ジャイアント・トレバリー、通称GTと呼ばれる魚がいる。アジの仲間で、日本では単独で行動する「浪人武士」に見立て、ロウニン(浪人)アジと呼ばれ、成魚になると180センチ80キロにまで成長する。
暴力的とも言える引き味と、表層まで獲物を捕食しに来ることから、ルアーを海面上で泳がせるキャスティングゲーム好きにはたまらない憧れの魚。
実は私もこの魚を追い求めて、種子島、久米島、サイパン、パラオ、バリと何度となく挑戦してきたが、10キロを超えるGTを釣ったことがなかった。
と、いうか、10キロ未満では「ジャイアント」とは呼べないから、GTを釣ったことがなかったことになる。
初めてGTの子供を釣った時、「そのサイズじゃGTとは呼べない。まあ、MT(ミディアム・トレバリー)だね」とからかわれた。それが悔しくて、いつか必ず、両手で持ち上げられないほどの膝上(ひざうえ)サイズのGTを釣って見せる!! そう信じながら、このGT釣りを続けてきた。
ところが、これがなかなか難しかった。
どこでも釣れる魚じゃないから、よく釣れている場所を探して、釣れる時期(季節)や潮の動く日時を予測し、さらには、上手に釣らせると地元で評判の釣り船を選んで、海外遠征を計画した。決して安いとは言えないツアー料金を支払い、3日間船に乗ってルアーを投げ続けても、1匹の魚も釣れなかったこともある。だからGT釣りは面白い。だからGTを狙うんだ!
今年に入ってすぐ、今度こそは大型のGTを釣りたいと、インドネシアのコモド島へ遠征を組んだ。
日本から7時間半かけてバリへ渡り、小型の飛行機に乗り換えてフローレス島へ1時間半。そこからまた船に乗ってコモド島に向かうプランだった。
私がバリ遠征に出発する前に、釣り仲間から「バリでGTを爆釣した」という話を聞かされ、今度こそは釣れるのでは、と期待に胸を膨らませながら現地に向かった。
そしていよいよ釣行1日目。
経験豊富な船長が向かったのは、岩場や暗礁があって潮が流れる浅瀬のポイントだ。GTがそこらじゅうに潜んでいそうな雰囲気の場所だった。
さっそくポイントに向かってペンシルベイトのルアーを投げ、丁寧にルアーを動かした。さあ来い! いつ来るんだ?? とわくわくドキドキしながらヒットを待つが……、なんの反応もない。魚の活性が悪いのかもしれないと、ポッパーという動かし方がやや難しいルアーに換えてアピールしてみた。だが、やっぱり反応はなかった。そうこうしているうちにタイムアウトとなり、初日は、小型のGTすら見ることもなく終了した。
そして2日目。この日は最初から調子が良かった。一投目からポッパーを使っていたら、すぐに反応があった。途中でフックが外れ、釣り上げることはできなかったが、一度はヒットしてくれた。「今度来たら絶対に釣る」とその時、心に誓った。
船長は次のポイントに船を移動させた。移動した先は、大型のGTが釣れるとしたら、ここしかない、という雰囲気のポイントだった。
ルアーを投げると、すぐに反応があった。しかしフッキングはできず、再トライしたその瞬間、海中で大きな魚影がルアーに飛びつくのが見えた。次の瞬間、ロッドにずっしりと重みを感じた。一、二、三と3回の大きなアワセを入れた。直後に、手と体に激しい衝撃を感じ、海に引き込まれそうになった。水深が浅いため、リールのドラグを強めに締めていたため、強烈な引きが全身に直接伝わってきた。
数分間の激しい格闘の末、何とかロッドを立てて獲物を海面に浮かせることができた。船の近くまで引き寄せてタモに入れて船上に上げると、なんと32キロの立派なジャイアント・トレバリーだった。
やった! やっとこのサイズが釣れた!!! 何度も挑戦して、失敗したけれど、とうとう念願の膝上サイズのGTを釣ることができた。
著者:ふくだ あかり
出版社:大泉書店 価格:¥ 1,260

アングラー(釣り師)。81年、茨城県生まれ。168センチ、O型 趣味:釣りと利き酒 特技:キャラクターを描くこと。
07年、趣味で釣りを始める。これまでに行った釣り場は数知れず、今でも週に1〜2回のペースで、全国各地の海、山、川に行っている。08年には、1年間に100種類の魚を釣る目標を達成。釣りブログ「百目」が、釣りファンから注目を集めている。本エッセーでは、女性の視点から魚釣りの魅力をご紹介します。