現在位置:
  1. 朝日新聞デジタル
  2. ライフ
  3. トラベル
  4. コラム
  5. ダイビング旅日記etc
  6. 記事
2012年3月19日
このエントリーをはてなブックマークに追加
mixiチェック

ダイビング旅日記etc

津波から1年、今も続く海中ガレキ撤去作業とワカメの初出荷

文と写真:越智 隆治

写真:3月11日、ガレキ撤去作業に集まった三陸ボランティアダイバーズと、越喜来漁協の漁業関係者たち拡大3月11日、ガレキ撤去作業に集まった三陸ボランティアダイバーズと、越喜来漁協の漁業関係者たち

写真:1年がたって、赤錆びたガレキを黙々と引き上げる、三陸ボランティアダイバーズ代表理事の佐藤寛志さん(左)
拡大1年がたって、赤錆びたガレキを黙々と引き上げる、三陸ボランティアダイバーズ代表理事の佐藤寛志さん(左)

写真:海中には、コンブなどの海藻が生い茂っていて、春の訪れを感じさせるが、実際には、1年でも一番水温の低い時期だ
拡大海中には、コンブなどの海藻が生い茂っていて、春の訪れを感じさせるが、実際には、1年でも一番水温の低い時期だ

写真:漁協で船を出してもらい、船上から引き上げ作業を行なうボランティア。海中ガレキ撤去作業は、このように、水中班と引き上げ班に別れて、行なわれている
拡大漁協で船を出してもらい、船上から引き上げ作業を行なうボランティア。海中ガレキ撤去作業は、このように、水中班と引き上げ班に別れて、行なわれている

写真:海に向かって、手を合わせる
拡大海に向かって、手を合わせる

写真:海中に張られたロープにたわわに成長した、養殖ワカメ拡大海中に張られたロープにたわわに成長した、養殖ワカメ

写真:出荷前のワカメを刈り取って、食べさせてくれた
拡大出荷前のワカメを刈り取って、食べさせてくれた

 津波からちょうど1年目となる、今年3月11日、フィリピンのロケから帰国したその足で、岩手県大船渡市三陸町へと向かった。震災後から、海中のガレキ撤去作業を続ける、NPO法人、三陸ボランティアダイバーズを取材するためだ。

 震災直後に、多くの援助物資を送ったり、現地に入り取材したことなどが縁で、自分も理事として、関わることになった。

 この日も20人ほどの参加者が現地を訪れて、昨年11月に取材させてもらった越喜来漁協での撤去作業を取材した。1年に及ぶ作業のおかげで、他の地域よりも明らかにガレキの撤去が進展している。しかし場所によっては、まだ手つかずのガレキが残っていた。表面は赤錆(さ)びて、海藻などが付着し始めていて、1年という時の流れを感じさせた。

 ただ、時間の経過よりも、この水温の低さに衝撃を受けた。水温4度。今まで自分が潜った中でも2番目に低い水温。南の暖かい海を中心に潜っている自分にとっては、相当に堪え難い冷たさだった。海中は、コンブなどの海藻に覆われて、春の訪れを感じさせるが、実際には、1年で一番水温の低い時期でもある。

 いくら水の入らないドライスーツを着て、インナーに使い捨てカイロを何枚も貼り付け、口の回りを覆う寒冷地用のフードを装着し、厚手のグローブを着けても、何の問題も無く潜っていられるのは、30分程度が限度だった。30分を過ぎると、冷たさで指が千切れそうな痛みを感じ始めた。何かを撮影して気を紛らわさないとやっていられない水温。時に何度も手のひらを拳でたたき、痛みを忘れようとするが、効果はほとんどなかった。

 しかし、そんな状態でも、ボランティアダイバーたちは、黙々とガレキ撤去作業を続けていた。そんな中で、自分だけリタイアするわけにはいかない。少し朦朧(もうろう)としながらも、「こんな水温の海水が津波となって押し寄せたのか」と思うと、やるせない気持ちになった。きっと夏であれば、もっと生きていられる人がいたかもしれない。そんなことを考えた。

 空からは、静かに雪が舞い降りていた。

 ガレキ撤去作業を終えた後には、ボランティアダイバー、サポートをしてくれた漁協関係者が海に献花し、お線香をあげて、黙祷(もくとう)を捧げた。

 朗報もある。昨年11月に種植えした養殖ワカメが成長して、今月21日には出荷をすることが決まった。天候さえ良ければ、同日に刈り入れが行われる。越喜来漁協理事の佐川富廣さんによると、「例年の5割増しくらいの値段で取引してくれそう」と津波後初の養殖漁業での収益に、期待する。

 出荷前のワカメを数株刈り取って食べさせてくれた。沸かしたお湯にしゃぶしゃぶのようにさっと浸すと、茶色かったワカメが明るい緑に変色した。ポン酢を着けて食べると、独特の食感と、爽やかな海の香りが口に広がり、なんとも言えない幸せな気持ちになった。

表紙画像

海からの手紙

著者:越智 隆治

出版社:青菁社フォトグラフィックシリーズ 価格:¥ 1,680

表紙画像

クジラ! 大写真集

著者:越智 隆治

出版社:二見書房 価格:¥ 2,835

プロフィール

越智 隆治(おち・たかじ)

水中写真家 (株)United Oceans 代表。65年、神奈川県生まれ、千葉県浦安市在住。98年に新聞社写真記者から独立後、国内外のダイビング雑誌で活動。主にイルカやクジラ、アシカなどの大型の海洋ほ乳類をテーマに、世界各国の海で撮影を行っている。05年より、アンダーウォーターウエッブマガジン、WEB-LUE主催。個人のHP、INTO THE BLUEでは、海洋ほ乳類などと泳ぐ、スペシャルトリップを企画。ミクロネシア、ヤップ州観光局日本PR担当。特定非営利活動法人OWS理事。著書多数

検索フォーム

おすすめリンク

水に強い家庭用ビデオカメラで、海やプールなど水辺での楽しい思い出をしっかり記録!水深5mでも撮影可能!旅のお供にぜひ

安いけど一体どうなってるの?格安を実現している裏の裏に迫り、LCCに関する数々の疑問に答えていく一冊

日本の海に眠るエネルギーと鉱物資源をわかりやすく解説

世界中の海をフィールドに活動するカメラマン越智隆治による本格クジラ写真集

暑さ対策には、首などの太い血管が通っている場所を冷却するのが、効果的 サンコー「USB首ひんやりネッククーラー」

そんな時に便利なのがパッと荷物やバッグを入れられる便利なレインバッグ「ダンケ レインバッグ」。もちろんそのままショッピングバッグにも!


朝日新聞購読のご案内

鉄道コムおすすめ情報

国鉄型が続々引退、春の新ダイヤ

200系新幹線や近畿地区の183系、東海地区の117系など、さまざまな国鉄型車両が引退する…