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「東京ラブストーリー」 梅津寺駅(松山市)

2009年7月22日12時25分

写真:梅津寺駅のホームのさくに結ばれたハンカチ。いつしか「恋人たちの聖地」になったという=柏木写す拡大梅津寺駅のホームのさくに結ばれたハンカチ。いつしか「恋人たちの聖地」になったという=柏木写す

地図:  拡大  

■白いハンカチ 今も聖地

 白いハンカチは、訪れた日も1枚、潮風にはためいていた。

 ホーム直下に波が寄せては返す松山市の伊予鉄道高浜線・梅津寺(ばいしんじ)駅。瀬戸内の島なみはどこまでものどかで、強い日差しは水面をコバルト色に輝かせている。だが、子どもたちのにぎやかな声はもう聞こえてこない。

 駅に隣接して伊予鉄道の梅津寺公園が広がる。ここの遊園地は3月、46年の歴史に幕を下ろした。伊予鉄は遠浅で穏やかな海水浴場の経営からも撤退。乗降客はまばらになった。

    ◇

 91年にフジテレビ系で放送されたドラマ「東京ラブストーリー」のロケ地の一つ。終盤で主人公の赤名リカ(鈴木保奈美)は、恋してやまないカンチこと永尾完治(織田裕二)の故郷・愛媛県へ傷心の旅に出る。

 追いかけてきたカンチとの、つかの間の幸せな時間。別れを言えないリカは駅のホームのさくに白いハンカチを結び付け、先に電車で去る。残されたカンチがハンカチをほどくと、赤い口紅で「バイバイ カンチ」。

 「ドラマ以来、訪れるカップルが後を絶たず、白いハンカチがいくつも結んであった」と梅津寺公園の境野和夫園長。「さて、これからはどうでしょう」と遠い目をした。

    ◇

 「恋人たちの聖地? あれは別れのシーンなのに」

 演出を務めたフジテレビのゼネラルプロデューサー、永山耕三さんは、放送から18年たった今でもホームに揺れるハンカチに、少し驚きながらもうれしそうだった。

 当時、ロケ地選びのため、各地を走り回った。土塀が続く町並みの大洲市はカンチの出身地に、久万高原町の中学校の木造校舎は彼が学んだ小学校として、そして海に沿った梅津寺駅を別れの場面にあてた。

 「愛媛には昭和のにおいが色濃く残っていた。東京から思う『理想の故郷』のすべてがあった。懐かしさの代表みたいに」

 「多くの若者が地方から東京に働きに来て、恋をしている。つまずいて郷里に帰ろうかと悩みつつ、もう少し頑張ろうとする。そんな日々を表現したい」。プロデューサーだった大多亮・フジテレビ執行役員らとよく話し合ったという。

 視聴率(関東地区、ビデオリサーチ調べ)は平均22.9%、白いハンカチの場面の最終話は32.3%。「放送日の月曜の夜に街から若い女性が消えた」といわれた。

 「好きだ、嫌いだ、ただそれだけのドラマなのだけど」と永山さん。家族を描かない、勇気も夢も「人生頑張ろう」などのメッセージもない、純粋な恋愛物語。「イケイケのバブル時代に、ふと感じるノスタルジーとセンチメンタルが、うまくはまったのでしょう」(柏木友紀)

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