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2012年2月13日
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楽園をさがして

日本好き、香港人のやさしさに気分は上々 香港編〈3〉

文と写真:江藤 詩文

写真:ホテルのある銅鑼湾(コーズウェイベイ)から香港公園のある金鐘(アドミラルティ)までは香港地下鉄(MTR)で2駅。香港島ならではのトラムに乗ってのんびり行くのもおすすめ拡大ホテルのある銅鑼湾(コーズウェイベイ)から香港公園のある金鐘(アドミラルティ)までは香港地下鉄(MTR)で2駅。香港島ならではのトラムに乗ってのんびり行くのもおすすめ

写真:緑豊かな香港公園。街の喧噪に疲れたら、ほっとひと息つくのにぴったり。池のほとりに佇む「楽茶軒茶藝館」の白亜の建物の前では、記念撮影をする香港の学生たちが拡大緑豊かな香港公園。街の喧噪に疲れたら、ほっとひと息つくのにぴったり。池のほとりに佇む「楽茶軒茶藝館」の白亜の建物の前では、記念撮影をする香港の学生たちが

写真:セミナーの講師をしてくれた陳嘉豪(チン・カゴウ)さん。ほっそりとしていて、穏やかで、その姿は「お酒を飲まずに中国茶を飲み続けていると、人間が浄化されるのだなぁ」と思ってしまうほど拡大セミナーの講師をしてくれた陳嘉豪(チン・カゴウ)さん。ほっそりとしていて、穏やかで、その姿は「お酒を飲まずに中国茶を飲み続けていると、人間が浄化されるのだなぁ」と思ってしまうほど

写真:お茶うけの中国菓子。もっちもちした中に黒米のぷちぷちした歯ごたえがあり、食感が楽しい。甘さはごくうっすらと控えめ拡大お茶うけの中国菓子。もっちもちした中に黒米のぷちぷちした歯ごたえがあり、食感が楽しい。甘さはごくうっすらと控えめ

写真:ちょっとおめかしした香港人のカップルやツーリストで深夜まで賑わうナッツフォードテラス。イタリアンのほかスペイン風のタパスがあるバルやアイルランド風のパブ、アメリカン・スタイルのステーキハウス、エキゾチックなタイ料理などレストランがぎっしり拡大ちょっとおめかしした香港人のカップルやツーリストで深夜まで賑わうナッツフォードテラス。イタリアンのほかスペイン風のタパスがあるバルやアイルランド風のパブ、アメリカン・スタイルのステーキハウス、エキゾチックなタイ料理などレストランがぎっしり

写真:香港国際空港のキャセイパシフィック航空ラウンジ内にある「ザ・ヌードルバー」のワンタン麺。ザ・ペニンシュラ香港仕込みの味わいです。担々麺が有名ですが、私は香港らしいワンタン麺が好き拡大香港国際空港のキャセイパシフィック航空ラウンジ内にある「ザ・ヌードルバー」のワンタン麺。ザ・ペニンシュラ香港仕込みの味わいです。担々麺が有名ですが、私は香港らしいワンタン麺が好き

写真:キャセイパシフィック航空・ビジネスクラスの機内食。タラバ蟹をたっぷり使ったマヨネーズ仕立ての前菜。この後、チキンのチリソース炒めとジャスミンライスの炒飯へと続きます拡大キャセイパシフィック航空・ビジネスクラスの機内食。タラバ蟹をたっぷり使ったマヨネーズ仕立ての前菜。この後、チキンのチリソース炒めとジャスミンライスの炒飯へと続きます

 中国茶を飲みに行ってみることにしたものの、お茶の世界は奥が深い。価格はピンからキリまであるし、品質も玉石混淆。よいものを見極められる自信は、まったくありません。

だけど、まずいお茶に当たっちゃったらイヤだな。

 そこで、食のカメラマンであり、日本人ながら香港のお茶の世界でたいへん有名な茶人でもある菊地和男さんに「初心者でも絶対はずさない茶店」を教わることにしました。

 彼が選んでくれたのは、香港公園内にある「楽茶軒 茶藝館」。中国茶を飲むほか、野菜の点心で飲茶をしたり、茶葉や茶器を購入できます。さらに知識を深めたければ、お隣りにある中国の歴代のお茶のいれ方や茶器を展示した「茶具文物館」へ。茶藝館では週3回、初心者を対象に中国茶セミナーを行っています。しかも無料。

 すてき。

香り高い中国茶で心を洗われて

 茶藝館は大きな窓からやわらかく差し込む陽射しが幻想的な、落ち着く空間でした。あれほどパワフルでエネルギッシュな香港の人たちが、ここでは静かに笑いさざめいています。「中国茶には心をしずめ、落ち着かせる効果があるのです」と話すのは、講師を務める陳嘉豪(チン・カゴウ)さん。23歳の若さながら、ブッダのように穏やかな微笑みを浮かべ、小さな声でゆっくりゆっくりと話します。

 講義は、基本的には英語。しかし陳さんは日本語を学んでいる最中で、ところどころ日本語でサポートしてくれます。あまりのスローな話しぶりに、英語で言ってもらったほうが早いって、と思うことも多いのですが、たとえば「半発酵」など、耳慣れないことばを日本語で言ってもらえるのはありがたかった。

 中国茶は色別に緑・白・黄・青・赤・黒と大きく6種類に分類されます。日本でもおなじみ、ジャスミン茶は緑茶、鉄観音などウーロン茶は青茶、プーアール茶は黒茶。香りが混じるのを避けるため、色ごとに急須を用意します。

