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八月 銀河好し

文:高梨直紘(天プラ/国立天文台 研究員)

2009年8月5日11時11分

写真:夏の大三角形の間に、ぼんやりと天の川が流れている様子が分かる(撮影:平松正顕)拡大夏の大三角形の間に、ぼんやりと天の川が流れている様子が分かる(撮影:平松正顕)

イラスト:私たちの住む太陽系は、銀河系の中心から2万6千光年離れた場所にあり、周囲をぐるっと銀河系の星々に囲まれている。拡大私たちの住む太陽系は、銀河系の中心から2万6千光年離れた場所にあり、周囲をぐるっと銀河系の星々に囲まれている。

 心地よい夜風の涼しさに身を任せながら、更けゆく夜空の下で尽きない話に夢中になった思い出がある方も少なくないのではないだろうか。夏の夜は、いつだってそのような不思議な魅力を秘めているように感じられる。宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」は、そんな夏の夜が創り出す、とらえがたいなにかを見事に描き出しているように思える。この夏の夜空の不思議な魅力の源のひとつは、天の川だろう。

 天の川は、名前の示すように夜空を流れる川のように見えるぼうっと輝く光の帯だ。夜空が暗く保たれているところでないと天の川を認めることは難しく、環境の良し悪しを示すひとつの指標ともなっている。春夏秋冬どの季節の夜空にも天の川は流れているのだが、特に夏の夜空に濃く、初めての人でも見つけやすくなっている。

 天の川の正体は、私たちの住む銀河系そのものだ。およそ1000億の星からなる銀河系は、全体として真ん中の膨らんだホットケーキのような形をしている。この中にある太陽系に住む私たちから銀河面沿いの方向をみると、無数の星が重なり合って、あたかも光の帯が私たちを取り囲んでいるように見える。実際、天の川の方向に向けて双眼鏡や望遠鏡を向けてみれば、天の川から離れた方向に比べて、明らかに星の密度が高いこともわかるだろう。夏の天の川の方角は、特に星の密度が高い銀河系の中心の方向を見ているため、濃く見えるのだ。

 実は、1等星や2等星のように明るい星の多くは、天の川沿いに分布している。例えば、七夕の織女星(こと座のベガ)と彦星(わし座のアルタイル)も、天の川を挟んで向かい合っている。その理由は単純で、天の川沿いとはすなわち銀河面沿いであり、銀河面沿いのように星の密度が高いところには、確率的に近い星やもともと明るい星などが含まれているからだ。そう思って夜空を眺めると、夜空が明るくて天の川が見えないところでも、明るい星の分布を眺めることで天の川の流れを想像することもできるだろう。ぜひ試してみて欲しい。

 8月は、流れ星も多く飛ぶ季節だ。特に、8月12日の夜から13日の早朝にかけては三大流星群のひとつであるペルセウス座流星群が極大を迎え、多くの流れ星を数えることができるだろう。流れ星はたかだか100km程度の上空で起きている現象であるのだが、流れ星に星座を作る星たち、そしてその背景に流れる天の川という距離のまったく異なるもの創り出す夜空の妙を、今年の夏はゆっくり味わってみてはどうだろうか。

プロフィール

天文学普及プロジェクト「天プラ」

天プラは、天文学の普及を目指して活動する、若手研究者らによる有志グループです。 なにかと遠い感じのする天文学の世界を身近に感じてもらおうと、「星の輪廻(りんね)」をテーマにしたトイレットペーパーを製作するなど、あの手この手で天文学普及に取り組みます。

モットーは“知るを楽しむ”。大目標は「みんなで作ろう、月面天文台」。

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