両側に切り立った絶壁がそそり立ち、眼下には澄んだ帝釈川が流れる。

 「大正7年におばが川向こうの集落へお嫁に行く時、雄橋を渡っておるんです」。同市で生まれ育ち、教員退職後の今も地域の生活文化を研究している遠藤泰允さん(80)が話す。遠藤さんが生まれるころまで、橋は生活道だった。自動車の普及で谷を挟んだ集落をつなぐ役割は終わり、今は草木が茂って橋へ上がる道は見当たらない。

 その一方で、地元では雄橋へ出向くことを「参る」と言い、信仰の対象でもあった。「雄橋はひとつの力。昔の人は、あれだけのもんを作るのは力のある人だと考えていたんです」

 こんな民話も残る。

 昔、帝釈にいる2匹の鬼の親分が力比べをすることになり、ひと晩のうちにどちらが良い橋をかけられるか競うことになった。そして、力のあった方の鬼が雄橋を造った――。

 帝釈峡観光ガイドの明賀茂雄さん(81)によると、雄橋にまつわる民話はどれも鬼にまつわる話という。「ここの鬼は人に危害を加えん、ええ鬼じゃったらしい。雄橋の近くには、鬼を供養したという岩もある」。実際は、石灰岩の帝釈台地を流れる水が少しずつ侵食して雄橋はできた。「水はすごいエネルギーを持っとる。あんだけの岩を抜く力があるんじゃからね」

    ◇

 創業145年の生熊酒造は、この台地のわき水を使って酒を仕込む。酒蔵の現当主で杜氏(とうじ)の生熊敏幸さん(35)は「酒造りは毎年、水場の掃除から始まる」。雄橋を造った水が、蔵を支える。年が明けると、いよいよ新酒造り。「雨が降っても雪が舞っても、数時間おきに酒の状態をみてまわる毎日」が待っている。

 (河内奈々)

    ◇

《メモ》 全長90メートル・幅18メートル・厚さ24メートル。水に浸食されてできた「天然橋」。観光客でにぎわう紅葉の季節が終わると、葉が落ち岩肌があらわになるため地質学の研究者が増える。大寒の頃、橋の中を通って染み出た雨水が、橋下に何十本ものつららを作る。

■帝釈峡 比婆道後帝釈国定公園内にある石灰岩の峡谷。帝釈川によって浸食され、総延長24キロに渡るカルスト地形を形成する。庄原市立比和自然科学博物館・客員研究員の横山鶴雄さんによると、「浸食は1.5億年前から始まった」。雄橋のほか、鬼の供養塔、白雲洞(鍾乳洞)などの見どころがある。

 1924年のダム建設で、雄橋の対として民話に登場する小ぶりの天然橋・雌橋(めんばし)はダム湖(神龍湖)の水位によって水没するようになった。電話帝釈峡観光協会(08477・2・0525)。

■東城の民話 東城地域(現庄原市)に口承されてきた民話を64話収録。1000円。電話東城の民話を保存する会 近藤さん(08477・2・2295)。

■生熊酒造 2005年度の全国新酒鑑評会で「超群」が金賞を受賞。純米吟醸酒3055円、純米酒2273円(いずれも1.8リットル)。庄原市東城町東城43の1(東城駅、電話08477・2・0056)。

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