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若者の海外旅行離れ加速 カネなし、好奇心も薄れた?

2008年7月7日

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 海外を旅する若者が急速に減っている。07年に出国した20代の日本人は282万人で、海外旅行者のピークだった00年の3分の2。携帯電話代などの支出増や就職難で懐事情は厳しく、ネットに海外情報があふれて現地へ出向く意欲が薄れているとの見方もある。旅行業界は危機感を深めている。

 関西空港に近い大阪観光大(大阪府熊取町)。観光業界への就職を目指す学生が多いが、3回生の猪崎将司さん(20)は海外へ行ったことがない。米国を見たい気持ちはあるが、月10万円のアルバイト収入は生活費や友人との付き合いで消える。「目の前のことのほうが楽しい。海外旅行に現実味がない」

 同じ3回生の前田貴之さん(20)も海外経験はゼロだ。「たいていの情報やモノは日本で手に入る。外国は言葉も違うし、困るとしんどい。行く必要を感じない」と話す。

 中尾清・観光学部長(64)は「長期間、生活を切り詰めて貯金をしてまで、海外旅行に出かける学生が少なくなった」という。ネット上では、現地に行かなくても海外の情報が簡単に得られる。「何でも見てやろうという意思と好奇心が薄れてきている」

 若者の海外旅行離れは数字の上でも明らかだ。07年の全国の海外旅行者(出国者)数は1729万人。過去最多だった00年より52万人(3%)少ないだけだが、20代は136万人(32%)も減った。第2次ベビーブーム世代(71〜74年生まれ)が30代になった関係もあるが、20代人口に対する出国者数の比率(出国率)も00年の23.3%が、07年は19.4%に下がった。

 理由はなぜか。旅行業界最大手のJTBは今年3月、3大都市圏の20代の男女1千人を対象にアンケートをした。海外旅行をためらう理由を三つ尋ねたところ、「休みが取れない」(39%)、「お金がない」(35%)が1、2位。「ほかに使いたいものがある」「言葉が通じないのが不安」がともに26%で続いた。同社は、正規社員に採用されない「ワーキングプア」の若者が増える一方で、携帯電話やパソコンなどで支出がかさみ、旅行に出る経済的余裕がなくなっていると分析する。

 JTB西日本の高崎邦子広報室長(44)は意外にも、海外旅行が身近になったことを理由の一つに挙げる。高崎さんの世代では、大学の卒業や就職後の初任給が、生まれて初めて外国を旅する動機になることが多かった。だが今は、家族や中学・高校の修学旅行で、外国の土を一度は踏んだことがある若者が増えた。「世の中に楽しみがあふれる中で、あえて海外旅行を選ぶ『大義名分』がなくなりつつある」と高崎さん。

 旅行業界関係者は「日本の将来を考えれば絶対に好ましくない」と口をそろえる。業界団体の日本旅行業協会は今年4月、国や航空会社、外国政府観光局などと連携し、海外旅行者を2010年に2千万人に増やすことを目指す一大キャンペーンを始めた。担当室長の澤邊(さわべ)宏さん(61)は「国内にこもる傾向が強まる若者に、どうやって『揺らぎ』を与えるかが成否のカギだ」と言う。

 同協会は夏以降、アンケートや聞き取りで若者が旅行しない原因を詳しく分析し、大学学園祭でイベントを開いたり、パスポート取得を呼びかけたりする取り組みを全国で繰り広げる方針だ。澤邊さんは「異文化に直接触れることの感動を若者に伝えていきたい」と話す。(滝坪潤一、加戸靖史)

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