山梨リニア実験線の試験車両=2009年4月3日、山梨県都留市の山梨リニア実験センター
JR東海の山田佳臣(よしおみ)副社長(4月1日から社長)は5日、朝日新聞のインタビューで、リニア中央新幹線(東京―名古屋)の開業が、当初予定していた2025年より遅れる可能性が出てきたことを明らかにした。経済状況の変化から、07年につくった建設資金計画を精査する必要があるほか、着工までに必要な国の手続きも当初の想定より遅れているためという。
JR東海は、東京―名古屋間を最高速度時速500キロのリニアモーターカーで結ぶリニア中央新幹線計画を07年12月に発表した。
建設資金は総額5兆1千億円に上るが、東海道新幹線の収益力の高さから毎年3千億円余をリニア建設に回せるので、長期債務額をピーク時より5千億円少ない4.9兆円レベルに抑えながら、自己資金で完成できるとしていた。
ところが、08年秋以降の景気悪化で、東海道新幹線の利用者が急減。10年3月期の連結純利益は720億円と08年3月期の半分以下になる見通しとなった。
さらに、現時点で3兆円ある債務にかかる金利コストも経済情勢から上昇するリスクが想定されるようになってきた。収益が減り、金利コストが上がっては長期債務が当初の想定より膨らみ、会社の健全性が損なわれる可能性があるため、10年3月期の業績を踏まえ、建設資金計画を精査することにしたという。
山田氏は、JR東海は過去の経験と体力規模から長期債務を5兆円以上抱えるべきでないとの考えを示した上で、「25年開業は固定ではない。足元の業績を考慮し、必要なら時間軸で調整する」と述べた。
また、建設資金計画が健全性を保てることが分かっても、着工までに必要な国の手続きが、JR東海の予想より遅れてきたため、25年に間に合わない可能性があるとした。東京(品川)と名古屋には地下50メートルより深いところに駅をつくり、南アルプスを貫く約20キロのトンネルを建設しなければならず、いずれも建設に約10年かかるためだ。
南アルプスを北に迂回(うかい)するルートを希望する長野県との調整や、中間駅の位置や建設費の負担問題の解決に時間がかかり、国土交通省の交通政策審議会の議論が長引けば、開業が遅れる要因となる。(伊沢友之、澄川卓也)