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秘境添乗員・金子貴一の地球七転び八起き

「プヤ・ライモンディ」の奇跡の一斉開花に遭遇

2010年6月24日10時37分

写真:マグダレー村のはずれにあったチャンカカ(糖蜜)専門店。スルーガイドのC女史(右)が、チャンカカの質を見る。後ろのペットボトルに入っている透明の液体が蒸留酒「カニャリ」(c)natumi拡大マグダレー村のはずれにあったチャンカカ(糖蜜)専門店。スルーガイドのC女史(右)が、チャンカカの質を見る。後ろのペットボトルに入っている透明の液体が蒸留酒「カニャリ」(c)natumi

写真:マグダレー村の路上では、闘鶏を見せてもらった(c)松岡賢一拡大マグダレー村の路上では、闘鶏を見せてもらった(c)松岡賢一

写真:マグダレー小学校では、スペイン語の授業を参観させてもらった(c)松岡賢一拡大マグダレー小学校では、スペイン語の授業を参観させてもらった(c)松岡賢一

写真:休耕畑では泥れんが作りが行われていた。泥と砂を混ぜ合わせて型にはめ、3日〜1週間程天日に干すと完成だ。泥れんがは、古代ではワカ(神殿)の建築資材だった(c)natumi拡大休耕畑では泥れんが作りが行われていた。泥と砂を混ぜ合わせて型にはめ、3日〜1週間程天日に干すと完成だ。泥れんがは、古代ではワカ(神殿)の建築資材だった(c)natumi

写真:ワラス市場で販売中のモルモット肉。希望者には昼食に出したが、固めの肉だった(c)松岡賢一拡大ワラス市場で販売中のモルモット肉。希望者には昼食に出したが、固めの肉だった(c)松岡賢一

写真:絶滅危惧種「プヤ・ライモンディ」の奇跡の一斉開花に、ハチドリも大喜びだ(c)松岡賢一拡大絶滅危惧種「プヤ・ライモンディ」の奇跡の一斉開花に、ハチドリも大喜びだ(c)松岡賢一

 北部ペルーの旅の中日、5日目は移動日だった。インカ帝国最後の皇帝アタワルパ終焉の地、カハマルカを早朝5:30に出発。10時間掛けて、シャーマニズムの儀式を体験することになるエル・ブルホまで南下した。

 途中8:20、山間の村マグダレーのカフェテリアでトイレ休憩に入ると、目の前では小学生が列をなして登校していた。私は即座にガイドのC女史に依頼して、あとをつけてもらった。授業参観が出来ないか交渉してもらうためだ。

 突然の訪問にもかかわらず、マグダレー小学校は私たちを温かく迎え入れてくれた。生徒30名ほどの低学年クラスでは、スペイン語の授業が行われていた。日本や皇帝アタワルパについてどんな印象を持っているかを尋ねたが、両方共、知らない生徒がほとんどだった。「アタワルパは知っている」と答えた生徒は、テレビ番組で見たという。家庭でもそれらの話題はなく、授業でもまだ扱っていないようだった。最後にお互いに歌を披露し合ったが、お客様グループの「カエルの歌」は、何の打ち合わせもしていないのに美しい輪唱となった。子供たちは口を開け、放心状態で聞き入っていた。

 マグダレー村を散策すると、ちょうど、闘鶏用のニワトリを持った若者がいた。古代ギリシャ起源ともいわれる闘鶏は、スペイン人入植者により南アメリカ大陸にもたらされた。ペルーには2つの選手権大会があり現在でも盛んだが、その試合は鶏の足に刃物を付けて行う血なまぐさいものだ。早速、刃物を付けない状態で、デモンストレーションをしてもらったが、あまりの迫力に、皆、後退りせずにはいられなかった。

 マグダレー村で最後に訪れたのは、「チャンカカ(糖蜜)」工房だった。サトウキビを絞って、糖蜜をコーン型の木型に流し込んで固めた「チャンカカ(黒砂糖)」を作り、残りの原液は「アスファルト代わりに、道路に敷き詰める」という。村はずれにあった専門店では、ワラに包まれたチャンカカと、チャンカカを原料とした「カニャリ」と呼ばれる蒸留酒が売られていた。泡盛に似たカニャリは、私たちの昼食の食後酒となった。

 9日目、ペルー最終日。私たちは、お客様のリクエストに応えるため、早朝5:00にホテルを出発した。元々の日程にはなかった世界自然遺産「ワスカラン国立公園」に、パイナップル科の植物「プヤ・ライモンディ」を見に行くためだ。最高10mにもなり、「アンデスの女王」とも称されるプヤ・ライモンディは、アンデス山脈の3200〜4800mに生育する絶滅危惧種だ。「100年に1度しか花を咲かせない」として有名だが、実際には約40年の寿命で最後に1度だけ一斉開花したのちに枯死する。1本につき3000以上の花が咲き、600万以上の種子を宿すという。

 現地に着いてみると、なんと群生するプヤ・ライモンディは花盛りだった。「奇跡の一斉開花」に、集まって来たハチドリもお客様も大喜びだった。

 考えてみれば、今回の旅はシンクロニシティ(意味のある偶然の一致)の連続だった。私は、数年前からこの旅の企画と添乗を依頼されていたが、やっと実現したのが2009年9月。日程が決まると、7月からは国立科学博物館で「特別展 インカ帝国のルーツ 黄金の都 シカン」が開始され、旅の出発前には、1990年代半ばからシカン遺跡の撮影を続けている日本人テレビカメラマンのE氏を招き、一部のお客様と共に、事前勉強を行うことができた。旅の途中では、5時間の渋滞に巻き込まれたことがあった。しかし、遅れたことが逆に幸いして、その後到着したセロ・セチン遺跡(紀元前2000〜1000年)では現地に詳しい考古学者に出会うことができ、詳細な説明をして頂くことができたのだった。更に、リマで行われた最後の晩餐(ばんさん)でも、現地に戻ったE氏をお呼びして、皆様の遺跡への質問に答えて頂くことができたのだ。

 21:30にリマ空港に着く頃には、お客様とスタッフの多くが涙で目をはらしていた。空港の入り口前では、誰もが去りがたく、いつまでも抱き合って別れを惜しんでいた。

プロフィール

金子貴一(かねこ・たかかず)

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 秘境添乗員、フリーライター。1962年生まれ。元不登校児。高校時代、米国アイダホ州で一年間ホームステイ。大学時代は、エジプトの首都カイロに7年間在住し、カイロ・アメリカン大学文化人類学科卒業。留学を通して、「異文化間交流」の大切さを実感。在学中より、観光ガイド、ジャーナリストとして活動を開始。仕事等で訪れた世界の国・地域は100近く。著書に、「秘境添乗員」(文藝春秋)「報道できなかった自衛隊イラク従軍記」(学習研究社)
公式ブログ http://sea.ap.teacup.com/hachidaiga/

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