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「梅雨空に土星を楽しむ」 6月の星空

文:塚田健

2009年6月1日15時36分

写真:望遠鏡で見た今シーズンの土星。(資料提供:姫路市宿泊型児童館・星の子館)拡大望遠鏡で見た今シーズンの土星。(資料提供:姫路市宿泊型児童館・星の子館)

イラスト:ガリレオによる土星のスケッチ。(資料提供:IMSS, Florence)拡大ガリレオによる土星のスケッチ。(資料提供:IMSS, Florence)

イラスト:地球から見た土星の環の傾きの変化の様子。拡大地球から見た土星の環の傾きの変化の様子。

 梅雨――曇りや雨の日が続く。星を見るには何かと具合のわるい季節だが、梅雨の合間の晴れ間は空が澄み、意外なほど星が見られることがある。梅雨だから、とあきらめずに、ぜひ空を見上げてみたい。

 4月のコラムで、「春の大三角」のごく近くに土星が見られることを紹介した。6月になると西の空に傾きつつあるが、明るい星が少ない6月の西空では目立つ存在だ。環(リング)をもつことで有名な土星だが、今年はちょっと変わった土星の姿を楽しむことができる。今回のコラムでは、この土星に注目してみよう。

 太陽系第6惑星の土星は、木星につぐ大きさを誇り、直径は地球の約9.5倍。そのほとんどが水素からなる巨大ガス惑星だ。そのため大きさの割に軽く、平均密度が約0.7と水よりも小さい。小さな望遠鏡でも見ることのできる立派な環をもつが、その正体は無数の氷や岩石の粒子の集まりだ。

 その環は、地球から見ると毎年、傾きが変化する。これは、土星の自転軸が傾いていることに原因がある。

 土星の自転軸は、公転面に対し約26.7度傾いている。そして、その傾きを同じ方向に向けたまま、太陽の周りを約30年かけて公転している。そのため、地球から見るとほぼ30年周期で環の傾きが変化していくのである。

 今年はその傾きがもっとも小さくなる年で、ほぼ真横に近い。そのため、環というよりはまるで串ざしの団子のように見える。そして、8月11日には地球から見て環が真横になるために、9月4日には太陽から見て環が真横になり環に太陽光がほとんど当たらなくなるために、前後数日間は環が見えなくなってしまう。これを土星環の消失というが、もちろん、本当に消えてしまうわけではない。主な環の厚みは10m程度とあまりに薄いため、真横から見ると小さい望遠鏡では見えなくなってしまうのである。この現象は約15年周期で起こるが、残念なことに今回は土星が見かけ上、太陽に近づいているため見ることが難しい。

 400年前、人類で初めて望遠鏡による天体観察をしたと言われるガリレオ・ガリレイは、土星にも望遠鏡を向けた。しかし彼の望遠鏡では性能が足りず、環を環としてとらえられなかった。彼は「土星には耳がついているようだ」と表現したが、彼のことを笑うことはできない。私たちも、今年の土星を何の予備知識もなく小さな望遠鏡でのぞいたら、きっとあれが環だとは思わないのではないだろうか。

 初めて環を環として認識したのは、より優れた望遠鏡で土星を観察したホイヘンス。ガリレオの観察から約50年後、1655年のことであった。1675年にはカッシーニが環の中に隙間を発見した。この隙間は「カッシーニの間隙」と呼ばれ、現在では、土星の環は1000を超える細い環が集まってできていることが明らかになっている。そのそれぞれが細かい粒子の集合体であることは前に述べた。

 1997年、アメリカ航空宇宙局(NASA)と欧州宇宙機関(ESA)は、二人の名を冠した探査機を打ち上げた。土星探査機カッシーニと、それに搭載された突入機ホイヘンス。カッシーニは今も土星を周回し、観測を続けている。ホイヘンスは2005年1月に土星の衛星タイタンの大気に突入し、貴重なデータを地球に送ってきた。探査機がとらえた土星とその衛星の姿は、NASAのwebページなどで見ることができる。この6月、晴れれば生の土星を眺め400年前のガリレオの驚きに思いをはせる。曇りや雨の日は、コンピューターの画面で最新の土星の姿を堪能する。そんな宇宙の楽しみ方はいかがだろうか。

    ◇

塚田健(つかだ・けん)天プラ/姫路市宿泊型児童館「星の子館」天体観測担当嘱託職員。

プロフィール

天文学普及プロジェクト「天プラ」

天プラは、天文学の普及を目指して活動する、若手研究者らによる有志グループです。 なにかと遠い感じのする天文学の世界を身近に感じてもらおうと、「星の輪廻(りんね)」をテーマにしたトイレットペーパーを製作するなど、あの手この手で天文学普及に取り組みます。

モットーは“知るを楽しむ”。大目標は「みんなで作ろう、月面天文台」。

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