電車の発車時刻を伝える電光掲示板の下にも、注意を促すメッセージが流れる=名古屋市中村区のJR名古屋駅
大勢の人が移動する年末年始を控え、JR東海が新幹線の車内や駅構内などで、車輪付きのかばん(キャリーバッグ)の取り扱いに配慮してほしい、と呼びかけている。スーツケースも含め、様々な大きさや形の商品があり、売れ行きは好調だが、利用者が増えるにつれてぶつかったりつまずいたりするトラブルも起きやすくなっているという。
「最近、キャリーバッグによる接触事故が発生しております……」
JR名古屋駅で、東海道新幹線の発車時刻などを知らせる電光掲示板に、こんなメッセージが頻繁に流れる。改札口脇の大型テレビを使った情報ボードにも、同じメッセージが表示される。新幹線の車内では、ニュースや企業のPRの合間に同様のテロップを挟む念の入れようだ。
JR東海は今年7月から、こうした注意喚起を本格的に始めた。広報部の担当者は「キャリーバッグが増えてきたことと、駅構内のエスカレーターでキャリーバッグが落ち、下にいた別の客がけがをした事例が他社であったと聞き、対策を取ることにした」と理由を説明する。
ただ、つまずいた、足に引っかかったといったトラブルは、その場で当人同士で解決しているとみられ、件数は把握できていないという。
キャリーバッグの売れ行きは、東急ハンズ名古屋店の場合、2〜3年前から伸びているという。2輪の引っ張って歩くタイプや、4輪の自立式など形態は様々。パソコンや書類を一緒に入れられる通常のバッグに近い形をしたビジネス用が好調だという。
メーカーもキャリーバッグの種類を増やしている。大手バッグメーカーの「エース」によると、キャリーバッグの売り上げは右肩上がりで、種類も柔らかい素材を使ったタイプは2割近く増えているという。一方で、不意に動く可能性もある4輪タイプについては、キャスター止めを付けた商品も企画し、トラブルを防ぐ工夫をしているという。
JR東海広報部の担当者は「車内や駅構内で、キャリーバッグを引いて歩く際や立ち止まる際には、周りの安全に十分に注意していただきたい」と話している。(四登敬)