 この日テイスティングをしたのは、緑茶、青茶、黒茶、黄茶の4種類。緑茶はジャスミン緑茶で香り高く、心身のバランスを整えて高ぶった神経を落ち着かせる効果があります。目を閉じてゆっくり胸いっぱい香りを吸い込むと、確かになんだか和やかな気持ちに。青茶は鳳凰ウーロン茶。フルーティーな中にちょっと苦味が潜んでいます。香港では、会談などコミュニケーションを円滑に進めたいときに用いるそう。黒茶はプーアール茶。風味がしっかりと濃く、後味はさっぱり。身体を温める効果があるので、寒い季節には特におすすめです。黄茶は焚き火のようなスモーキーな香りで、飲み慣れないとクセがある。マイルドな京番茶といったところでした。

 一緒に講座に参加していたのは、ほとんどがイギリスから来た観光客。イギリスも紅茶文化の国だからでしょうか、非常に興味深そうに香りをかぎ分けたり、味わいを確かめたりして、熱心にメモをとっていました。

 お茶のアロマに包まれ、中国茶菓子も振る舞われて約1時間。たまにはアルコール抜きもいいな。

“セクシーさ”が日本の課題!?

 美しく並べられた繊細な中国茶器を眺めていると「私は日本を尊敬しています」と陳さん。

 なぜ?

 アニメが好き?

 「いいえ、香港は面積が小さく人口も少ないため、大学が少ないのです。香港の大学は、科学技術や生物、化学などが優先され、美術や哲学を学べる学科があまりない。私は東洋美術史を学びに、日本に行きたいのです」。

 香港の若い人は日本で学問を修めることにあこがれている、と陳さんは言います。「あなたは日本の大学で学びましたか」う、うん…。真面目に勉強したとは言い難いけど。

 「それはすばらしいことです」。

 なんか、うれしいな。

 陳さんに限らず「日本が好き」と伝えてくれる人に、たくさん会いました。スーパーのレジで後ろに並んだ人が「香港人は日本のフルーツが大好きよ」と言ってくれたり。

 レストランやショップでは、スタッフの若い女の子に「日本人ですか。かわいいですね」と、何度声をかけられたことか。日本ではすっかりトウがたち、かわいいなんて言われる機会はゼロの私に、ありがたいやら、もったいないやら。

 これは女性に対してだけではないよう。その前夜、デートスポットとして賑わうナッツフォードテラスに出かけたときのこと。隣りのテーブルでビジネスディナーをしていた出張中の日本人中年男性も「香港では、日本人ってだけでやさしく声をかけてもらって、癒されるなぁ」としみじみ。ここでは若いウェートレスがニコニコともてなしてくれるけど、会社に戻れば、日本の若いOLさんに冷たくあしらわれてしまうのですって。

 しかし「日本が好き」と言うわりに、日本料理店はガラガラ。やっぱり放射能汚染が怖いのか。ホテルに戻ってステファニーに尋ねてみると「それ、いつの話よ」と一笑にふされてしまいました。

 「香港人は過去を振り返らないの。日本の原発事故で大騒ぎしたのは3週間くらいね」。

 日本料理は好きだけれど、会社の上司や取引先など、ちょっと気の張る相手と行くときに選ぶ。「日本料理店は格式高いけど、セクシーじゃないから、デートはイタリアンよ」とステファニー。

 セクシーという観点からいうと、香港女子の間では「日本では木村拓哉以降、セクシーな男性タレントがいない。20代は韓流スターの方がセクシー」ということになっていると。むむむ。韓流は香港も席巻しているのか。

 日本にたりないのは「セクシーさ」か。日本人の色気について考えつつ、帰路に着きました。

キャセイパシフィック航空はラウンジを一新

 香港国際空港には、キャセイパシフィック航空が誇る「ザ・ウィング」と「ザ・ピア」のふたつのラウンジがあります。「ザ・ウィング」は大改装を終え、リニューアルオープンしたばかり。ゆでたての麺料理を食べられることで有名な「ザ・ヌードルバー」も大きく変貌し、「チャーシュー饅頭」などの点心が新たにメニューに加わりました。私はザ・ピアのザ・ヌードルバーで香港名物のワンタン麺を。結局、色気より食い気。「香港でできないのは、反省とダイエット」。ステファニーさんのことばを身をもって実感しました。

 機内ではきめ細やかなサービスが待っていました。

 運気を高めるために行った香港。これからどうなるか、未来はわかりません。けれども心と身体がしゃきっとして、元気をしっかりチャージできたのは間違いありません。

 次回は、真冬のカナダで滝を眺めアイスワインを楽しむ旅をお届けします。

 

中国茶教室のデータ

 香港政府観光局は「香港の文化を感じるミニツアー」と題してさまざまなツアーを提供しています。今回参加した「中国茶体験クラス」もそのひとつ。カンフーや太極拳を体験したり、風水や中国漢方を学んだり、バリエーション豊富。香港国際空港や香港内にある観光局のビジターセンターで直接申し込みます。受け付けは先着順。

(取材協力:キャセイパシフィック航空香港政府観光局

プロフィール

江藤 詩文(えとう しふみ)
旅とお酒と食文化を愛するフリーライター。趣味は、旅や食に関する本を集めることと民族衣装によるコスプレ。慌ただしい日常の中、心のどこかでふと思いをはせるだけで気持ちが和む「楽園」を探す「楽園ハンター」として、世界のどこかから幸せな気分になれるあれこれをお届けします。
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