2007年12月19日
友達のナオちゃん&ハナちゃんとランチの約束をしたところ、ナオちゃんから事前にこんなメールが届いた。
「お腹の子と相談のうえ、食べたい物をリクエストされたし」
ふむ、と私は考え、こう返した。
「どちらかと言うと、食べ物より“場所”を所望したい」
「たとえば」
「子どもが産まれたら行けなくなりそうな、激狭のラーメン屋とか、うんと静かなレストランとか」
しばらくして返信があった。
「希望とはちょっと違うけど、以前行ったことのあるイタリアンを予約いたし候」
それは乃木坂にあるリストランテ・ダ・ニーノという店だった。こぢんまりと雰囲気よく、イカ墨のリゾットをはじめ、デザートのケーキまで大変おいしゅうございました。
店を出たあとは、ぶらりと乃木神社に立ち寄って境内を散策し、外苑東通りをゆっくり歩いて六本木のミッドタウンへ。「ケーキは満喫したから、次は“和”」と、吸い寄せられるように虎屋菓寮(喫茶)に向かったが、土曜日とあってあいにく満席。20分ほど並んで、中に入った。
席に着いてメニューを開くなり、ハナちゃんがつぶやいた。
「お饅頭にしたいけど、あんみつも捨てがたい」
まあるいお饅頭は魅力的だが、あえて言うなら味は一本調子。そのかたわらで誰かが、味わい多様なあんみつを食べようものなら、「嫉妬してしまうにちがいない」という。
ナオちゃんは、なんかおとなしいと思ったら、「シミュレーション中。話しかけてくれるな」とのことだった。数種ある生菓子のうちどれにするかで迷っており、脳内で一つひとつ試食しているらしい。なるほど。私は珍しくすでに「今日はお汁粉」と決めていたのだが、真似してシミュレーションを試みた。
まず、じゃじゃーんとお汁粉が登場する序盤。和三盆糖仕立て&香り高い小豆の海にぷっかりと浮かぶ、こんがり色の焼餅2つ。私の心はたいそうウキウキしている。
そして半分ほど食べ進んだ中盤。ぴりりと塩気のきいたコンブで立て直すも、口の中は一面あんこ味。食べても食べてもあんこ味。スプーン運びもいささか遅くなりはじめる
なんだか迷いが生じてきた。
本当にお汁粉でいいのか? こうした甘味処でちょくちょくお汁粉を頼むけど、そういえば完食できた試しがないではないか??
「うーん」と私はひとりごちた。「お汁粉って飽きるかな。飽きるんだよね。飽きそうだよね」
だとすればバラエティ豊かなあんみつか。あるいはお饅頭か。はたまた生菓子か。
悩む……悩みすぎていっこうに決まらない……。「お汁粉&あんみつ」とか「お汁粉&饅頭」とか、適量のハーフ&ハーフがあればいいのになあ。
結局ものすごい時間をかけて、ハナちゃんと同じお饅頭に決めた。出てきた真っ白なそれは、心がほっこりするような丸みをたたえていて、大きさも程よく満足であった。
虎屋を出たあとも、「ここのシュークリームはおいしいらしい」「あそこでちょっとパンを買ってくる」「じゃあ私はケーキを」と、今日明日が賞味期限の食品を次々と購入。どう考えても食べすぎ、買いすぎである。お互いに呆れつつ、駅の改札で「じゃあまたね」と手を振った。そして思った。
まもなく臨月に突入する私。「また」って今度はいつになるのかな。こうして一緒にブラブラ歩けるのって、ひょっとしたら、ずいぶん先になっちゃうんじゃないかしら。
そう考えると、終わったばかりの今日1日が、なんともいとおしく思えるのだった。
今年も残りわずか。やらなきゃいけないことはアレコレあるのに、「どーしましょ、どーしましょ」と言いつつ何にも手をつけていない状況です。とりあえず年賀状に取りかかろうかな……。
1970年横浜生まれ。慶応義塾大学卒業後、損害保険会社に入社。広報の仕事でエッセイを書きながら、「やはり物書きの道へ」と心を決める。旅行と甘いものが好き。01年よりOLを辞め、執筆業に専念。同年、ホラーサスペンス大賞で『 火群の館 』(新潮社刊)が特別賞受賞。著作に『 女優 』(幻冬舎)。近著『ホームシックシアター』(実業之日本社)も好評発売中。
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