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「タイガー&ドラゴン」 東京・浅草

2010年1月6日11時32分

写真:参拝客らでにぎわう浅草寺。出店が並ぶこの辺りで「タイガー&ドラゴン」のロケがあった拡大参拝客らでにぎわう浅草寺。出店が並ぶこの辺りで「タイガー&ドラゴン」のロケがあった

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■噺家演じて人情ものに

 4日午前9時、浅草演芸ホール。トップバッターの三遊亭円龍が、師匠円生と古今亭志ん生、森繁久弥らについての思い出を語り、続く柳家我太楼は「物の数え方」をクイズで子供たちに問う小話。芸者の動きをパントマイム風に見せる初音家左橋なんて噺(はなし)家も。

 新年早々、落語を楽しんで心豊かに過ごす。これはお客さんにとっても、落語家にとっても縁起が良いものだ。元日から10日間の同ホールは「初席」と銘打ち、いつもより多くの落語家が高座にあがる。客席も早くから埋まる。

 2005年、この高座を舞台に「林屋亭小虎」も前座から二つ目へと成長していった。ドラマ「タイガー&ドラゴン」で、幼少期の両親の自殺で笑うことを忘れてしまった新宿のヤクザ山崎虎児(長瀬智也)のことだ。虎児は借金を取り立てに行った林屋亭どん兵衛(西田敏行)の噺に聞きほれ、弟子入りしてしまったのだ。

 「タイガー、タイガー、じれっタイガー」。それが小虎のつかみゼリフ。高座に上がり始めた頃、追いつめられて出た言葉だ。「面白い噺を面白く語れるようになりてえ」って口癖のように繰り返す小虎だが、古典落語のストーリーを劇中の身の回りのドタバタと結びつけてアレンジ。自分なりの落語を演じはじめ、拍手をもらえるようになっていく。

 劇中の「現実」がオーバーラップする落語は「芝浜」や「饅頭(まんじゅう)怖い」といった古典の名作ばかり。「脚本を手がけた宮藤官九郎君が天才だからできたこと」と、TBSの磯山晶プロデューサーも新手の展開に潜む手堅さを語る。

 成功したもう一つの要因は「浅草寺でロケができたこと」だとか。虎児とどん兵衛の息子の竜二(岡田准一)が語り合う「おでん屋」のシーンで、怒った虎児が屋台をひっくり返す。背景に見えるのは浅草寺の門にかかる「小舟町」のちょうちん。「元々ライトアップされていて、『いただき』っていう感じ」

 このドラマと、ほぼ同時期の林家正蔵の襲名披露をきっかけに、落語ファンが若者層にも広まったとされる。4日の浅草演芸ホールにも、お年寄りに交じって若いカップルの姿があった。

 磯山プロデューサーは「これまで『池袋ウエストゲートパーク』や『木更津キャッツアイ』など若者文化というか、とんがったものを作ってきたけど、『タイガー&ドラゴン』は人情ものだし、一つ大人の階段をのぼったような感じ」。若者ドラマが人間ドラマに昇華した瞬間だった。(岩本哲生)

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