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ぽれぽれサファリ

エビに思う〜水槽の中のぽれぽれサファリ(前編)

2007年11月07日

 突然だが、メダカがかわいくてしょうがない。

 暇さえあれば水槽を覗いて、「ああかわいい」「おおかわいい」と愛でている。特に正面から見た顔が好きなので、なんとかメダカ前方に回りこもうとするのだけど、これがなかなか難しい。気配を消してじりじりと水槽に近づいてみても、勘付かれたとたん、「また覗いてやがる!」とばかりにプイと背(尻尾)を向けられてしまうのである。うう切ない。

 その日も家事そっちのけで(コラコラ)水槽に張りついていたところ、N氏がぼそりと言った。

 「何かこう、色鮮やかな魚も飼いたい」

 手には熱帯魚の本が握られている。ペーハーがどうだとか、混泳できる魚は何だとか、すでにかなり熟読しているもよう。私とて、メダカちゃんズに仲間が増えるのはやぶさかでない。さっそく、近所のペットショップへ向かった。

熱帯魚コーナーにて

 ペットショップの熱帯魚コーナーに向かってみると、いるわいるわ、色とりどりの魚たち。「どれもこれもかわいいのう(でもうちのメダカちゃんが一番だけど)」と思いながら、くふくふ水槽に張りついていたのだが、ふと気づけばN氏がいない。一体どこへ……? 

 店内を見回してみると、いたいた、水槽コーナーに。真剣なまなざしで、大小さまざまの水槽を持ちあげてみたり、底面から見あげたり(なぜ?)している。

 さんざん悩んで水槽を決めたあとも、「こっちのヒーターよりあっちのヒーターのほうがカッコいい」とか、「オールマイティな水草とはどれか」とか、肝心のお魚にちっとも目を向けない。

 どういうことかと尋ねると、なんでも「魚を入れる前に、1週間程度ろ過装置を回して、水を慣らさなければいけない」らしい。なんだ早く言ってくれ。

 というわけで、その日はおうち作りのためのアレコレだけ購入し、1週間後に改めて店を訪れることにした。

エビ談義

 ふたたび店を訪れたのは、それから3日後のことだった。おうちを作ってしまったら、そこで泳ぐ魚の姿を1日も早く見たくなってしまったのだ。

 グッピーのつがいと、ネオンテトラを10匹買うことにした。さらに、メンバーにエビを加えるかどうかで悩みに悩んだ。目当ては、紅白のしましまの、クリスタルレッド・ビーシュリンプ。小さくてかわいい上に、コケを食べて水槽のお掃除をしてくれるらしいのだが、なんだかやけに、とっても高いのである。

 N氏は水槽の前で腕組みをした。

 「うぬ。2匹で2520円か」

 メダカ1匹84円、ネオンテトラ105円と比べても、なかなかのお値段である。

 ちなみに、不適切な比較かもしれないが、昨晩わが家の食卓にのぼったエビチリのエビとて、ここまで高くはなかった。いやぜんぜん及ばない。

 やるな、エビちゃん。いや、エビ様。

 私は言った。

 「今のところ、うちにはタニシどん(同じく掃除係)もいるしねえ」

 言いながら、ふと隣の水槽に目をやると、違う色のエビがいた。同じビーシュリンプだが、こちらは黒と白のしましまで、1匹あたり242円。ほう。

 こっちを2匹、買うことにした。

 帰る道々、「しかし黒白か紅白かでこうも値段が違うとは」と話した。希少価値の違いか、はたまた、「紅白はめでたいから」とかそういう理由か。いずれにせよ、生き物に値段がついているというのは(もちろんそうでないと手にも入らないわけだけど)、特にセールなんかをやっていると、なんだかちょっと複雑な心境になるのであった。

今週の春口さん

最近、電車で席を譲っていただくことが増えまして、「何カ月ですか?」「気をつけてくださいね」などと声をかけてもらったりもして、「みんな優しいなあ」と、ジンとしている今日この頃です。母いわく、「高齢出産ぽいから労わってくれてるんじゃない?」とのことですが……。

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プロフィール

春口裕子
1970年横浜生まれ。慶応義塾大学卒業後、損害保険会社に入社。広報の仕事でエッセイを書きながら、「やはり物書きの道へ」と心を決める。旅行と甘いものが好き。01年よりOLを辞め、執筆業に専念。同年、ホラーサスペンス大賞で『 火群の館 』(新潮社刊)が特別賞受賞。著作に『 女優 』(幻冬舎)。

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