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2012年4月3日
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ひとえきがたり

2世紀目 サッカーとともに 鳥栖駅(佐賀県、JR鹿児島線・長崎線)

写真:試合後、ベアスタ(奥)から鳥栖駅(手前)に向かう観戦客。J1初戦は引き分けだった=浅川周三撮影拡大試合後、ベアスタ(奥)から鳥栖駅(手前)に向かう観戦客。J1初戦は引き分けだった=浅川周三撮影

地図:  拡大  

 水色のレプリカユニホーム姿の駅長が、笑顔で乗客を迎える。3月10日、佐賀県鳥栖市に本拠地を置き、サッカーJ1に初昇格した「サガン鳥栖」の初戦。目を輝かせたサポーターたちが続々と目の前のベストアメニティスタジアムへ向かった。その中に、駅舎ができて1世紀余りと知る人はどれだけいただろうか。

 鳥栖駅は九州初の鉄道駅の一つで、1889年に開業した。洋館風の現在の木造駅舎は、1903年(一説に04年)の移転・新築時の面影を残す。

 元市職員で郷土研究家の篠原眞さん(86)は、長く駅を見てきた一人だ。

 一帯は米どころで、福岡方面に米を運ぶヤミ屋が多かった。警察は、乗換駅の鳥栖駅に目をつけていた。列車が着き、警官がなだれ込む。列車の床下に米を入れて逃げる男たち。だが主婦は捨てきれない。捜査員がヤミ米をつみ上げると、女性たちは「家族のために返して」と泣きすがった――。

 篠原さんが今も記憶する、戦後の駅の風景だ。駅舎とホームをつなぐ地下道では、孤児たちが乗客に食べ物をねだる。ホームや線路は、汚れ放題。道徳なんてなかった。「この駅は歴史の生き証人。現役であることに意義があるんです」と篠原さんが語る。

 1996年、駅構内の鳥栖機関区・操車場跡地に、市が総額100億円を投じて巨大スタジアムを建設した。だがチームは低迷し、経営も混乱。建設費は市の財政を圧迫し、「スタジアムはいらない」という市民の声もあった。

 5、6番乗り場に立つと、割れるような歓声の中でホイッスルの音が聞こえた。今季九州唯一のJ1。念願かなったチームと一緒に、鳥栖駅は新しい一歩を踏み出した。(塩見圭)

■沿線ぶらり

 JR鳥栖駅は、福岡・門司港駅が起点の鹿児島線と、鳥栖駅と長崎駅を結ぶ長崎線の分岐点。博多駅へ特急で約20分。九州新幹線・新鳥栖駅へ約4分。

 駅構内に4店舗ある弁当と立ち食いうどんの店「中央軒」は1892年創業。名物はかしわうどん。ベストアメニティスタジアム(ベアスタ)は改札を出て右へ。跨線(こせん)橋を渡ってすぐ。

 駅前商店街の約10の飲食店では、アウェーサポーターをもてなすため「アウェー割」「やけ酒割」を提供予定。チケット半券とアウェーサポーターを証明するグッズがあれば、割引を受けられる。

■興味津々

 鳥栖駅の車寄せの屋根の下にツバメの巣が15ほどある。鳥栖は鳥の栖(すみか)と書くため、代々の駅長が大事にしてきた。

 郷土誌・栖は年に1回の発行。鳥栖郷土研究会が、市周辺の歴史や文化を紹介している。13号と33号、42号は鉄道特集(各号1冊千円)。問い合わせは事務局の藤瀬禎博さん(電話090・5947・9204)へ。

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