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「眉山」 徳島市

2009年8月12日11時22分

写真:徳島のシンボル、眉山。どの方向からも稜線が眉のように見えることが名前の由来という=柏木写す拡大徳島のシンボル、眉山。どの方向からも稜線が眉のように見えることが名前の由来という=柏木写す

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■父母を象徴する山と踊り

 その頂(いただき)は思いのほか近く、徳島市の市街地に抱かれるようにたたずんでいた。降り続いた雨が上がった早朝、姿を現した眉山(びざん)。標高290メートルの山頂へ向かってロープウエーが続く。

 フジテレビ系で昨年放送されたドラマ「眉山」は、さだまさしの小説が原作。咲子(常盤貴子)は末期がんの母・龍子(富司純子)を徳島の地でみとる中で、母の秘めた思いをたどる。随所で仰ぐ眉山の穏やかな稜線(りょうせん)が作品の輪郭を形づくる。

    ◇

 母子が心の距離を縮める「病院の中庭」の場面は、稜線がとりわけ美しい。徳島県観光企画課には「あれはどこ?」と、地元からも問い合わせが相次いだ。市街地にそびえるため、山全体をきれいに望める場所は意外に少ないのだ。

 撮影場所は徳島市の陸上競技場だった。トラック部分がくぼんだ構造を利用し、ローアングルで山だけ映るよう撮影した。

 ドラマでは、龍子の若いころと現代の二つの時代が描かれる。「純愛を際立たせるために龍子が幸せだった回想シーンを多くした」とは演出の永山耕三さん。だが、あとで「しまった」と後悔した。「阿波踊りシーンを2通りもつくるのか」

 かつての街中の場面は昭和の風情が残る吉野川市鴨島町の商店街で収録。踊りを見る場面は8月のお盆休みに行われる本物の阿波踊りの時に撮影した。

 8月下旬には3日間、600人を超す観客役のエキストラと160人の踊り手の協力を得て、徳島港のフェリーターミナルで祭りの熱気を再現した。初日は回想シーンを、残り2日は熱狂する踊りの列を横切って龍子が最愛の人である咲子の父と再会する山場を撮影した。

    ◇

 「連」と呼ばれる阿波踊りのグループの一つ、「娯茶平」が協力した。連長の岡秀昭さんは「全員が燃えた。収録後、スタンドを埋めたエキストラの人々に向け、感謝を込めて常盤さんや富司さんらと踊ったことが忘れられない」。

 徳島市内で喫茶店を営む佐藤文昭さんは連日、800杯分のコーヒーを差し入れた。「酷暑の中、皆がいいものをつくろうと汗だくになっていたので、少しでも役に立ちたくて」

 7月にもなれば、日が暮れかかった徳島の街のあちこちで様々な連が練習に励む。商店街のアーケードから鉦(かね)や笛の音が聞こえてきた。50人もの男女が整然と隊列を組み、両手をかざし跳ねるように近づいてくる。独特の激しい2拍子が迫る。

 山と踊り、静と動。対照的な二つは、静かに存在していた父と熱い思いを貫いてきた母を象徴していたのだと、このとき気づいた。(柏木友紀)

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