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2012年5月14日
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楽園をさがして

ゾウにのって湖を渡る ベトナム編〈2〉

文と写真:江藤 詩文

写真:ゾウに乗ってラック湖を渡るエレファントライディングは、バンメトート観光の目玉。欧米からの旅行者に人気です拡大ゾウに乗ってラック湖を渡るエレファントライディングは、バンメトート観光の目玉。欧米からの旅行者に人気です

写真:チョウチョに導かれて辿り着いた、女滝のダライヌア滝。眺めが美しく涼しいため、地元の若者に人気のデートスポット拡大チョウチョに導かれて辿り着いた、女滝のダライヌア滝。眺めが美しく涼しいため、地元の若者に人気のデートスポット

写真:観光客を受け入れているムレン村ですが、そのくらしぶりはのんびり。物売りなどもなく、平和な日常風景を垣間見ることができます拡大観光客を受け入れているムレン村ですが、そのくらしぶりはのんびり。物売りなどもなく、平和な日常風景を垣間見ることができます

写真:のどかな田園風景にたたずめば、身も心もゆるみます拡大のどかな田園風景にたたずめば、身も心もゆるみます

写真:トレッキング中はゾウのふんしか発見できなかったのですが、帰路のボートから、河岸にいる野生のゾウを発見!拡大トレッキング中はゾウのふんしか発見できなかったのですが、帰路のボートから、河岸にいる野生のゾウを発見!

写真:ヨックドン国立公園では、セレポック川をボートに乗って帰路に着きます。約30分の船旅を楽しみました拡大ヨックドン国立公園では、セレポック川をボートに乗って帰路に着きます。約30分の船旅を楽しみました

写真:ボロウの背中からラック湖を一望。少数民族のイェンさんは、後ろ向きに乗ったり煙草を吸ったり。ゆとりがあります拡大ボロウの背中からラック湖を一望。少数民族のイェンさんは、後ろ向きに乗ったり煙草を吸ったり。ゆとりがあります

 前回お伝えしたように、カエル料理でもてなしてくれたバンメトート。ベトナムをこよなく愛し、繰り返し通う欧米人が、次なるリゾートとしてこの地に注目する理由は、カエル……ではなく、ゾウでした。ゾウに乗って少数民族の村を訪問したり、トレッキングを楽しむエレファント・ライディングが脚光を浴びています。日ごろ、超インドア生活をしているとはいえ、昨年“山ガール”デビューした私。さっそく挑戦です。

背が高い美人ゾウの背中で

 バンメトート市内からクルマで1時間ほど南西方向へ行くと、男滝と女滝のふたつの滝をめぐる遊歩道があります。入り口からそれぞれの滝まで歩いて片道20分くらいと、お散歩気分で歩けるゆるやかさ。2時間ほどで、男滝と女滝の両方を見られます。

 男滝のダライサップ滝はゴツゴツした石の道を行った先にあり、豪快な水流が男らしい。私が気に入ったのは、女滝とされるダライヌア滝へのアプローチです。ふたつの吊り橋を渡り、花畑を抜けて行くという女らしい遊歩道では、次々と変貌する眺望を楽しめます。

 まぶしい陽射しを浴びて輝く、まだ浅い緑。小さな花が風に揺れ、白や黄色のチョウチョが、あちらでもこちらでも、ひらひらひらひら狂ったように飛んでいる。とても数え切れませんでしたが、100匹以上いたのではないでしょうか。この幻想的な光景といったら、絵に描いた天国って、こんな感じかも。

 ところがチョウチョに惑わされて、ふらふらとコースを外れたら、夢のような花畑の先はなんと断崖絶壁。ああ、びっくり。ほんとうに天国に召されかねませんでした。

 滝を後にして、いよいよゾウに乗るためにラック湖へ。私が乗せてもらうのは、40歳のメスのボロウ。そっと触るとあったかい。ざらざらした固い皮膚に、ところどころゴワゴワとした剛毛が生えています。

 ボロウは女性にしては背が高くて、よくいえばおっとり、はっきりいうとちょっとのろま。何だか親近感がわきます。ちなみに、ゾウの中ではかなり美人なのだとか。

 そんなボロウが存在感を発揮したのは、湖を渡るときです。ほかの若いゾウはスピードを上げたりあちこち方向を変えたりしながら、少しずつ水の中へと進んでいきます。しまいには、背中にしつらえてある小さな椅子までつかるほどに。お世辞にもきれいとはいえない水に濡れまいと、乗客は背もたれに逃れて、てんやわんやの大騒ぎです。私もあわてていると、ゾウ使いのイェンさんは悠々としています。「まぁ、落ち着いて見とけって」ぬらさず、あわてず、安全に。ボロウとイェンさんのベテラン・コンビがゆったりとした湖上散歩を楽しませてくれました。

 最後は少数民族のムノン族が暮らす村へ。みずみずしい田んぼが広がる風景は、どこか日本を思わせる郷愁を感じさせました。

なぞのガイド3人組

 遊歩道が整備された風光明媚(めいび)なハイキングコースほかにも、自然保護区の周辺を歩いて回るワイルドなトレッキングコース、セレポック川でのボート・ラフティングなど、アウトドアを満喫するための選択肢が充実。バンメトートの町は、ネイチャー系アクティビティを楽しむ基地になっているのです。

 アウトドア体験にすっかり気をよくした私は、ヨックドン国立公園を訪れました。象牙の密輸を狙った乱獲からゾウを保護するためにつくられた保護区です。観光客をゾウに乗せることと、ゾウを保護することに矛盾はないのか。そんな疑問がわきますが、少数民族の村では、米作り以外の仕事がほとんどないのだとか。ゾウは大切な観光資源なのです。

 ヨックドン国立公園では、バンメトート地区担当ガイドのクワンさん、日本語ガイドのバオさんに加え、ネイチャーガイドのニイアさんと、3人ものガイドがつきました。にもかかわらず、彼らは固有の植物などについて説明するでもなく、とくに見どころもないまま、東南アジアの蒸し暑い空気の中を、だらだらと歩きます。

 しょうがないから、かわいらしい花を見て、「これ何かしら」「ヤシの一種?」などと口にしていると、「ヤシではない」と大きな声。そう、ベトナム人って、否定だけはきっぱりするんです。ところがガイドが3人も集まって協議した結果は「めずらしい花ではない」。後は自分で考えろという、まさかの放置プレイ!?

 ほかにも、前日の雨で道が水没した箇所に行き当たると、なぜかガイドのひとりが自分だけ木のストックを使い、挙げ句に川に落ちるというひと幕も。日本の常識では考えられませんが、このゆるさがベトナム。観光もなぜか滞りなく進む。ちっともイライラしないのが、我ながら不思議です。

 振り返ると、トレッキングよりベトナム人ガイド3人組のトホホぶりが思い出に刻まれたのでした。

(取材協力:ベトナム航空

プロフィール

江藤 詩文(えとう しふみ)
旅とお酒と食文化を愛するフリーライター。趣味は、旅や食に関する本を集めることと民族衣装によるコスプレ。慌ただしい日常の中、心のどこかでふと思いをはせるだけで気持ちが和む「楽園」を探す「楽園ハンター」として、世界のどこかから幸せな気分になれるあれこれをお届けします。
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