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ぽれぽれサファリ

蓼科牧場でふれあいのひととき

2007年09月05日

 このまま夏を終えるのはあまりに味気ない、と、信州へ行くことにした。

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おそばを食べながら白樺湖を眺める。

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湖畔にあるホテルの玄関。白鳥にそそられて撮影。「そっちはどうだ」「こっちは俺にまかせろ」などの声が聞こえてくるようである。

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右手に見えますのが蓼科山。

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標高1925mの車山山頂から霧ヶ峰をのぞむ。山頂へはリフトで行けます。

 ただし車で行くのでかなりの長旅だ。直近の最長ドライブはお台場往復で、そのときでさえ帰りつく頃にはふうふう言っていたので、体力的にやや不安である。なので、「具合が悪くなったら即中止」をスローガン(?)に、サービスエリアに立ち寄り立ち寄り、のんびり向かうことにした。

初日の観光は控えめに

 さて。目的地の白樺湖には無事に到着した。案の定ヘロヘロだったが、昼食のそばはしっかり完食し(ふははは)、元気を取り戻したところで湖畔を少しお散歩。その後、車山や霧ケ峰などの高原へと向かった。

 八方に切り立った山々が連なるなか、このあたりは斜面が滑らかで、なにやらまろやかな感じである。いつかどこかで見たような……と思い返してみると、阿蘇のあたりに似ているのだった。

 また、私は少ししか歩けなかったんだけど、この一帯には高山植物が咲き乱れる湿原があり、遊歩道も整備されているので、ぽれぽれ散歩にはちょうど良い。ニッコウキスゲの時期は残念ながら終わってしまっていたが、マツムシソウというスミレ色をした小さな花が咲いていて、とてもきれいだった。

 それにしても頂上付近まで行くと、涼しいというより、寒い。すすきもチラホラなびいていたりして、高原は早くも秋の気配なのであった。

蓼科牧場でこぶたと触れ合う

 車山高原で1泊した翌日は、次なる目的地、蓼科に向かった。「そば打ちでもしようか」なんて言っていたのだけど、あまりにも天気がよかったので、お日様とそよぐ風が満喫できそうな蓼科牧場へ。

 牧場には、うさぎ、馬、牛、こぶた、やぎ、羊と触れ合える広場があり、私はまっさきに、こぶたゾーンへ向かった。柵の中では3匹のこぶたが、ぷぎぷぎと元気に歩きまわっている。仮に、太郎、次郎、ミツコと呼ばせてもらうが、つま先のチョキといい、くるりんと丸まった尻尾といい、かわいいにもほどがある。思わず柵の中に入っていって、太郎の頭とおなかをなでなでしてしまった。

 柵の中には先客(数人の子供たち)がいて、「うんこくっせー」「きったねー」と大騒ぎしているが、こぶたハウスをぐるりと見回してみるかぎり、なかなかどうして整然としている。お皿が置いてあるあの辺が、おそらくダイニングルームであろう。それから、ウンチが山積みになっている一角がトイレ。隅のほうにある幅30センチほどの溝はきっと、お風呂場にちがいない。なぜならその狭い溝では今、ミツコがぎゅーっとおさまり、土に埋もれてうっとりしている。ひんやりして気持ちがいいのかしら。それとも、ぶたはキレイ好きだって言うから、ああやって体を清めているのかしらん。

 思わず、小さい頃大好きだった絵本、『どろんここぶた』を思い出した。主人公のこぶたはどろんこが大好きで、毎日飽きずに泥の中に座りこみ、「しずかに、ずずずーっと、しずんでゆく」のだ。あのうっとり顔、なんともいえなかったなあ。

 そんなこんなを思い出しながら、私はもう一度、ぽってりとした太郎のおなかをなでた。そして「さあさ、ソフトクリームでも食べましょうか」とこぶたハウスをおいとましようとした、そのときだった。

 今まで湯船につかっていたミツコが、突然立ちあがり、トイレに向かって走りだしたのだ。どうしたミツコ! 緊急事態か!? 

大騒ぎのこぶたハウス

 ミツコはおもむろに、便器(素材:土とうんち)に飛びこんだ。そして用を足すのかと思いきや、便器に顔をうずめたり、体をぐりぐりこすりつけたりしている。一心不乱である。あちこち、うんちまみれである。もちろん、おなかのあたりも……。

 私は自分の手を見下ろした。

 いやいや、大丈夫。私がさっきなでたのは、太郎のおなかであって、ミツコのそれではないのだから――。

 ところが、彼女につられたのか、太郎と次郎も「ぷぎー」「ぷぎぎー」とトイレに突進。便器を取り合う3匹のこぶたと、逃げ惑う子供たちで、こぶたハウスは大騒ぎになった。

 ほうほうのていでハウスから逃げ出た私は、夢中で便器に戯れる太郎を見ながら、つぶやいた。

「ソフトクリーム前に、手、洗っとこ……」

今週の春口さん

 信州旅行は3泊4日で行ってきました。というわけでまだまだ続きます。次回は長野県飯田市編です。

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プロフィール

春口裕子
1970年横浜生まれ。慶応義塾大学卒業後、損害保険会社に入社。広報の仕事でエッセイを書きながら、「やはり物書きの道へ」と心を決める。旅行と甘いものが好き。01年よりOLを辞め、執筆業に専念。同年、ホラーサスペンス大賞で『 火群の館 』(新潮社刊)が特別賞受賞。著作に『 女優 』(幻冬舎)。

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