現在位置:
  1. asahi.com
  2. ライフ
  3. トラベル
  4. つりづり草
  5. 記事

まだ見ぬ魚を求め、南房総白浜へ

文:ふくだあかり

2009年5月22日18時12分

写真:鮮やかなヒレに真っ赤な魚体憧れのホウボウ拡大鮮やかなヒレに真っ赤な魚体憧れのホウボウ

写真:頂いた高級魚マハタ拡大頂いた高級魚マハタ

写真:生でも美味しい、焼いても美味しい拡大生でも美味しい、焼いても美味しい

写真:ホウボウとマハタの釣り魚ディナー拡大ホウボウとマハタの釣り魚ディナー

 先日、千葉県の最南端にある南房総白浜まで、仲間といっしょに釣りに出かけた。

 白浜へは、首都高からアクアラインを抜け、約2時間半の道のり。船宿の集合時間は午前4時30分だから、余裕を持って夜中の1時に家を出た。

 実は白浜に行くのは今回が初めてだった。これまで一度も通ったことのない真夜中の道、ドキドキしながらハンドルを握る。それでも、「きょうは何が釣れるだろう」「念願のあの魚は釣れるかな」などと期待にワクワクしながら運転していると、夜道を走る不安は消え、眠気も感じない。

 その日は運転中にパラパラと雨が降ってきた。次第に風も強くなり、出航が中止になるのでは、という不安が頭をよぎった。雨の中、なんとか無事に船着き場までたどり着くと、照明がついている船を見つけた。船のライトアップは、予定通りに出航するというサインだ。ホッとして、船に近づくと、すでに釣り仲間たちが集まっていた。

 今回は、「タイラバ」というマダイ釣りでよく使われる鉛とゴムでできたカラフルな疑似餌を使っての釣りだ。これまで何度も挑戦したが、釣れたためしがない。

 「今回こそは釣ってみせる」

 降り続ける雨の中、仲間たちと談笑しながら準備を整え、いざ出航だ。とはいえ雨の中での釣りは、とてもつらくて厳しい。雨の冷たさに手はかじかみ、カッパを着ていても、袖のすき間から少しずつ濡れてしまい、全身が冷えてくる。釣りをしない人は、理解に苦しむかもしれないが、それでもやっぱり釣りは楽しいのだ。

 船が徐々にスピードを落とすと、魚がいるポイントに近づいたことを意味する。私たちの乗った船が最初に向かった場所は、水深40メートルと比較的浅場のポイントだ。このぐらいの水深なら軽めの仕掛けでいけると思い、まずは60グラムのタイラバを使ってみた。タイラバを海に落として、するすると糸を出し、海底にタイラバがついたのを感じたら、すかさず竿を持ち上げて、タイラバを海底から少し離す。これは「底をとる」という基本動作なのだが、潮の流れが速く、糸が潮に流されてしまい、先端に付けたタイラバが海底に着いたかどうか、感触がうまくつかめない。仕方なくもう少し重い100グラムのタイラバに変更するが、また潮に流されてしまう。

 この「底をとる」という動作、慣れないとなかなか難しい。底がとれずに糸を出しすぎると、タイラバが海底の岩や海草に引っかかって、根掛かりしてしまう。また、底をとらずに、適当なタナにタイラバを流しても、魚が釣れることはまずない。

 何度も上げ下げしているうちに徐々に底のとり方が分かってきた。タイラバが着底したら、根掛かりしないように、ゆっくりゆっくり一定のスピードで巻き上げ、魚が食いついてくるのを待つ。風雨に耐えながら、ほかの釣り仲間とともに我慢強く、これを繰り返した。

 すると、いきなり竿先にゴツゴツっとしたアタリを感じた!。でも、ここでビックリしてはだめ。慌ててアワセをいれてしまうと、せっかくタイラバを食べようとした魚が驚いて逃げてしまう。これまで何度も失敗してきたから、「今度こそは慎重に、慎重に」と心に言い聞かせながら、さらにゆっくり巻き続ける。そして竿先にグンっという確かなアタリを感じたところで、一気に合わせを入れた。

 「ヒット」だ。竿は大きくしなり、確かな重みを感じた。

 気持ちいい引きが続き、海面に姿をみせてくれたのは本日の「本命」、ホウボウだった。このホウボウという魚は、ヒラメ釣りの外道としてよく釣れるが、私はこれまで一度もお目にかかったことがなかった。どうしても釣りたくて、ホウボウ釣りの大会にも出場したが釣ることはできなかった。

 「会いにきてくれてありがとう」、そう思わずにはいられなかった。

 結局この日は、ホウボウ一匹で釣行終了。お目当てのホウボウは釣れたけれど、釣果としては少し寂しいかな。そう思っていたら、隣のお客さんがマハタを譲ってくれた。たくさん釣った人が、釣れなかった人に魚をおすそ分けすることは、仲間同士ではよくあること。だけど、見ず知らずの人にしてもらうのは本当にうれしいものだ。

 船は昼過ぎには港に戻り、帰途につく。雨の中で釣りを続けると、体温も下がりひどく疲れる。それでも「本命」が釣れた日は、帰りの運転が苦にならないから不思議なものだ。運転をしながら、さっそくホウボウとマハタをどう料理するかを考え始める…。

 行きは何が釣れるかのワクワクし、帰りはどう料理するかでワクワクする。このワクワクを味わうためにまた次の釣行計画を考える。

 さぁ、次は何を釣りにいこうかな。

プロフィール

ふくだあかり

アングラー(釣り師)。81年、茨城県生まれ。168センチ、O型 趣味:釣りと利き酒 特技:キャラクターを描くこと。

07年、趣味で釣りを始める。これまでに行った釣り場は数知れず、今でも週に1〜2回のペースで、全国各地の海、山、川に行っている。08年には、1年間に100種類の魚を釣る目標を達成。釣りブログ「百目」が、釣りファンから注目を集めている。本エッセーでは、女性の視点から魚釣りの魅力をご紹介します。

検索フォーム
キーワード:


朝日新聞購読のご案内