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秘境添乗員・金子貴一の地球七転び八起き

世界第3位の貯水量を誇る「ナセル湖」

2010年9月16日11時25分

写真:長さ3、830メートルのアスワン・ハイダムの建設によってナイル川はせき止められ、世界第3位の貯水量を誇るナセル湖が完成した。写真はダムの下流側で、ナセル湖は写真の左奥にある拡大長さ3、830メートルのアスワン・ハイダムの建設によってナイル川はせき止められ、世界第3位の貯水量を誇るナセル湖が完成した。写真はダムの下流側で、ナセル湖は写真の左奥にある

写真:エジプト南部の都市アスワンを出発したユージェニー号は、ナセル湖を南下して、古代神殿で有名なアブシンベルに向かった拡大エジプト南部の都市アスワンを出発したユージェニー号は、ナセル湖を南下して、古代神殿で有名なアブシンベルに向かった

写真:ユージェニー号の2階寝室に向かう階段には、なんとフリーメーソンの装飾品が飾られていた。オーナーがアレキサンドリアの骨董品屋で買ったものだという。 実は、ナセル政権に弾圧されるまで、エジプトはフリーメーソンが盛んな国だった拡大ユージェニー号の2階寝室に向かう階段には、なんとフリーメーソンの装飾品が飾られていた。オーナーがアレキサンドリアの骨董品屋で買ったものだという。 実は、ナセル政権に弾圧されるまで、エジプトはフリーメーソンが盛んな国だった

写真:ベッドメイキングは毎日ユニークで、猛暑のなか見学して帰ってくる私たちを和ませてくれた。使われた帽子、サングラス、ガイドブックは、私たちの所持品だ拡大ベッドメイキングは毎日ユニークで、猛暑のなか見学して帰ってくる私たちを和ませてくれた。使われた帽子、サングラス、ガイドブックは、私たちの所持品だ

写真:人造湖のナセル湖は、砂漠や岩山に囲まれている。上陸地が浅瀬の場合は、船は川の中央に停泊し小舟に乗りかえて上陸する拡大人造湖のナセル湖は、砂漠や岩山に囲まれている。上陸地が浅瀬の場合は、船は川の中央に停泊し小舟に乗りかえて上陸する

写真:見学地によっては、有料ラクダで移動できる場所も拡大見学地によっては、有料ラクダで移動できる場所も

写真:しかし、船から遺跡までは歩いて移動するのが基本だ拡大しかし、船から遺跡までは歩いて移動するのが基本だ

 ベランダ側のドアを開けると、ムッとした湿気と熱気を含んだ空気が流れ込み、目の前には、世界第3位の貯水量を誇る人工湖「ナセル湖」の湖面が広がった。

 湛然(たんぜん)として波はなく音もない。ただ、灼熱の太陽熱を吸収した水面が、対岸の岩山砂漠まで続いていた。

 私たちは、エジプト南部の都市アスワンから、ナセル湖クルーズのユージェニー号に乗って、アブシンベルに向かっていた。実は、この3泊4日の船旅は、一連のツアーのはじまりに過ぎなかった。

 今回のツアーは異例ずくめで、私はワクワクとした気持ちを押さえきれずにいた。旅の期間はエジプトが暑い盛りの8月3日からの17日間。前半は私たちだけの新婚旅行なのだが、後半は11名のお客様を、カイロ国際空港で出迎えて催行する「エジプト新婚旅行同行ツアー〜花婿は秘境添乗員〜」に変身する。同行ツアーの最大のイベントは、デルタ地方の村で行われる、私たち夫婦と30年来の親友の弟夫婦との合同結婚披露宴だ。周辺の村からも人々が大挙して集まるエジプト伝統の大結婚式に、お客様自身もエジプト人になりきって、夜を徹して参加して頂こうというのである。

 事の発端は、国内旅行の際、常連のお客様の強い勧めで結婚と新婚旅行を発表した際の出来事だった。多くのお客様が、「その新婚旅行に、是非参加したい!」とおっしゃったのだ。私は、早速、隠し企画満載のツアー案を作り、妻に話すと、「面白そうね」と同意してくれたのだ。

 同行ツアーグループが到着するまでの10日間は、大学時代を過ごしたカイロで、毎晩1時ごろまで旧友たちとの親交を深め、ツアーの受け入れ準備を行い、妻を大学時代の思い出の場所に案内して、エジプト国内を巡った。友人たちは、エジプトでは考えられないほどの晩婚の私たちを祝福してくれると共に、エジプト初体験の妻をとても大切に扱ってくれたのだ。

 そのエジプト国内旅行の最初を飾ったのが、このナセル湖クルーズだった。

 ナセル湖は、その名が示すように、「アラブの星」とたたえられたナセル元大統領が、1960〜1970年にナイル川にアスワン・ハイダムを建設したことで出来た人工湖だ。北はアスワンから南はスーダンのワディ・ハルファまで全長550キロ、最大幅35キロのナセル湖に沈んだ土地は、実は、ヌビア人と呼ばれる少数民族が住む地域だった。ヌビア人は、古代エジプト時代から5000年以上にわたりエジプト歴代文明の影響を受け、多くの場合、エジプトに支配されながらも、独自の言語や文化を保ってきた。

 ナセル湖の出現で、エジプト側だけでも、5万人以上のヌビア人が強制移住させられ、18に上る主要古代遺跡が水没の危機にさらされた。ついに、1960年には、ユネスコが立ち上がり、有名なアブシンベル神殿をはじめとするヌビア古代遺跡の移転工事が行われたのだ。今回のクルーズは、その救済された18遺跡のうち11遺跡を見学することを目的としたものだった。(続く)

プロフィール

金子貴一(かねこ・たかかず)

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 秘境添乗員、フリーライター。1962年生まれ。元不登校児。高校時代、米国アイダホ州で一年間ホームステイ。大学時代は、エジプトの首都カイロに7年間在住し、カイロ・アメリカン大学文化人類学科卒業。留学を通して、「異文化間交流」の大切さを実感。在学中より、観光ガイド、ジャーナリストとして活動を開始。仕事等で訪れた世界の国・地域は100近く。著書に、「秘境添乗員」(文藝春秋)「報道できなかった自衛隊イラク従軍記」(学習研究社)
公式ブログ http://sea.ap.teacup.com/hachidaiga/

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