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「失楽園」 華厳ノ滝(栃木県日光市)

2009年9月30日10時56分

写真:虹のかかる華厳ノ滝。禁じられた恋も清く強い流れに浄化されるか拡大虹のかかる華厳ノ滝。禁じられた恋も清く強い流れに浄化されるか

写真:2人が入った露天風呂がある高級旅館=いずれも竹田写す拡大2人が入った露天風呂がある高級旅館=いずれも竹田写す

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■落ちて戻れぬ恋の滝

 栃木県日光市の華厳ノ滝は、日本テレビ系で97年に放送されたドラマ「失楽園」でロケ地の一つとなった。

 不本意な人事を機に「燃え尽きるような恋を」と切望するようになる会社員、祥一郎(古谷一行)。夫との不和に悩む凜子(りんこ)(川島なお美)。禁じられた恋に落ち、それぞれの家族に偽って旅に出る。

 東京から電車を乗り継ぎ、急カーブで知られる「いろは坂」をバスで上って約2時間40分。実際に訪ねてみると、思ったより遠いところだ。2人の仲が盛り上がっていないとつらいだろう。それともお忍びには適度な距離なのか。毎秒5トンの水が流れ落ち、迫力は満点だ。

 2人は滝を見ながら、愛と死について語る。旧制一高生の藤村操が「いわく不可解」と投身自殺したことにも話は及んだ。

 「不可解って、人生のことかしら?」と凜子。「さあ、人間のことか、自分のことか」と祥一郎。凜子は「そうね、私たちだって、このままどこへ行くんだろうって考えたら分からないし」。

 すぐ近くに、滝の水源の中禅寺湖が広がる。避暑地として人気のある湖畔に、ひときわ目立つ銅板の屋根の旅館が立つ。2人はここに泊まる設定で、露天ぶろがロケに使われた。

 宮大工が手がけた建物で、かつては1泊50万円の部屋もあったという。ロビーを見ると、豪華で上品な雰囲気だ。

 いまはオーナーが代わり、「楓雅(ふうが)」という名になった。フロントマネジャーの小泉貴裕さんは「当時を知るスタッフはいませんね。外観や露天風呂は、そのままですが」。

 祥一郎は宿に入った時は、凜子と別れるつもりでいた。大雨で道路が通行止めとなって帰れなくなり、「もう引き返せない」。露天風呂で愛し合う。濃厚な性描写で話題となった作品だが、この場面は圧巻だ。

 プロデューサーの岡本俊次さんは「禁じられた恋を不潔感なく表現するため、日光という豪華な装飾がある場所、きれいな場所を選んだ。大人の愛が成就するように」。

 序盤のデートは、幻想的な薪能が行われている京都市伏見区の神社で撮影した。最後に心中するのは高級別荘地の代名詞、軽井沢だ。

 「経済の話は扱わなかった。中年男性が、ただストレートに、エネルギッシュに、愛ひとすじに、妻でない女性をどこまで愛せるか。爽快(そうかい)感のあるドラマだった。そして、愛をまっとうするには死だったのです」

 そう言って岡本さんは、照れくさそうに「ひとつの寓話(ぐうわ)ですけど」とつけ加えた。(竹田さをり)

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