現在位置:asahi.com>トラベル>ぽれぽれサファリ> 記事

ぽれぽれサファリ

レバーとオペラは食わず嫌い?

2007年12月05日

 もしも自分が出演したら、“嫌いな一品”は間違いなくアレ……。

毎回そんなことを思いながら『食わず嫌い王』(下記「ぽれぽれメモ」参照)を見ている私は、なんというグッド視聴者であろうか。

レバー氏との出会い

 好き嫌いはわりに少ないほうだと思う。タマネギとか、最近だと納豆とか、気付けば急いで食べている(=早く飲み込みたい=あまり好きではない)食品はいくつかあるけど、飲み込めないほど嫌いなものはただひとつ。

 レバー氏である。

 私と彼(レバー氏)との出会いは、かれこれ30年ほど前にさかのぼる。

 近所の山中へピクニックに行った際、友達のお母さんが作ってきてくれたお弁当の中に、彼はいた。野菜と一緒に炒められていた彼は、お日様の光で中くらいにぬるまっていて、かつヘルシー志向の薄味であった。

 瞬時におえっときたが、子供心にも「作り手の目の前で吐き出すのはいかがなものか」と思い、必死に飲み込んだ。以来、彼とはすっかり疎遠になってしまった。

 第一印象って大事である。

人生で2度目のオペラ

 ぬるいレバーと同列で語るのもナンだが、オペラの第一印象も今ひとつだった。イタリアのスカラ座で初めて観たのだが、「本場でオペラ!」という期待が大きすぎたのか、言葉の壁に阻まれて内容が理解できなかったからか、芸術を解する心が乏しかったためか(あるいはそれら全部か)、さっぱり良さがわからなかった。そしてそのまま今日に至った。

 そんな私に、オペラ鑑賞の機会がふたたび訪れた。

 友人ナオちゃん&ハナちゃんと横浜でご飯を食べていたときのこと。

 ハナちゃんが、「今度ウチの姉が“蝶々夫人”に出るんでございます」と言った。しかも主役の蝶々さん役だというではないか。

 これは良い機会なのでは!?ということで、11月某日、私はナオちゃんとともに新百合ヶ丘にある昭和音楽大学へと向かった。

 ホールに入ってみると、広い場内は満席だった。私はオーケストラの音合わせを聞きながら、舞台を見上げ、「もしもあそこに自分が立ったとしたら」などと考えて勝手にドキドキした。

 やがて幕が開き、蝶々夫人――主役の小林厚子さんが登場。以前に一度だけ会ったことがあるのだけれど、そのときのホンワカとした印象からは想像もできない声と迫力に、びやーっと鳥肌が立った。

 全編イタリア語だったが、日本語の字幕も用意されていて、んもう、ぐいぐい物語に引き込まれた。“主役を張っているのがハナちゃん姉”とか、そういうことは早々にどこかにすっ飛んだ。アメリカの海軍士官ピンカートンと結婚し、永遠の愛を信じる蝶々さん。けれどピンカートンは祖国に帰り、世間の風当たりも日々の暮らしも厳しくなる一方……。“唐人お吉”(下記メモ参照)の悲話をほうふつとさせるような、その悲しい生涯に、思わず涙してしまった。

 帰る道すがら、こんなにも夢中になれるのなら、ぜひまた観たいと思ったものである。

彼との関係も見直しを…

 今回のことで、オペラは食わず嫌いであったことがわかった。ということは、ひょっとして、彼との関係にも改善の余地アリ……?

 「ここのレバーは天下一品」

 「私はここのレバーを食べて苦手意識を克服しました」

 「ここのレバーを食べれば、あなたもみるみる健康に」

 等々の耳寄り情報がありましたら、ぜひご一報を。

 最近、貧血気味でもあるので、出産前にちょっくら挑戦してみようと思います。

ぽれぽれメモ

●食わず嫌い王…とんねるずの「みなさんのおかげでした」の1コーナー。

別に毎週欠かさず見ているわけではありませんが、テレビをつけるとなぜかよく遭遇するのです。そういう番組ってありますよね。

●お吉…初代アメリカ総領事ハリスの世話役となった下田の芸者。当時日本には、外国人に身を任せることを恥とする風潮があったことから、冷たい仕打ちを受けつづけ、不幸な最期を遂げる。

 伊豆に「唐人お吉記念館」があるのですが、そのあまりにあまりな生涯に、退館後もしばし呆然でした。

今週の春口さん

風邪をこじらせ、寝込んでおります。友達との約束もことごとくぶっちぎっており、少々へこみ気味。皆さんも、くれぐれもお体、お大事に。

ご感想・ご質問

春口さんへのメール、このコラムについてのご感想、ご質問は問い合わせページからお願いします。別ウインドウで開きますこちらをクリック※プライバシーについて

プロフィール

春口裕子
1970年横浜生まれ。慶応義塾大学卒業後、損害保険会社に入社。広報の仕事でエッセイを書きながら、「やはり物書きの道へ」と心を決める。旅行と甘いものが好き。01年よりOLを辞め、執筆業に専念。同年、ホラーサスペンス大賞で『 火群の館 』(新潮社刊)が特別賞受賞。著作に『 女優 』(幻冬舎)。

このページのトップに戻る