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「春の大曲線」と「春の大三角」 4月の星空

文:高梨直紘(天プラ/国立天文台 広報普及員)

2009年3月30日17時27分

イラスト:「春の大曲線」と「春の大三角」拡大「春の大曲線」と「春の大三角」

 今年はイタリアの天文学者ガリレオ・ガリレイが、人類で初めて夜空に望遠鏡を向けてからちょうど400年目にあたる。それを記念して、国際連合、ユネスコ、国際天文学連合によって2009年は世界天文年と定められた。せっかくの世界天文年だ。今年は宇宙をおおいに楽しもう。

 宇宙に生まれた私たちが宇宙を眺め、宇宙に思いをはせる。こんな不思議が当たり前の宇宙は、私たちのまだ知らない秘密で満ちた世界だ。この宇宙の秘密に触れるには、なにも特別な能力は必要がない。ただ少し、ゆっくり考える時間と好奇心があれば十分だ。本コラムでは、身近に見える星の話から最先端の天文学まで、幅広い話題を通じて宇宙の楽しみ方を提案していきたい。

        ☆    ☆    ☆

 春の夜空で最初に見つけたいのは、北斗七星だ。明るい星ばかりからなるひしゃく(斗)の形は、北の方角を見上げてみれば、都会の夜空にも見つけ出すことができるだろう。ひしゃくをカーブに沿って伸ばしていけば、そこには黄色く輝く1等星のアルクトゥルス(うしかい座)を見つけ出せる。さらにその曲線を伸ばしていけば、白く輝く1等星のスピカ(おとめ座)も見つけ出せるだろう。北斗七星からアルクトゥルス、スピカまでをつなぐ曲線を「春の大曲線」と呼び、春の星座を探し出す星空のめあてとなっている。

 アルクトゥルスとスピカを見つけることができれば、両者を結ぶ線分が正三角形の一辺となるような位置に、2等星をひとつ見つけることができるだろう。これがしし座の尻尾に相当する位置にあるデネボラで、3つの星を結んでできる正三角形を「春の大三角」と呼ぶ。今年はごく近くに0等星の土星がいるので、まずは明るい土星を探してみる方が簡単かもしれない。春の大曲線、春の大三角を覚えておけば、春の夜空に星座を探し出す手がかりになるだろう。

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 夜空に見える星には明るいものもあれば、暗いものもある。明るさの違いをもたらす主な原因は、私たちからの距離だ。近い星ほど明るく、遠い星ほど暗い。実際にはもともと暗い星や、もともと明るい星もあるので話はそれほど単純ではないのだが、大雑把にはその理解で正しい。この事を知った上で夜空を眺めれば、星空が単なる平面ではなく、奥行きを持った世界である事が実感されるだろう。私たちの住む銀河系にはおよそ1000億個の星があるが、夜空に肉眼で見える星は南北の天域を合わせてもわずか6000個程度に過ぎない。夜空には、いかに近くの星しか見えていないかがわかるだろう。

 最初に紹介した北斗七星は、明るさが同じくらいの星でできた星の並びである。同じくらいの明るさの星がたまたま狭い範囲に集まっているという不自然には、必ず原因があるに違いないと疑ってみるのが、天文学的な星空の楽しみ方だ。実は北斗七星を作る星の大部分は、おおぐま座の運動星団と呼ばれる、同時に生まれた兄弟星の集まりだと考えられている。星はひとつの星雲から同時に何百個と誕生し、時間と共にだんだんとばらばらになっていくのだが、おおぐま座の運動星団はその過程にある星の集団といって良い。およそ5億年前に誕生した星が宇宙空間に旅立つさまを、私たちは見ているのである。

 このような兄弟星の集まりは、夜空の各所に見つける事ができる。例えば、しし座の頭の先にあるかに座の中にはプレセペ星団と呼ばれる散開星団があるが、これもやはり同じ雲から生まれた兄弟星の集団だ。無秩序に夜空に輝いているように見える星々も、少し視点を変えて眺めるだけで、そこにはあまたの宇宙の物語が隠されていることに気がつくだろう。それらの物語の読み方は、決して難しいものではない。次号以降も、各月の星空に隠された物語の読み方を中心に、さまざまな天文学の楽しみ方を紹介していこう。

プロフィール

天文学普及プロジェクト「天プラ」

天プラは、天文学の普及を目指して活動する、若手研究者らによる有志グループです。 なにかと遠い感じのする天文学の世界を身近に感じてもらおうと、「星の輪廻(りんね)」をテーマにしたトイレットペーパーを製作するなど、あの手この手で天文学普及に取り組みます。

モットーは“知るを楽しむ”。大目標は「みんなで作ろう、月面天文台」。

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