現在位置:
  1. asahi.com
  2. ライフ
  3. トラベル
  4. TV 訪ねてみれば
  5. 記事

「警官の血」 見沼自然公園(さいたま市緑区)

2010年3月10日11時17分

写真:見沼自然公園の池。不忍池に見立てて幻想的な場面を撮影した=さいたま市緑区拡大見沼自然公園の池。不忍池に見立てて幻想的な場面を撮影した=さいたま市緑区

写真:現在の不忍池は周辺にビルが立ち並ぶ=東京都台東区、いずれも竹田写す拡大現在の不忍池は周辺にビルが立ち並ぶ=東京都台東区、いずれも竹田写す

地図:  拡大  

■戦争の傷 思い起こす水面

 激動の戦後60年を、3代にわたる無名の警察官の人生を通してつづったテレビ朝日系のドラマ「警官の血」。壮大な歴史を描き、娯楽作品としても一級品だった。

 昨年2月、2夜連続で放送された。原作は直木賞作家の佐々木譲。ドラマは、終戦直後の東京・上野公園で始まる。青空教室の子どもたち、縄張り争いをする男娼(だんしょう)たち……。今は憩いの場の公園は、当時はこんなに貧しく混沌(こんとん)としていたのか。

 激戦地から奇跡的に生還した早瀬(椎名桔平)の知り合いの男娼、ミドリ(若葉竜也)の他殺体が上野公園で発見される。朝もやに包まれた、深い緑と暗い池のほとりで。木のかたわらに、あやしく美しい少年が横たわる幻想的な映像だ。

 この場面は実際は、さいたま市緑区の見沼自然公園で撮影した。周辺は東京近郊では貴重な田園地帯で「見沼たんぼ」とよばれる。プロデューサー補だった東北新社の佐藤満さんは「終戦直後を再現するため、周囲に建物が少ない公園を探した」。

 都心から車で約40分。見沼自然公園には野鳥が群れる池が広がる。水草が茂り、大木が囲む。ほとりでは家族連れが弁当を広げている。ここがあの幻想的な場面になるとは。社会派ドラマの名手で脚本・監督の鶴橋康夫さんの手腕に驚く。

 戦争で人間性を失った早瀬。公安刑事になるが、陰で大罪を重ねる。友人で駐在所勤務の清二(江口洋介)は早瀬の正体に気づいた直後、殺される。

 清二の息子の民雄(吉岡秀隆)も警察官となるが、学生運動へのスパイ活動で心を病む。思わぬ形で過去を総括させられ、立てこもり犯の銃口に突撃し、自殺のようにして死ぬ。

 民雄の息子、和也(伊藤英明)も警察官となって上司と暴力団の癒着を暴くが、もっと大きい組織の悪に気づき、祖父、父のように正義を貫くと誓う。

 都心に戻り、ミドリの遺体が見つかったのはどのあたりだろうか、と思いながら上野公園を歩いた。不忍池は遊歩道と高層ビルで囲まれている。池の一部、蓮池の辺りに木があって、雰囲気が残っている気がした。

 終盤、早瀬を問いつめ、謝罪を迫る和也。早瀬は自分の精神を崩壊させた戦争を呪う。

 佐藤さんは言う。「家族愛を貫き、真っ当に生きた3代の警官とともに、早瀬の叫びも聞いてほしい。『オレは一度だって謝罪の言葉を受けたことはない!』。早瀬も被害者なのです」

 日本は、いまだ戦争の傷を負っていることを忘れるな。二つの公園の深い水面を見て、そんな原作者、制作者の声が伝わってきた。(竹田さをり)

検索フォーム
キーワード:


朝日新聞購読のご案内