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ひとえきがたり

神木抱き、地域の顔に 萱島駅(大阪府、京阪電鉄京阪本線)

2011年1月11日

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写真:屋根を突き抜けブロッコリーのような葉を茂らせる。線路下は萱島神社=渡辺瑞男撮影拡大屋根を突き抜けブロッコリーのような葉を茂らせる。線路下は萱島神社=渡辺瑞男撮影

写真:ホームから空へと伸びるクスノキ=渡辺瑞男撮影拡大ホームから空へと伸びるクスノキ=渡辺瑞男撮影

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 萱島(かやしま)駅(大阪府寝屋川市)の前にある旧家で、主人の古箕(ふるみ)豊さん(67)が古いアルバムの1枚を指さした。三輪車にまたがる子どもの後ろに、ブランコをつり下げた大木が写る。「昔はこんな風にして、よう遊んでました」と懐かしそうに目を細める。

 萱島神社の神木で、樹齢700年と伝わるその大クスノキが切られることになったのは1972年のこと。京阪電鉄が京阪沿線の人口増加に合わせ、線路の高架化と複々線化を計画。萱島駅も対象になり、拡幅される新駅の場所がクスノキと重なった。

 「何を言うんやと、地元は反発したんですな」。古箕さんのアルバムに、工事の状況をつぶさに記録した写真が現れる。様子を注意深く見守り、みなの先頭に立って保護を訴えたのは父の故・繁雄さんだった。

 クスノキをめぐる当時の神秘的なエピソードがある。枝が邪魔だと切った人がその日のうちに高熱を出した、と。白い蛇がとぐろを巻いて絡まっていたとか、木のてっぺんから煙が出たという目撃情報もまことしやかにささやかれた。実は煙に見えたのはかたまって飛んでた虫なんですけどね、と古箕さんは笑いながら、「みんなが神木と信じてましたから。切ったら京阪に不測の事態が起こる、というのがおやじたちの究極の殺し文句やったと思います」。

 新しい駅に包み込まれるように、クスノキは残った。ホームも屋根をも突き破るユニークな景観が評判となり、遠方から見にくる人もいる。近所の女性(62)は「駅やからここの神さんもやかましいやろうけど、いいシンボルになったと思います」。パンパンと手を合わせ、日々の感謝を捧げた。(加藤千絵)

    ◇

 全国各地の鉄道駅を巡り、そこにまつわるひと模様をつづります。

■沿線ぶらり

 京阪本線は淀屋橋駅(大阪市中央区)と三条駅(京都市東山区)をつなぐ49.3キロ。

 萱島駅を出ると、高架下に萱島神社がある。駅の工事が終わった後、京阪電鉄が地元に寄贈した。学問の神の菅原道真と五穀豊穣(ほうじょう)の豊受大神、開墾の祖の三神を合祀(ごうし)している。同駅から京都方面に2駅の香里園駅では、バスに乗って成田山不動尊へ。昨年4月、京阪電鉄が開業100周年を記念してソメイヨシノ100本を植えた。ただし見ごろは5年後。「ひらパー」の愛称で知られる遊園地ひらかたパークは、さらに2駅先の枚方公園駅から。

■いち押し

 クスノキの下枝を使ってバチを作り、地元の発展を願って1989年に結成された萱島くすの木太鼓。団長の米田喜一さん(44)が作るヘビメタ調のオリジナル曲が特徴で、萱島神社の夏祭りや年末年始のライブで重低音を響かせる。

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