イマサラ・トリップ
2009年3月30日17時25分
プロ仕様の厨房用品があふれかえる「かっぱ(合羽)橋道具街」。美味の秘密兵器の数々、骨董さながらの珍品や逸品、中国・韓国料理の道具など、時空を超えたワンダーランドだ。知る人ぞ知る、この街の奇妙な磁場に“今さら”ながら酔ってみよう。(アサヒ・コム編集部)
「かっぱ橋」第一弾は、目抜き通り西側の松が谷1〜4丁目かいわい。
ビル屋上にそびえる巨大なコックさんの像が目を奪う。街を見下ろし、“一見さん”の観光客を威圧する。威風堂々の雄姿は、かっぱ橋のランドマーク。お隣の浅草でいえば、風神さん、雷神さんがにらみを利かす雷門といった趣だ。
「ニイミ洋食器店」の持ち物で、店員によれば、この「ジャンボコック像」は高さ11メートル、重さ10トン。はて、イースター島のモアイ像級の巨体を屋上で組み立てたのか、地上で作って持ち上げたのか。
驚きの光景は、ごろごろしている。歩道にはみ出さんばかりにデーンと構えた巨大な鉄瓶がある。容量は13.4リットルで、表面にボツボツのある万代屋アラレという種類。まるで鉄兜だが、れっきとした南部鉄瓶。お値段は31万円。
誰が何のために買うのか…。だが、なんと1年ほど前に売れたというのだ。店員さんは、お客の素性をこっそり打ち明けてくれた。「買ったのは、ロシア政府関係者のようでした」。きな臭い話をかぎ取ったわけではない。プーチン氏が好きなのか。ともあれ、ロシアの審美眼、侮りがたし。
商店街の便利マップを見ると、南の浅草通りと北の言問通りにはさまれた目抜き通り沿いに約150店がひしめく。一軒一軒が個性的で、全店をのぞくと3時間はかかる。
さて、陳列棚や漆器、のれん、包丁、白衣などの専門店を横目に歩く。歩道にはみ出した巨大なお釜を発見。値札らしきものを見ると、「ご飯500人、みそ汁1000人」とある。山形の芋煮会とか、大規模な炊き出し、はたまた給食用にでも使うのだろうか。まるで、風呂おけのようだが。店員さんによれば、かつて、石原軍団が炊き出し用に買ったとか。
ここ「釜浅商店」の店内に入ると、若い女性や外国人がぶらりぶらり。竈(かまど)を見ているのだ。白いごはんのおいしさを突き詰めれば、必ずやゆきつくあこがれの竈炊き。大谷石を削り出した一品は、33センチの鉄釜で炊くサイズだと29万4000円。リッチな人なら買えなくもない。薪のくべ方、炊き方が分からぬという御仁もおいでだろうが、心配無用。「古式炊飯術」を伝授してくれる。
かっぱ橋の「顔」も紹介しておこう。金色に輝く「かっぱ河太郎」像だ。江戸時代、治水工事に取り組んだ商人・合羽屋喜八を河童たちが助けた伝説に由来する。
歩き疲れて、空腹に。だが、このかいわい、案外、飲食店があまりない。そこに飛び込んできた赤いちょうちん。「やきとり」「ラーメン」の文字に向かって一目散!。でも、そこは「かっぱ橋装飾」というお店だった。
店員さんによれば、ちょうちんは、プロ以外に外国人の観光客が喜んで買っていく。最近では、なぜか「やきとり」と書かれたちょうちんが売れた。”ジャパニーズ・ヤキトリ”は、「カラオケ」さながらの共通語? ひらがなの字体が面白がられるそうだ。フランス人と中東出身者と思われるカップルは、自分たちの名をカタカナで記したちょうちんを注文した。どうやら、結婚式で使うらしい。ちょうちんに「健康」「長寿」を書いてほしいという依頼もあった。
同店お隣の韓国厨房用品店を過ぎて、ずんずん歩く。と、今度は中国だ。かっぱ橋は国境も越える。
中華装飾の「万糧」の店内は、原色の赤色の洪水だ。さぞ、竜宮城はこんなだろうと思わせる異空間。商品の卸先の一つだという横浜中華街のミニチュアパークのよう。店員オススメは、竹や杉製の格安のセイロ。1個200円台。かっぱ橋のおみやげに、縁起ものの金色のブタの貯金箱が欲しくなった。